コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第10回開催 全日本2歳優駿JpnI 他

 12月11~15日の開催では、中央との交流重賞が2レース行われました。
 全日本2歳優駿JpnIは、JRAのフォーエバーヤングが直線で突き放し7馬身差の圧勝。デビューから3連勝としました。
 今年は神奈川県内での競馬開催が始まって100年目に当たることから、今回限り行われた神奈川記念は、JRAのヴィブラフォンが重賞初勝利。鞍上のホリー・ドイル騎手は地方初騎乗で、日本での重賞初勝利となりました。
 開催最終日の湯河原梅林「梅の宴」賞では、4コーナーでもまだ離れた5番手だった新原周馬騎手のジュラメントがゴール前、鋭く伸びて差し切りました。なお新原騎手は、14日・川崎、16日・JRA中山で行われたヤングジョッキーズシリーズ・ファイナルラウンドで総合3位に入る活躍でした。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年12月13日(水)全日本2歳優駿

優勝馬フォーエバーヤング


 川崎1600mは1コーナーまで距離があるので、大外枠のフォーエバーヤングは他の馬に邪魔されることなく2番手がとれました。
 1番枠に入ったイーグルノワールは砂をかぶりたくなかったのか、スタート後、松山弘平騎手が外に持ち出していって、フォーエバーヤングの外でぴたりとマークする形になりました。
 3コーナー手前ではフォーエバーヤングが先頭に立って、イーグルノワールが外から並びかけ、直線は2頭の追い比べになるのかと思いましたが、直線で追い出されてからのフォーエバーヤングの伸びが圧巻でした。イーグルノワールも正攻法で強い競馬をしましたが、フォーエバーヤングの能力が違っていました。
 地方馬では、鎌倉記念を勝った北海道のサントノーレが3着に入りました。1、2着馬を前に見ながら4番手のラチ沿いを追走して、ただ直線ではすぐに離されました。それでも3着と能力を発揮しました。とにかく今回は勝った馬が強すぎたので、2着以下はバラバラでの入線でした。

2023年12月14日(木)神奈川記念

優勝馬ヴィブラフォン


 ポリゴンウェイヴは1番枠に入ったためか何が何でもという感じでハナに行きましたが、いいスタートを切ったヴィブラフォンは楽に2番手につけました。ポリゴンウェイヴが行かなければおそらく逃げていたのではないでしょうか。3コーナーで先頭に立つと、そこから後続に付け入るスキを与えず完勝でした。
 1番人気のユティタムは3番手につけて、ヴィブラフォンだけつかまえればという競馬だったと思いますが、直線ではじわじわと伸びてはいたものの差が詰まりませんでした。
 ゴール前で一気に伸びて2着に入ったのが、御神本騎手のキャリックアリードでした。スタート後は外の馬に一気に行かれて馬ごみの中に入って位置取りを下げてしまいました。それでも3コーナー過ぎで外に持ち出されると、ゴール前では内にささりながらも一気に伸びました。もう少し前の位置に付けられればとか、外目を追走できればということもあったかもしれませんが、道中で脚を溜められたぶん最後に弾けたと思います。

2023年12月15日(金)湯河原梅林「梅の宴」賞

優勝馬ジュラメント

 1コーナーを回るところで前4頭が競り合ってハイペースになりました。勝った新原騎手のジュラメントはそれらのうしろ、6番手あたりを追走していきました。
 向正面中間で西啓太騎手のマインドユアミモザがうしろから一気に仕掛けて行きましたが、新原騎手はまだ動きませんでした。ようやく追い出したのは3コーナーを過ぎてから。前で脚が上がっている馬もいたので、4コーナーで迷わず大外に出した判断もよかったと思います。
 それにしても直線では笹川騎手のゲットアップゲート、そしてマインドユアミモザと、2頭で決まったかと思いましたが、ジュラメントはとても届かないと思えるような位置から差し切りました。前半先行争いが速くなったのと、向正面でペースアップしたところで我慢できたぶん、ジュラメントはゴール前での一瞬の伸びにつながったと思います。転入後、3戦2着が続いたので、末脚を活かせるレースに徹したのかもしれません。新原騎手は、ヤングジョッキーズシリーズでも3位に入ったように、いま乗れています。