重賞レース

第22回 クラウンカップ(SIII)

2019年4月3日

レースガイド RACE GUIDE

新年度になって南関東で最初に行われる3歳重賞。スプリングマン(浦和)が制した18年は単勝7→5→8番人気での決着で、一昨年は、勝ったのは1番人気のローズジュレップ(浦和)だったが、2、3着が12、10番人気。6年連続で3着以内に7番人気以下が1〜2頭入っているという波乱傾向があるレースだ。【1着、2着馬に羽田盃の優先出走権を付与】

コースガイド

4コーナーのポケットから発走し最初のコーナーまで500mあり、さほどハイペースにはなりません。差し馬にとってはカーブがきつい3コーナーでうまく立ち回ることが求められます。

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荒れる羽田盃トライアル

※データは、過去10年分(09~18年)を対象にした。

人気薄の台頭がある

単勝1番人気は2勝、2着3回、3着1回(複勝率60.0%)だが、10番人気以下も1勝、2着4回、3着2回で、特に12番人気は2着3回と好成績。4→1→3番人気で決まった10年を除き、毎年、6番人気以下が1~2頭3着以内に入っているという、川崎競馬でも屈指の荒れる重賞。

【単勝人気別成績】(過去10回)

人気 1着 2着 3着 着外
1人気 2 3 1 4
2人気 0 0 2 8
3人気 0 0 3 7
4人気 3 0 0 7
5人気 2 1 0 7
6人気 3[1] 6[4] 4[2] 74[39]

※[ ]内は10番人気以下

船橋と川崎が好成績

船橋は出走42頭で3勝、2着5回、3着4回(複勝率28.6%)、川崎も出走52頭で5勝、2着3回、3着4回(同23.1%)の好成績。大井は2、3着各2回(同16.0%)で、浦和は2勝(同11.1%)。
大井所属で3着以内に入った4頭中3頭は10番人気以下。10年テラザクラウドこそ1番人気で2着だったが、それ以外は大井所属のうちもっとも人気薄の馬が3着以内に入っている。

【所属別成績】(過去10回)

所属 1着 2着 3着 着外
船橋 3 5 4 30
川崎 5 3 4 40
大井 0 2 2 21
浦和 2 0 0 16

前走京浜盃組と特別戦1着馬に注目

前走レース別では、京浜盃が最多の27頭(11、18年は、クラウンカップのあとに京浜盃が行われておりデータから除く)で3勝、2着1回、3着2回(複勝率22.2%)で、最低12着馬まで3着以内に入っている。京浜盃1~3着馬にはすでに羽田盃への優先出走権があるため、上位馬の参戦は少ないが、3、4着馬に限れば1勝、2着1回(着外1回)とまずまず。過去出走ゼロの1、2着馬がもし出走してくれば有力になりそうだ。
同じく、11、18年を除く過去8回では、前走が南関東の3歳特別戦(JRA未勝利交流戦含む)の1着馬が出走22頭で3勝、2着3回、3着5回(同50.0%)の好成績。前走京浜盃または3歳特別戦1着馬の組み合わせでは、09、14、17年では1~3着を独占、10、13、16年は2頭が3着以内と、好相性になっている。

【前走別成績】(京浜盃が当レースのあとに実施された11、18年を除く8回)

前走レース 1着 2着 3着 着外
京浜盃 3[1] 1[1] 2 21[1]
南関3歳特別1着 3 3 5 11

※京浜盃の[ ]内は3~4着馬
 
ライター: 栗田勇人

金子正彦

金子正彦

1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。

中川明美

中川明美

競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

プロフィール_2

第22回クラウンカップ(SIII)

注目馬情報

●ホールドユアハンド (牡3歳 浦和・小久保智厩舎)

写真:真鍋元

前走の京浜盃は先行争いに巻き込まれての大敗。
そこから過密スケジュールでの出走になるが、トライアルのつばき賞では中央2勝馬ジョウランを軽く撃破。
勝ちタイム1分42秒7はこの開催のマイル最高時計だった。
川崎マイルに変わって、東京中日スポーツつばき賞の走りを再現できれば自然と勝利が見えてくる。
スタートダッシュの速さは先行有利な川崎コースでは最大の武器になりそうだ。

