コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成30年度第8回開催 鎌倉記念 他

10月15~19日の開催でメインとして行われたのは、2歳馬による鎌倉記念。圧巻のレースを見せたのは船橋のミューチャリーで、鞍上は御神本訓史騎手でした。 この開催では16日にヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドも行われ、その第2戦で川崎の櫻井光輔騎手がみごとに勝利を収めました。 また17日の最終レースでは、コスモオペラに騎乗した瀧川寿希也騎手が勝利。この5日間開催で瀧川騎手は13勝を挙げる活躍を見せました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2018年10月17日(水)鎌倉記念

優勝馬 ミューチャリー

斎藤
御神本騎手のミューチャリーは単勝1.9倍の断然人気。3番手の内につけました。
竹見
スタートして、御神本騎手は気合を入れて行きました。おそらく好位をとりたかったのでしょう。今後のことを考えれば、ある程度気合をつけて行くのはいいことです。
斎藤
4コーナー手前では、逃げていたカンゲキを、まずは北海道のリンゾウチャネルがとらえにかかって、ミューチャリーはさらに外に持ち出して直線は一気に突き抜けました。
竹見
リンゾウチャネルも楽な手ごたえで勢いもありましたが、ミューチャリーはそれ以上でした。まだこれが3戦目。えらい馬が出てきましたね。2歳戦で1500メートルの勝ちタイムが1分33秒6というのは相当に速いタイムです。2着のリンゾウチャネルでも1分35秒を切っていますから(1分34秒9)、それでも優秀なタイムです。ミューチャリーはかなりの出世が期待できそうです。

2018年10月16日(火)ヤングジョッキーズTR川崎・第2戦

優勝馬 ウインタイムリープ

斎藤
櫻井騎手は大外枠でしたが、気合を入れて好位をとりに行きました。
竹見
仕掛けて前目につけたのは、おそらく調教師からの指示もあったのでしょう。スタート後の直線は3番手でしたが、2コーナーを回るところ、ちょうどペースが緩んだところで2番手に押し上げました。あそこは抑えていたらダメなところです。積極的に位置を取りに行ったのはよかったと思います。
斎藤
3コーナー過ぎでは、逃げていた菊澤一樹騎手に並びかけていきました。
竹見
一番のポイントはそこです。ペースが落ち着いているところで、自分から仕掛けていきました。道中はうまく乗っていましたが、最後は少しあぶなかった。櫻井騎手は抜け出して勝ったと思ったのか、最後は流すような感じがありました。外から2、3着馬が追い込んで来ていたので、結果的に勝ったからよかったですが、最後までしっかり追ってこないとダメです。
斎藤
ゴール前、北海道の新人、落合弦太騎手が追い込んで2着でした。
竹見
内枠もあって、好位の内、一番いいところにつけました。3コーナー過ぎでは一旦位置取りを下げて、4コーナーで外に持ち出すと、直線ではよく伸びてきました。新人でもかなりのレース数、乗せてもらっているようで、かなり乗れますね。さすがに50勝近く挙げているだけあって、騎乗ぶりも落ち着いています。

2018年10月17日(水)稲村ヶ崎特別

優勝馬 オスモオペラ

斎藤
瀧川騎手のコスモオペラは、スタート後はあまり仕掛けてはいかず、中団からの追走でした。
竹見
大外枠から的場騎手が一気に切れ込んでハナをとって、前のほうがごちゃつく場面がありました。たまたまですが、瀧川騎手はその影響を受けなかったのは幸運だったかもしれません。
斎藤
瀧川騎手は4コーナーで内を突きました。3番手の好位から直線で抜け出した2番人気、矢野騎手のコアコンピタンスを内から差し切りました。
竹見
4コーナーで勢いのある馬たちがみんな外に行ったので、瀧川騎手は外からでは間に合わないと思ってそのまま内に行ったのでしょう。逃げて勢いをなくしかけていた的場騎手の内、1頭分だけ空いたところから、一瞬で抜け出しました。5番人気でしたが、馬も強かった。強くなければあの狭いところからは出てこられません。やや強引なところもありましたが、外に持ち出していたのではコアコンピタンスには勝てなかったでしょう。思い切りがいいのが瀧川騎手のいいところです。この開催13勝の活躍で、いずれ南関東のリーディングを狙えるようになるのではないでしょうか。