コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第9回開催 ローレル賞SII他

 11月7~11日の開催では重賞が2レース行われました。2歳牝馬によるローレル賞は、1番人気に支持された高月賢一厩舎のマカゼが後続を寄せ付けず逃げ切りました。鞍上は矢野貴之騎手でした。3歳牝馬によるロジータ記念は、二冠牝馬、浦和のスピーディキックが2着に6馬身差をつけ圧倒的な強さを見せました。鞍上は御神本訓史騎手でした。  恒例の川崎ジョッキーズカップ第10戦は、1番人気に支持されたバードハズフロウンの伊藤裕人騎手が落ち着いた騎乗で直線で抜け出しました。  この開催でも新人ジョッキーの活躍が目立ち、野畑凌騎手が5勝、新原周馬騎手が4勝と健闘。10日の「ご縁の国しまね」特別では、エレガンテヴァイゼに騎乗した野畑騎手が向正面からのロングスパートで直線抜け出しました。  今回はこの4レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年11月8日ローレル賞

優勝馬マカゼ

  マカゼはダッシュ力があります。しっかり折り合いがついて、4コーナーあたりでも手応え十分で、このペースで逃げられたのでは、ほかの馬はかないません。直後につけた馬たちが次々に脱落していったことでも、マカゼの強さがわかります。勝ち時計の1分44秒6(1600m)は標準的なものですが、2、3番手に控える競馬を覚えれば、これからもっとよくなってくるでしょう。  2着に入った御神本騎手(サーフズアップ)は6番手あたりから。ずっと内のコースロスのないところを走ってきて、直線もしっかり伸びました。この馬は距離伸びてもっと力を発揮すると思います。  マカゼと人気を分けた今野忠成騎手のエスプリダーコは、スタートしての直線から折り合いを欠いていました。向正面でもまだ行きたがっていたので、これでは4コーナーで失速したのも仕方ありません(13着)。もともと折り合いが難しいようで、距離は短いほうが合っているのかもしれません。  3着のエイシンレア(本橋孝太騎手)は中団から、4着に入った山崎誠士騎手のマインドユアミモザは後方から位置取りを上げてきて、4コーナーで最内を突いて伸びました。2~4着は中団よりうしろを追走していた馬たちで、マカゼを好位で追いかけた馬たちには厳しい流れだったようです。

2022年11月9日ロジータ記念

優勝馬スピーディキック

 スピーディキックはスタートしてすんなり外の3番手につけました。能力が高い馬は外枠のほうがいいです。行く馬がいればそれについていけばいいし、包まれたりという心配もありません。道中は2100メートルでも極端なスローペースにはならず、掛かっていくような馬もなく、どの馬にも力を発揮できる流れでした。4コーナーからは、すぐ前にいたティーズハクアと一騎打ちになりましたが、直線半ばであっさり突き放しました。この馬は、同世代の牝馬同士では力が違い過ぎます。  2番手につけたティーズハクアは、3コーナー過ぎでスピーディキックに並びかけられても、直線半ばまでは抵抗していました。これで負けたのでは仕方ありません。浦和の桜花賞でもスピーディキックの2着、戸塚記念でも4着で、相手が悪かったとしか言いようがありません。  スピーディキックが3コーナーで前をつかまえに行ったあたりで、3番手以下の馬たちは追ってもついていけませんでした。勝ったスピーディキック、2着ティーズハクアの力が、それだけ抜けていたということでしょう。

2022年11月9日(水)2022川崎ジョッキーズカップ第10戦

優勝馬バードハズフロウン

 エリートバイオの中越琉世騎手が出ムチを入れてハナを主張すると、外からユラニュスの古岡勇樹騎手も譲らない構えで、山林堂騎手(アフオラカ)は3番手に控えましたが、3頭ともがハナに行きたかったのか、前はちょっと飛ばし過ぎました。  勝った伊藤裕人騎手のバードハズフロウンは、好スタートを切りましたが、すぐに下げて6番手あたりからの追走でした。先行勢の手応えが一杯になって下がりはじめた4コーナー手前でも、内にいた伊藤騎手は落ち着いていました。4コーナーを回るところでは中越騎手の外に進路を見つけ、そこから抜けてきました。1番人気とはいえ好騎乗でした。  ゴール前、内外離れての2着争いは、新人の新原周馬騎手(ドルドルエイト)と、野畑凌騎手(ピエナゴールド)でした。ともに向正面までは中団よりうしろを追走。4コーナーでは、野畑騎手がラチ沿いを突いたのに対して、新原騎手は大外。その新原騎手がゴール前で野畑騎手を交わして2着に入りました。  川崎の4コーナーは、内を突くか大外を回すか判断が難しいところですが、内の野畑騎手もよく抜けてこられたし、外の新原騎手もゴール前でよく伸びました。どちらも思い切ったいい判断だったと思います。

2022年11月10日(木)「ご縁の国しまね」特別

優勝馬エレガンテヴァイゼ

 勝ったエレガンテヴァイゼの野畑騎手は、スタートで出して行かず、11番枠からすぐ内目に進路をとって最後方からの追走でした。前半はゆったり流れていましたから、あの位置取りでよく勝ったと思います。向正面中間から一気に進出し、3コーナーでは先行2頭の直後。そこでも行き脚を止めることなく、手応え十分のまま前の人気2頭を交わしていきました。一気に先頭まで行ききったのはよかったと思います。うしろから一気に来られたので、1番人気の森泰斗騎手(コスモスターリング)はちょっと慌てたようでした。  エレガンテヴァイゼは540kgの大型馬で、瞬発力勝負ではなく長く脚を使うタイプなので、野畑騎手はその持ち味をうまく引き出しました。流れを読んで、思い切った好騎乗でした。