「京浜盃は距離やコースが初経験だったし、展開的にも厳しくなった。力負けではないと思っているので、今回は反撃を期待したい」と小久保智調教師。

中一週での出走になるが、状態を維持しているなら実績あるコースで巻き返し必至。

●ダンサーバローズ (牡3歳 大井・森下淳平厩舎)

中央5戦1勝、2着1回という成績で迎える転入緒戦。
未勝利戦を勝って、次に臨んだのが500万下のもちの木賞だったが、勝ち馬はその後全日本2歳優駿を勝ちきったノーヴァレンダ。最後は4馬身差をつけられたとはいえ2着に逃げ粘った実力は価値がある。

「調教でもどっしりとした雰囲気のある馬。大型馬だから器用に川崎コースのコーナーリングをうまくこなせるかは課題だけど、距離マイルは合う感じ。スピードがありそうだからすんなり行きたい」と矢野貴之騎手。

川崎マイルなら外枠からでも先行位を主張することは可能。
休み明けの割引分を差し引いても強力な新戦力への期待は大きく、クラシック出走に向けてしっかり賞金を加算したいものだ。

●カシノビート(牡3歳 大井・三坂盛雄厩舎)

写真:真鍋元

昨年6月のデビュー戦はのちにハイセイコー記念馬となるラプラスの2着。以来11戦重ねるうち8回は掲示板にのる堅実な走りをつづけてきたが、近走2戦は一変したかのように早めに先頭に立つ強いレース内容で2連勝。

「この血統はもっと走っていいはずなのに何か問題があるのかといろいろ治療をしてみると腰に炎症を起こしている部分があって切開すると膿が出た。それを出してからの2戦の走りは別馬のよう」と三坂盛雄調教師はガラリ一変した理由を説明。

母リードスキーは道営に所属しダートグレード競走エーデルワイス賞を制覇。産駒のほとんどを三坂調教師が手掛けているが、ひとつ上の姉シングンレガシイは昨年の桜花賞4着、優駿スプリント2着という快速馬だ。

「父は違っていてもスピード値の高さはよく似ている。ハナにはこだわらないができれば前目で競馬がしたいね。初コースになるが姉も初めての馬場でいきなり桜花賞4着したように度胸があるのは弟も同じ。調教での跳びはササリがちな右回りより、左回りの方がむしろスムーズ」。

初めての重賞挑戦ではあるが、前走6馬身圧勝したように覚醒したとなれば軽視はできない。

●グラビテーション (牡3歳 川崎・山崎裕也厩舎)

写真:真鍋元

京浜盃から中一週のローテーションで臨む馬が何頭かいるが、
「スタートは良かったんだが3完歩目に大きく躓いて落ちるかと思ったくらい。それでリズムを崩し、まったくレースにならなかった」(今野忠成騎手)と言うからには地元で面目躍如したいところ。

「躓いて置かれたことで進んでいかなくなってしまった。休み明けを大井2回使ったけど、どうも前向きさが足りないから今回はブリンカーを着用してみる。間隔がないぶんサーッと軽く流す調整をしたが、その時に着けてみたら反応が良さそうだ。馬がまだ緩く身体のパーツが幼い段階でここまできた。ひとつひとつ力をつけてくればもっと走ってくれると思う。まずはレースでのメンタル面の弱さをカバーしていければ」と山崎裕也調教師。

最終コーナーを回るとスイッチが入ったように一気に加速する切れ脚が魅力。近走はクラシックを意識して距離を延ばしてきたが元々はマイルもこなせるタイプ。地元に戻ってブリンカーの効果に期待。

●トーセンアイアン(牡3歳 船橋・川島正一厩舎)

写真:真鍋元

デビューから7戦2勝、2着3回という堅実タイプ。
前走は休養明けで、マイナス18キロという馬体重もあって息が保たず凡走したが、その後馬体がふっくらしてひと叩きした上積みは十分。

「ひと叩きしたことでだいぶ良くなっている。マイルは丁度いいし、物怖じしない性格だから初コースの川崎も苦にしなさそうだ。メンバーが揃っているから挑戦者の気持ちでぶつけてみる」
と川島正一調教師。

