コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第11回開催 報知オールスターカップ他

 正月開催のメインは川崎記念トライアルの報知オールスターカップ。2番手から向正面で先頭に立ったエルデュクラージュが直線後続を突き放し、1番人気にこたえる完勝。昨年は川崎記念JpnIで2着もありましたが、船橋転入後、これが初勝利となりました。鞍上は矢野貴之騎手でした。  恒例の川崎ジョッキーズカップ第1戦は、単騎で逃げた小林捺花騎手が直線でも先頭でしたが、1番人気の今野忠成騎手がゴール前でとらえると2馬身半差をつけての勝利となりました。  最終日6日に行われた昇龍特別は、最後方を追走した池谷匠翔騎手のキャッスルロックが直線大外に持ち出して豪快に差し切りました。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年1月3日(火)報知オールスターカップ

優勝馬エルデュクラージュ

 スタート直後はカイルとエルデュクラージュの先行争いとなりましたが、内のカイルがハナを主張して先頭に立ち、外枠からキタノオクトパスも差のない3番手につけました。早めに隊列が決まり、頭数があまり多くなかったこともあって、ペースは速くもなく、遅くもなくという感じ。平均ペースで流れましたから、2100m戦でも掛かるような馬はいませんでした。  カイルはスタートで脚を使ったぶん、3コーナー手前で一杯になってしまいました。エルデュクラージュは自然な形で先頭に立って、直線では後続を寄せ付けずの横綱相撲。カイルが緩みのないペースでレースを引っ張ってくれたぶん、エルデュクラージュの矢野騎手はレースがしやすかったと思います。ただ勝ち方を見ても、このメンバーでは能力が抜けていました。この距離も向いていると思います。  先行勢のうしろにいたスワーヴアラミスが、直線2番手のサンビュートを交わして2着。ペースアップした3コーナーあたりで今野騎手は先行勢の動きを見ていて、直線まで追い出しを待ったのがよかったと思います。  北海道のサンビュートは3コーナー手前から仕掛けていって、4コーナーではエルデュクラージュの直後に迫る場面がありましたが、ゴール前で一杯になってしまいました(3着)。乗替りで初騎乗となった落合玄太騎手が早めに動いたのは、勝ちに行ってのもので仕方ないと思いますが、結果的に追い出すのが早かったかもしれません。それでも3着は力のあるところを見せました。

2023年1月3日(火)2023川崎ジョッキーズカップ第1戦

優勝馬イグレック

 13頭立ての11番枠から小林騎手(グレル)が気合を入れてハナを取りにいきました。ただそれで馬が行く気になってしまい、持っていかれるような形で2コーナーを回ると、2番手以下を離して単騎の逃げになりました。ハナを取りに行ったのは、おそらく指示があってのことと思いますが、内の出方を見ながら1コーナーを回る手前で先頭に立つような感じでじっくり行けば、馬が掛かることはなかったかもしれません。そのあたりは少し残念でした。  勝った今野騎手のイグレックは、離れた2番手集団のラチ沿い、絶好位を追走しました。3コーナーあたりでその集団から抜け出すと、前のグレルをとらえにかかりました。ただそのときもあまり無理はしていません。今野騎手は前が直線で一杯になるのはわかっていたでしょうから、じわじわと差を詰めていって、ゴール前でとらえての完勝でした。1番人気でも、前の様子を見ながら落ち着いて乗っていました。  小林騎手のグレルは向正面まで掛かっていって、それで2着に食い下がったのは、4キロの減量も大きいと思います。減量があるうちは少し無理に行ってもある程度は粘れますから、積極的に前に行ったほうがいいです。  差がついての3着は、池谷匠翔騎手のクオーレでした。真ん中あたり6番枠からのスタートで内に進路をとると、勝った今野騎手の直後につけました。3コーナーからもラチ沿いを通って位置取りを上げてきて、うまく乗ったと思います。

2023年1月6日(金)昇龍特別

優勝馬キャッスルロック

 最内枠の山林堂騎手(ゴールドレーベン)はスタートでタイミングが合いませんでしたが、それでもハナを主張して、これに笹川翼騎手(エースストライカー)が競りかけて行きました。さらに藤本現暉騎手のワイプアウト、今野騎手のエスプリピートも続いて、前は忙しい流れになりました。  2コーナーを回るあたりで一旦は落ち着きかけましたが、向正面に入ると今度は新原周馬騎手のグローサーベアが掛かり気味に先行集団の外に並びかけてきて、前に行った馬たちは息を入れるところがありませんでした。結果的に、3~4コーナーでうしろにいた3頭での決着になりました。  勝ったキャッスルロックの池谷騎手は、最低人気で気楽に乗れたこともあったかもしれません。後方からラチ沿いをまわってきて、4コーナー手前では前の馬たちがカベになって行き場がありませんでした。直線を向いたところでは馬群がずらっと横に広がって、その大外まで持ち出しました。あそこからよく差し切ったと思います。池谷騎手は人気薄ながらの好騎乗でした。  今野騎手は、前半は先行馬群について行きましたが、向正面でグローサーベアが掛かっていったタイミングで控えて、3~4コーナーでは先行勢のうしろでタメができました。直線を向いて横に広がった中からゴール前で一旦は先頭に立って、完全に勝ちパターンでしたが、これは勝った池谷騎手とキャッスルロックを褒めるしかありません。  池谷騎手の大外一気は、見ごたえのあるレースでした。