コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第8回開催 鎌倉記念SII他

 10月12日にはヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドが行われ、その第2戦では、野畑凌騎手、新原周馬騎手がワンツーとなりました。  また同日のメインに行われた2歳馬による鎌倉記念では、浦和のヒーローコールが1番人気にこたえて勝利。川崎コースで4連勝としました。鞍上は船橋の左海誠二騎手でした。  そしてこの開催では、野畑騎手、新原騎手がともに4勝を挙げる活躍。初日10日の第10レース、ねんりんスマイリングフェスタ開催記念杯では、1番人気に支持された新原騎手のキットサクラサクが、2番手から早め3コーナーで先頭に立って押し切りました。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年10月12日(水)ヤングジョッキーズシリーズTR第2戦

優勝馬リボーンヴィグラス

 内の3番手からリボーンヴィグラスの野畑騎手がハナをとって、大外枠から新原騎手のシンキングポケットが2番手。これで流れが落ち着くかと思いましたが、中央の水沼元輝騎手のアークストーンが1~2コーナーでハミを噛んでしまい、外から先頭に立つような勢いでした。隊列が決まりかけたところでしたから、これは抑えないといけないところです。向正面ではかなり縦長になって、新原騎手は前2頭にはついていかず、離れて3番手。ペース的にはこのあたりがちょうどよかったと思います。  向正面では前2頭がほぼ併走という形でしたが、野畑騎手は控えてアークストーンの外に出してもよかったかもしれません。そのほうが楽に勝てたと思います。3コーナーではもう一度先頭に立って、そのまま押し切りました。  向正面で脚を溜めた新原騎手のシンキングポケットが1馬身半差まで迫りましたが、これは勝った馬が強かった。  水沼騎手のアークストンは直線でバテるかと思いましたが、前2頭とは離されたものの3着。うしろから伸びて来る馬もいませんでした。この日は前残りのレースが目立っていたので、多少無理しても残れたのかもしれません。

2022年10月12日(水)鎌倉記念

優勝馬ヒーローコール

 好スタートを切った北海道のスペシャルエックス(矢野貴之騎手)が先頭に立って、もう1頭北海道のデステージョ(森泰斗騎手)や、ヒーローコール(左海誠二騎手)も先頭を狙うような勢いでしたが、無理に競りかけてはいかずに抑えました。それでも左海騎手は2コーナーあたりでじわじわと前との差を詰めて、半馬身くらいの差でスペシャルエックスにプレッシャーをかけて行きました。  3コーナーからは3番手以下を離して前2頭の一騎打ちになりました。4コーナーでは完全に2頭が並んで、ゴール前でヒーローコールが振り切りました。鞍上が左海騎手ですから、どうしても前々でのレースになりますが、今後のことを考えると、3、4番手に控えるレースを経験させるといいと思います。  スペシャルエックスは、最後までよく食い下がっての2着。北海道デビューでもこれが4戦目と、まだキャリアは浅いですから、これからもっと強くなるでしょう。

2022年10月10日(月)ねんりんスマイリングフェスタ開催記念杯

優勝馬キットサクラサク

 アトムズスピアーの左海誠二騎手が、何が何でもという勢いでハナに立って、新原騎手のキットサクラサクは外枠からでもあまり無理せずスッと2番手につけました。スタートして1コーナーまで距離がある川崎の1600mは、ほかの馬の邪魔をせずに位置を取りに行けますから外枠のほうが楽です。2コーナーを回ったあたりでは、新原騎手は引っ張りきれないような手応えでアトムズスピアーと併走する場面もありましたが、なんとか2番手で我慢させたのはよかったと思います。  新原騎手のキットサクラサクは3コーナー過ぎで先頭に立って、3番手にいた和田譲治騎手のブルーオラーリオも迫ってきましたが、直線で振り切っての完勝でした。4、5番手を追走していたエリオット(山中悠希騎手)が差を詰めての3着で、前にいた馬たちでの決着。後ろから伸びてくる馬はいませんでした。  勝ったキットサクラサクは、これで中央から移籍して2連勝。新原騎手もうまく乗りましたが、1番人気に支持されていたように、このクラスでは力が違いました。