以前は見られた道中フワフワと気を抜く面も解消されてきたこともあり、侮れない存在。

●アギト(牡3歳 浦和・小久保智厩舎)

写真:真鍋元

川崎では3戦して2連対と相性のいいコース。
スタートのタイミングが合わず後手を踏むことも多いが、終い確実に伸びてくる末脚で、ニューイヤーカップ5着、雲取賞4着といずれも最後方から詰めた。
前走の京浜盃では直線入り口で不利を被ったことが最後の伸びに影響。中一週ローテーションでの出走となった。
長くいい脚を使えるだけにここも展開の助けがほしい。

●サクセッサー (牡3歳 船橋・佐藤賢二厩舎)

写真:真鍋元

門別でデビューし重賞サンライズカップでは4着ながら、のちの北海道2歳優駿優勝馬イグナシオドーロとは1馬身差だった。
船橋に移籍してから3戦し、4着・2着・2着と勝ちきれずにいるが潜在能力の高さがうかがわれ、一戦ごとに内容が良化。前走のクラウンカップトライアルの東京中日スポーツつばき賞では着差があったものの2着に迫っている。勝ち馬のタイムが破格だっただけに人気薄を考えれば健闘。川崎コースへの適性も確認できた。
あとは気性面。揉まれない展開が理想だろう。

金子正彦

金子正彦

1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。

中川明美

中川明美

競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

プロフィール_2

写真:真鍋元

1、2着に羽田盃への優先出走権が与えられるクラシックの前哨戦。日程的に厳しいところではあるがクラシックを目指す馬にとっては権利を獲りたい一戦。
また、距離マイルなことから、走り方によっては優駿スプリント等の短距離路線へと向かう馬も出てくるだろう。
レースは、好枠を引いた1番人気ダンサーバローズが逃げる気満々という感じだったが、好スタートを決め、行き脚のついたホールドユアハンドが主導権を握るかたちとなった。
2番手にはカシノビート。イン3番手にダンサーバローズ。差がなくサクセッサーと続く。
勝負どころまで先行勢に目立った動きはなかったが、3コーナー過ぎからサクセッサーが動き出し、直線ではホールドユアハンドとサクセッサーの一騎打ちに。
最後までもつれあったがクビ差振り切ったホールドユアハンドが初重賞制覇。直線大外から鋭く伸びたアギトが2馬身半差の3着に飛び込んだ。

昨年の覇者スプリングマンはホールドユアハンドの兄であり、小久保智調教師はローズジュレップ、スプリングマンと続くクラウンカップ三連覇となった。

写真:小川慎介

1着 ホールドユアハンド

第1レースの本馬場入場で左海誠二騎手が右足を負傷し、急きょ戸崎圭太騎手へと騎乗変更。
馬の気持ちを崩さない絶妙な逃げに持ち込むと、見事代役を果たし勝利に導いた。
最後は接戦を凌ぐ勝負強さを見せ、トライアルでも破格タイムで圧勝しているように川崎コースとの相性は抜群。

<小久保智調教師>
前回が不可解な負け方でしたので立て直すのに必死。中一週の出走で、そのぶん逆に仕上げはラクでしたが、精神的なショックをどう回復させるか苦労しました。前回ほど力んでなかったのでだいぶ回復していたようですね。まだ完成前でまだまだ良くなる馬。羽田盃に進むかどうかはもう少し考えたいと思います。


 

<戸崎圭太騎手>
またこの勝負服で重賞を勝ててうれしいですね。
レース前は本命馬が先に行くだろうとスタート次第で決めようと思っていましたが、こちらの方が速かったですし馬の気分を害したくないのが一番だったんでハナを主張していきました。
最後まで手応えもあって、(サクセッサーが)来るとまた反応してくれました。
乗り替わりではありましたが、この馬の力を出し切れたと思います。


2着 サクセッサー

揉まれることなく好位を追走。直線競り合うホールドユアハンドとゴール板までクビの上げ下げ。勝ち馬を最後まで苦しめたがわずかに一歩及ばなかった。

<石崎駿騎手>
右トモはここ最近良くなってきているが、それでもまだ甘さがあって4コーナーで手前を替えてから伸び切れていない。いったん出たんですがクビの上げ下げ。最後はそのぶんの差かな。距離はもっと長くても保つと思うし、折り合いもつく。もっと良くなってきますよ。

