コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
令和5年度第7回開催 戸塚記念SI 他
9月11~15日の開催はダブル重賞。準重賞から今年重賞に格上げとなった2歳馬による若武者賞は、唯一船橋から参戦したグラッシーズマンが4コーナー先頭から粘り込みました。鞍上は大井の和田譲治騎手でした。
3歳馬による戸塚記念は、積極的に進めたヒーローコールが圧倒。マンダリンヒーローは黒潮盃に続いて2着でした。
恒例の川崎ジョッキーズカップ第8戦は、好位から4コーナーで先頭に立った池谷匠翔騎手のサマーローヤルが、増田充宏騎手のサンクフルレッドに2馬身差をつけて完勝。3着には神尾香澄騎手のデルマオベロンが入り、6、13、7番人気の決着で、3連単は42万円という波乱となりました。
今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)
2023年9月13日(水)若武者賞
優勝馬グラッシーズマン
スタート後の直線でごちゃついたところがありました。大外から一気にハナをとったデーレーラプター(新原周馬騎手)はすんなり行ったのでよかったのですが、そのあと藤江騎手(ミスティライラック)が内に切れ込んできて、1番人気のアジアミッション、さらにパンセが内で行き場をなくして位置取りを悪くしまいました。ほんの少しのタイミングだったと思いますが、特にパンセは内ラチとの間に挟まるような形で大きく煽りをうけてしまいました。
勝ったグラッシーズマンはぴたりと2番手。直線を向いて先頭に立って押し切りました。外枠だったので不利を受けることもなく、和田騎手もうまく乗りました。
一方でアジアミッションの山崎騎手は4コーナーで前3頭の外に持ち出し、パンセの森騎手はさらに大外を回ってきました。2頭とも直線はよく伸びて、特にパンセはゴール前でグラッシーズマンに半馬身差まで迫りました。
勝ち馬がスムーズにレースを運べたのに対して、2・3着馬はごちゃついてふりを受けたぶん、ちょっと残念でした。
2023年9月14日(木)戸塚記念
優勝馬ヒーローコール
ヒーローコールは、パドックでは前走の黒潮盃よりかなりよくなっているように見えました。今回、森騎手はスタートから出していってぴたりと2番手。2周目の向正面に入って先頭に立つという、これほど積極的に前に行ったのは、3歳になってからは初めてではないでしょうか。3コーナーから後続を離しにかかって、直線は独走でした。使い詰めなのがどうかと思いましたが、今回、馬はさらによくなっていました。
マンダリンヒーローは好スタートでしたが中団あたりまで下げての追走でした。出たなりの4番手あたりでついていってもよかったと思いますが、安藤騎手はレースでは初騎乗でしたから、調教師からの指示もあったのかもしれません。ただヒーローコールを負かそうと思えば、もう少し前でレースをしないと難しいでしょう。それでも3~4コーナーからは一気に追い出していって3番手集団から抜けてきました。ヒーローコールに6馬身も離されたのは、アメリカに遠征して2戦も使ってきたぶんでしょうか。それでも3着馬には5馬身差をつけていますから、この馬も力はあります。
2023年9月14日(木) 川崎ジョッキーズカップ第8戦
優勝馬サマーローヤル
これは勝った池谷騎手がうまく乗りました。スタートで少し気合を入れて行きましたが、外から行く馬を前に行かせて、池谷騎手のサマーローヤルは3番手の内、絶好位につけました。
先行2頭は少しペースが速かったかもしれません。そのぶん、2着・3着には中団よりうしろから伸びてきました。それを考えると、勝ったサマーローヤルは3番手から直線抜け出すという強いレースをしました。
2着の増田騎手(サンクフルレッド)は中団につけていましたが、追い出しを待って直線、終いの脚を生かす競馬をしました。後方集団から徐々に位置取りを上げてきた神尾騎手(デルマオベロン)がゴール前で2番手に上りましたが、増田騎手がゴール寸前でとらえて2着。展開もあったと思いますが、いい騎乗だったと思います。