コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和元年度第4回開催 スパーキングレディーカップ 他

7月前半は2~5日の4日間開催。メインとして行われた牝馬によるJpnIIIのスパーキングレディーカップは、1番人気に支持されたJRAのファッショニスタが2番手から直線で抜け出し重賞初制覇となりました。鞍上は川田将雅騎手でした。 初日の最終レースに行われた湘南江の島海の王子杯は、町田直希騎手のクラウンミリオンが差し切り勝ち。さらに10番人気ながら岡村裕基騎手のマゼンタがクビ差で2着に食い下がりました。 最終日の第6レース、5番人気のナムラドリーを4馬身差の快勝に導いたのは伊藤裕人騎手。この開催では5勝と活躍が目立っていました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年7月4日(木)スパーキングレディーカップ

優勝馬 ファッショニスタ

斎藤
好ダッシュは川田騎手のファッショニスタでしたが、逃げたのは岩田騎手のサルサディオーネでした。
竹見
岩田騎手は内枠だったので、最初から行くつもりだったのでしょう。川田騎手も逃げるような勢いでしたが、内の岩田騎手の様子を見て下げました。それで前半はペースがかなり速くなりました。
斎藤
直線を向いてもサルサディオーネが先頭でした。
竹見
4コーナー手前あたりではファッショニスタの川田騎手が追い通しで届かないかと思いましたが、道中、自分のペースで追走できて脚を溜められたぶん、直線はよく伸びました。岩田騎手は1コーナーのところで主張せずに控えていたら、外から被されて2着もなかったかもしれません。やはり道悪では、少し無理をしてでもある程度前に行かないと勝負になりません。
斎藤
3着には格上挑戦の伏兵ローレライが入りました。
竹見
9番枠でしたがスタート後の直線で内に入れて、ラチ沿いぴったりを回ってきました。4コーナーでも最内を突いてうまく抜けてきました。人気もなかったので、気楽に自分の競馬ができたのもよかったと思います。4着だったマドラスチェックは、1番枠からのスタートで、前に行こうとしていたようですが行けませんでした。先行した2頭とはスピードが違いました。

2019年7月2日(火)湘南江の島海の王子杯

優勝馬 クラウンミリオン

斎藤
スタート後は先行争いが激しくなりました。
竹見
クラウンミリオンの町田騎手はスタートでかなり仕掛けていきましたが、前には行けませんでした。それでもラチ沿い5、6番手あたりのちょうどいいところにつけました。前半は前のペースが速かったかもしれません。それでも2コーナーを回るあたりでペースが落ち着きました。
斎藤
直線では、町田騎手のクラウンミリオンと、岡村騎手のマゼンタが馬体を併せたまま伸びてきました。
竹見
町田騎手と、その直後にいた岡村騎手は、4コーナー手前で同じようなタイミングで仕掛けていきました。4コーナーでは狭くなりかけたところ、外にいた赤岡騎手が後退したので、2頭ともうまく外に持ち出すことができました。前半が速かったぶん、控えたこの2頭は末脚を生かすことができました。2人ともうまく乗りましたが、特に岡村騎手は10番人気馬で好騎乗でした。

2019年7月5日(金)C3選定牝馬

優勝馬 ナムラドリー

斎藤
勝った伊藤裕人騎手のナムラドリーは、3走前には逃げて2着がありましたが、今回は中団あたりまで下げての追走でした。
竹見
外から勢いよく何頭も来たので、伊藤騎手は行けないだろうと思って下げたと思います。このあたり、周りをよく見て落ち着いて乗っていました。
斎藤
4コーナーでもまだ6番手という位置から直線で抜け出しました。
竹見
道中はずっとラチ沿いを回ってきて、4コーナー手前では前がずらっと壁になったので、大外に持ち出しました。このあたりの判断も落ち着いていてよかったです。それにしてもナムラドリーは直線、素晴らしい脚を使いました。(川崎移籍後)今回が初勝利とは思えない強いレースをしました。
斎藤
伊藤騎手は前の週の大井、優駿スプリントで重賞初制覇を果たして、この川崎開催では5勝と大活躍でした。
竹見
伊藤騎手は姿勢が崩れないし、馬への当たりも柔らかい。常に落ち着いて乗っています。いい馬に乗せてもらえれば、もっと成績は上がると思います。