3着 アギト

近走は後方からのレースが続き、終いは確実に伸びてくる。
今回も4コーナーでは9番手の位置取りで、直線だけの競馬で3着まで追い上げた。
川崎コースとの相性も良さそうだ。

<山崎誠士騎手>
今日は大外枠だったから気合をつけていった。馬の集中力を切らさないようにとインに入れ、道中は追っつけ通しだったが、終いはいい脚で伸びてくれた。馬の走りは良いから、気性がもっと成長してくれれば。

4着 マムティキング

後方からの位置取りだが、得意の末脚を生かす競馬はできたのではないか。適性としては距離マイルはギリギリの線と言えそうだ。

<柏木健宏騎手>
枠順が外だったのでタメていく競馬でしたがこういう競馬が合ってますね。小回りは上手だし左回りはスムーズ。ただ距離はマイルがギリギリという感じで、最後は止まってしまっていた。前に1200mでいい競馬をしているし距離はもっと短い方がいいかもしれません。競馬センスのいい馬です。

5着 フォルベルス

短い距離を中心に使って善戦してきたが、マイル以上では初の入着。
重賞での5着は価値があるものだが、決めて不足は否めない。

<的場文男騎手>
初めて乗ったんで、どんなものか砂を被る競馬をさせた。砂を被っても大丈夫だったね。血統もいいし馬が固まってくれば面白い。

7着 グラビテーション

精神面の課題を克服するためにブリンカーを初めて着用。
いつもより前めにつけたレースぶりからも効果があったように思えるが、得意の末脚は見られなかった。

<今野忠成騎手>
道中の手応えも良かったしブリンカー効果はあったと思う。かぶらないところに出せればそこから切れる馬なんですが、今日は追ってから反応がなかった。気持ちの問題なのでしょうか。このところ間隔を詰めて使われたぶん馬がイライラしているのかもしれませんね。

8着 ダンサーバローズ

中央からの転入緒戦で1番人気に推されていた。
スタートは良かったが行くに行けず内にハマってしまったが、自分のかたちでレースができ、砂を被らない競馬になればまた違っていたかもしれない。大型馬ゆえに初めての小回りに戸惑ったのもあるだろうし、今回の着順が本来の力とは思えない。

<矢野貴之騎手>
内枠がアダになってしまって揉まれすぎた。もうひとつ前で競馬がしたかったね。跳びの大きな馬なので小回りへの対応もうまくなかった。まだ脚元が固まっていないしこれからです。

10着 カシノビート

3番手に取りつく絶好ポジションにいたが勝負どころから動きが鈍った。2連勝して初めての重賞挑戦。初の左回りで、その影響もあったか。

<御神本訓史騎手>
走る素質を持っている馬ではあるけど、まだ力をつけている段階。今日はメンバーが強かった。

回数施行年馬名性・年齢騎手
21平成30年スプリングマン 牡3左海 誠二
20平成29年ローズジュレップ 牡3吉原 寛人
19平成28年ガーニーフラップ 牡3的場 文男
18平成27年ウインバローラス 牡3柴田 大知
17平成26年ワタリキングオー 牡3的場 文男
16平成25年アメイジア 牡3吉原 寛人
15平成24年キタサンツバサ 牡3繁田 健一
14平成23年ナターレ 牝3的場 文男
13平成22年ポシビリテ 牡3松岡 正海
12平成21年サイレントスタメン 牡3金子 正彦
11平成20年モエレラッキー 牡3張田 京
10平成19年エスプリベン 牡3今野 忠成
9平成18年サンキューウィン セ3左海 誠二
8平成17年ブラウンコマンダー 牡3張田 京
7平成16年ブルーローレンス 牡3的場 文男
6平成15年ウィンブロー 牡3石崎 隆之
5平成14年キングセイバー 牡3酒井 忍
4平成13年シングルトラック 牡3堀 千亜樹
3平成12年ピーエムカイザー 牡4佐藤 隆
2平成11年キタノダイマジン 牡4桑島 孝春
1平成10年ハードサインカラー 牡4佐々木 竹見