コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第1回開催 クラウンカップSIII 他

 新年度最初の開催のメインとして行われた、羽田盃トライアルのクラウンカップは、京浜盃から連闘で臨んだ浦和のポリゴンウェイヴが逃げ切り勝ち。鞍上は、船橋の山口達弥騎手でした。  同日最終レースに行われた恒例の川崎ジョッキーズカップ第3戦は、ボンジュールイエルに騎乗した山崎誠士騎手が逃げ切って1番人気こたえました。山崎騎手はこの開催9勝を挙げる活躍で、開催リーディングとなりました。  4日目の卯の花月特別は、逃げた小林捺花騎手のジョーマキアートが直線でも単独先頭でしたが、野畑凌騎手のレッドアーチャーが内から差し切りました。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年4月5日(水)クラウンカップ

優勝馬ポリゴンウェイヴ

 ポリゴンウェイヴの山口騎手はスタートから行く気を見せてハナを取りきりました。1番枠の矢野騎手(オーマイグッネス)が下げてくれたので、すぐにペースが落ち着きました。向正面で何か動いてくるかと思いましたが、うしろから仕掛けてくる馬はいませんでした。  3コーナーあたりでは後続の騎手の手が動いて、手応えよくスーッと位置取りを挙げてきたのは森騎手のナイトオブバンドだけでした。  ポリゴンウェイヴも4コーナーあたりでは一杯に追っていましたが、最後までもたせられたのは、スタート後、すぐにハナをとって、終始マイペースで運べたからでしょう。ただスローペースというわけではなく、緩みのないペースで後続に脚を使わせたので、好位を追走していた馬たちには厳しいレースになりました。  ポリゴンウェイヴは、前走京浜盃では控えて見せ場をつくれませんでしたが、この馬のようにトビの大きい馬は一瞬の脚が使えないので、2、3番手で前の馬についていくより、やはり逃げたほうがいいです。今回は思い切って逃げたのが勝因です。

2023年4月5日(水)川崎ジョッキーズカップ第3戦

優勝馬ボンジュールイエル

 勝った山崎誠士騎手のボンジュールイエルは、テンのダッシュ力からして違っていました。後続を寄せ付けないままの逃げ切り。1番人気にも支持されていましたが、今回のメンバーでは能力が違いました。  むしろ騎乗ぶりが目立ったのは、2着に入った小林捺花騎手(エレウテリア)です。縦長の展開となって、向正面に入ったあたりではまだ後方から2番手。残り半マイルのあたりから追い通しでした。4コーナーでもまだ前とは離れた中団で、あの位置らよく追い込みました。小林騎手は3~4コーナーでは内に入れてコースロスをなくし、直線を向いて馬群がばらけたところで外に持ち出してという、コース取りがよかった。仮に4コーナーで大外を回していたら3着か4着くらいだったかもしれません。それにしても最後はよく伸びてきました。好騎乗だったと思います。

2023年4月6日(木)卯の花月特別

優勝馬レッドアーチャー

 小林捺花騎手のジョーマキアートが逃げました。4キロの減量がありますから、思い切って逃げるのはいいと思います。  1番枠の野畑凌騎手(レッドアーチャー)は、スタートで気合を入れて、外に持ち出そうとしていましたが、外から次々と来られて持ち出すタイミングなく、ラチ沿いの5番手あたりを追走することになりました。本当は内に入りたくなかったようですが、結果的に、内で我慢できたことが結果につながりました。4コーナーでは好位勢がみんな外を回して、内がガラ空きになったので、そのままラチ沿いを伸びて差し切りました。  小林騎手は3コーナーあたりから追いはじめましたが、まだ後続は離れていたので、4コーナーあたりまで追い出しを待ったほうがよかったと思います。最後は半馬身差で2着でしたから、道中でもう少し抑えていって溜めることができれば逃げ切っていたかもしれません。ただ逃げて2着に粘れたのは、4キロ減の効果は大きかったと思います。小林騎手は追ってからも手綱が緩まないところがいいです。