コラム
佐々木竹見・王者の眼差し



佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
令和7年度第7回開催 戸塚記念 他
9月は8~12日の開催でしたが、11日は雷雨による馬場状態の悪化で残念ながら第2競走以降が取止めとなり、2歳重賞・若武者賞も行われませんでした。
10日に行われた3歳重賞・戸塚記念は、東京ダービーJpnIで3・4着に好走したシーソーゲーム、ナイトオブファイアが出走。直線でナイトオブファイアが突き放して圧勝。一方のシーソーゲームは3着で、明暗の分かれる結果となりました。
同日最終レースに行われた2025川崎ジョッキーズカップ第4戦は、2番手につけた新原周馬騎手が混戦の2着争いに4馬身差をつける圧勝でした。新原騎手は今開催4勝を挙げる活躍でした。
12日の第6レースに行われた川崎2000シリーズ・ペルセポネ賞は、ルージュメイベルがゴール前で抜け出し、中央でのデビューから25戦目で初勝利。鞍上は櫻井光輔騎手でした。
今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)
2025年9月10日(水)戸塚記念
優勝馬ナイトオブファイア
スタートしての先行争いがやや激しくなって、御神本騎手のシーソーゲームがハナをとりました。1周目のスタンド前でもそれほどペースが緩まなかったので、前半は隊列に動きがありませんでした。
勝ったナイトオブファイアは外枠からのスタートで、外目の3番手。矢野騎手はシーソーゲームを見ながらいつでも動ける位置につけました。御神本騎手も無理せず楽なペースで逃げて、1~2コーナーを回るあたりで一旦ペースを落としました。向正面では早めにペースアップしていったので、それについてこられない馬もいたので隊列は徐々に縦長になって、上位争いは絞られました。
3コーナー過ぎで、先頭のシーソーゲームにナイトオブファイアが並びかけていきましたが、御神本騎手はすでに追い通しだったの対して、矢野騎手の手応えは楽なままでした。直線を向いてもシーソーゲームは食い下がっていましたが、直線半ばからはナイトオブファイアが突き放しての圧勝でした。東京ダービーではシーソーゲームが先着(3着)していましたが、ナイトオブファイアは夏を越しての成長があったのかもしれません。休み明けでこれだけのパフォーマンスが発揮できれば、ジャパンダートクラシックも楽しみになります。
2着にはユウユウスキーが入りました。2番枠でしたが外目に持ち出して、ナイトオブファイアを前に見る位置取りはよかったと思います。道中マイペースで運んだぶん、最後の伸びにつながったのでしょう。
2025年9月10日(水)川崎ジョッキーズカップ第4戦
優勝馬エスプリゴンザレス
2番枠の新原騎手(エスプリゴンザレス)はスタートして気合を入れて行きましたが、外から増田騎手(ポッドジャスパー)がハナを主張してきたので、新原騎手はうしろを確認してポッドジャスパーの外に持ち出して2番手につけました。最初のゴール板あたりで隊列が決まると、うしろから動いてくる馬もいませんでした。ポッドジャスパーがやや掛かり気味に逃げてくれたことで、2番手のエスプリゴンザレスにとってはいい目標になりました。
向正面から徐々にペースアップして、新原騎手は3コーナー手前で一気に前をとらえに行ったのがよかった。そこで3番手以下との差が広がり、直線は楽なレースになりました。
道中ではあまり積極的に動く馬がいなかったなかで、向正面で3番手集団から積極的に動いていったのが池谷騎手(パンプイット)でした。そのぶん、最後までしっかり伸びて2着に入りました。
1番人気の櫻井騎手(クレーネ)はスタートで馬が外に飛んでいくような格好で、後方からの追走となりました。すぐに内に進路をとって後方2番手からの追走でしたが、内に入れずに外からもう少し前の位置をとりに行ってもよかったと思います。最後の直線で伸びては来ましたが6着まで。道中の位置取りを考えれば、力があることは示しました。
ジョッキーズカップは隊列が縦長になることが多く、今回は先行した馬たちでの決着でした。
2025年9月12日(金)ペルセポネ賞
優勝馬ルージュメイベル
スタートして先頭に立ったのはコスモキルカスでしたが、外枠からキッドストンのミシェル騎手が一気に交わして飛ばして行きました。後続に大きな差をつけて単騎の逃げで、そういう指示があったのかもしれませんが、これはちょっと飛ばし過ぎでした。3コーナーで一杯になって、直線では完全に止まってしまいました。2番手のコスモキルカスのうしろもさらに離れて、3番手を追走したリュウノバデン、キミトユメヲカケルあたりの位置がちょうどいいペースだったと思います。
中団からファイアーサインの本田騎手が早めに仕掛けて3コーナー過ぎで先頭に立ちましたが、それでもタイミングが早かった。ただ1番人気だけに、前に行った2頭がバテてたところで勝負に行ったのは仕方ないと思います。4コーナーではパーティーモードの町田騎手にまくられてしまいました。ゴール前ではそのパーティーモードも脚が上がってしまいました。
そして4コーナーでもまだ10番手あたりだった櫻井騎手のルージュメイベルが直線外に持ち出して一気に差し切りました。この馬は最後には必ずいい脚を使うのですが、これまでは好走しても2、3着までで、今回は前が飛ばしてくれた展開がうまくハマりました。櫻井騎手は今開催3勝を挙げました。
2着にもゴール前でよく追い込んだ加藤騎手のリュウノバデンが入りました。3番手の追走でしたが、レースが一気に動いた3、4コーナーでもじっくり待ったぶん、最後に伸びてきました。