コラム
佐々木竹見・王者の眼差し



佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
令和7年度第4回開催 スパーキングレディーカップJpnIII 他
7月7~11日の開催で行われた重賞は、牝馬によるJpnIIIのスパーキングレディーカップ。2番手から3コーナー手前で先頭に立った大井のフェブランシェが中央勢を振り切ってグレード初勝利。鞍上は吉原寛人騎手でした。
その日の最終レースに行われた川崎ジョッキーズカップ第3戦を制したのは、岡村裕基騎手のクレーネでした。縦長の中団からの追走で、直線鮮やかに差し切りました。
この開催では、9勝を挙げた野畑凌騎手の活躍が目立ちました。同じく9勝の笹川翼騎手とは2着の回数の差で開催リーディングでは惜しくも2位でしたが、8日には早くも今年100勝に到達。南関東リーディングでも3位につけています。その野畑騎手ですが、レグノに騎乗して勝利した7日の七夕特別を取り上げます。
今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)
2025年7月7日(月)七夕特別
優勝馬レグノ
レグノの野畑騎手は9頭立ての大外枠から、内の馬の出方を見ながら3番手につけました。直線を向いたところでは、逃げていた笹川騎手のフォースゲイトをとらえるだけでした。1番人気に支持されていたこともありますが、レース内容的には完勝でした。
野畑騎手はスタートで積極的に位置を取りに行くのもいいですし、それで最後までもたせるような騎乗が最近の勝ち鞍につながっていると思います。以前は追うときにお尻をついていましたが、最近ではそうしたことも少なくなって、良くなってきました。
2番手につけた櫻井騎手(ハチャトリアン)は直線では一杯になって、前2頭からは離されましたが、それでも3着に粘りました。櫻井騎手もゲートを出たらいい位置を取りに行こうとする姿勢はいいと思ます。
2025年7月9日(水)スパーキングレディーカップ
優勝馬フェブランシェ
フェブランシェは外めの枠でも思い切って2番手につけたことが、まずひとつ勝因です。前半はやや掛かっていくようなところもありましたが、吉原騎手は無理に抑えようとはせず、馬の行く気に任せていったのもよかった。逃げていたニシノカシミヤが3コーナー手前で失速すると、一気に先頭に立って後続との差を広げました。ゴール前では脚が上がって笹川騎手のライオットガールに差を詰められましたが、そのまま押し切りました(1馬身半差)。
3コーナーで先頭に立ったところで、普通なら息を入れてしまうところですが、そのまま抑えず後続を離しました。勝ったのはそこで差を広げたぶんでしょう。このあたりが吉原騎手の上手いところです。
吉原騎手はいろいろな競馬場で乗っているので、その経験も大きいと思います。
2025年7月9日(水)2025川崎ジョッキーズカップ第3戦
優勝馬クレーネ
騎手対抗戦はどうしても前半のペースが速くなって、道中はかなり縦長の展開になりました。勝った岡村騎手(クレーネ)は中団よりうしろからの追走でした。
1~2コーナーあたりでは早めにペースが落ち着いて、向正面ではさらに馬群がバラけました。その流れなら前で固まった5頭のどれかで決着するような展開で、そのとおり、2番手にいた1番人気の山崎騎手(リンクスエルピス)が直線を向いて先頭に立って、逃げた山林堂騎手(タイセイスパート)が2番手で粘っていました。岡村騎手はこの展開でよく勝ったと思います。向正面からずっと追い通しで、4コーナーでようやく4番手まで。最後までぐいぐい伸びてきて、ゴール前は手綱を抑える余裕でした。馬の状態もよかったのでしょうし、これは岡村騎手の好騎乗でした。