コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第2回開催 川崎マイラーズSIII 他

 5月15〜19日の開催のメインとして行われた川崎マイラーズは、ハナをとった浦和のアイウォールが逃げ切って重賞初制覇。鞍上は森泰斗騎手でした。  初日のメイン、川崎2000シリーズ・アルデバラン賞は、リーチアディールが直線で抜け出し5連勝としました。鞍上は増田充宏騎手でした。  川崎ジョッキーズカップ第4戦は、逃げ粘っていた新原周馬騎手を藤江渉騎手のサヨノミニスターがとらえての勝利。3着には岡村裕基騎手が入り、7→3→4番人気で3連単17万円の波乱の決着でした。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修) 

2023年5月17日(水)川崎マイラーズ

優勝馬アイウォール

 外からアランバローズの笹川騎手が気合を入れて行きましたが、内のアイウォールが譲りませんでした。アランバローズに主張されたり、枠順が逆だったら展開も結果も違うものになっていたかもしれませんが、アイウォールがハナを取りきったことで隊列が決まりました。  それでもアイウォールの森泰斗騎手は向正面から3コーナー過ぎまでペースを緩めず、縦長の展開になりました。直線では2番手3番手についてきた馬が一杯になり、ゴール前で2着に追い込んだのは最後方を追走してい今野騎手のスワーヴアラミスでした。  アイウォールはすんなり単騎で逃げられたことが勝因でしょう。距離的にも、スピードを落とさず走りきれるマイルあたりまでが合っていると思います。

2023年5月15日(月)アルデバラン賞

優勝馬リーチアディール

 増田騎手のリーチアディールは、互角のスタートを切りましたが、下げて5番手あたり。縦長の展開になりましたが、1周目のスタンド前では徐々に前との差を詰めていい位置につけました。ただ向正面でペースが上がったところでは動けず、位置取りを下げてしまいました。増田騎手は仕掛けてはいるのですが、反応があまりよくありません。そういう脚質だけに長距離が合っているのかもしれません。馬体重も530キロ台の大型馬なので瞬発力勝負はできず、長く脚を使うタイプです。  リーチアディールは、3、4コーナーでようやくエンジンがかかって外に持ち出すと、直線で追い出されてからの伸びが違いました。連勝するようになってずっと増田騎手が手綱をとっているので、自信もあったのでしょう。この距離ならA級に上がっても勝負になる力がありそうです。  向正面でうしろから動いてきたのがギンザロッソとファイナルマズルで、これが2着、3着。御神本騎手と笹川騎手もいいタイミングで仕掛けましたが、勝ったリーチアディールが人気にこたえて強い競馬をしました。

2023年5月17日(水)川崎ジョッキーズカップ第4戦

優勝馬サヨノミニスター

 新原騎手(フォルリリアーナ)は外枠からでも思い切ってハナをとりに行きました。減量のあるうちはちょっと無理してでも先行する姿勢はいいと思います。1、2コーナーあたりでは前が競り合って前半ペースが速くなったぶん、かなり縦長の展開になりました。  勝った藤江騎手のサヨノミニスターは、スタート後は控えて5番手でしたが、ペースが落ち着いた向正面で徐々に前との差を詰めて行きました。このあたりはペースをうまく読んでいたと思います。  前半ハイペースになりましたが、フォルリリアーナは直線を向いても単独先頭でよく粘っていました。最後の2ハロンは14秒台かかってバタバタになりましたが、前半に脚を使わされたぶん、うしろの馬たちも脚が残っていませんでした。その中で唯一、伸びてきたのがサヨノミニスターでした。これは藤江騎手の騎乗を褒めるべきでしょう。新原騎手も、この展開で負けたのでは仕方ありません。うまく乗ったと思います。