コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第6回開催 スパーキングサマーカップ 他

 8月後半は週末を挟んで25・26・28・29日の変則4日間開催。初日に行われた地方全国交流のスパーキングサマーカップは、岩手に移籍したヴァケーションの参戦も注目となりましたが4着。勝ったのは中央オープンから船橋移籍2戦目のフィールドセンス。鞍上も船橋の本橋孝太騎手でした。  同日第5レースに行われたJRA認定のシャイニングメモリー賞は、エスプリダーコが直線内から抜け出しデビューから2連勝。鞍上は今野忠成騎手でした。  最終日、5頭立てとなった宮前スプリントは、コウギョウブライトがゴール前で1番人気のコパノフィーリングを差し切り、川崎スパーキングスプリント2着の雪辱を果たしました。殊勲の鞍上は池谷匠翔騎手でした。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年8月25日(木)スパーキングサマーカップ

優勝馬 フィールドセンス

 フィールドセンスの本橋騎手はスタートしてすぐに抑えて中団よりうしろから。1コーナーまで前が少し速かったということもあると思いますが、転入初戦だった前回も騎乗していて、終いの脚がいいというのを知ってますから、その末脚を生かせる位置取りだったのでしょう。  向正面中間過ぎで中団から後方の馬たちが動きはじめていましたが、本橋騎手はまだ抑えたまま、じっくり構えていました。そして3コーナーから一気にまくっていきました。前を見ながらそのタイミングを狙っていたのでしょう。  2番手を追走していた1番人気のスマイルウィ(張田昂騎手)が直線先頭に立って、普通ならこの馬が勝ったような流れでしたが、フィールドセンスがゴール前、一瞬のキレを発揮して、測ったように差し切りました。このメンバーでは能力が1枚上手でしたが、追い出しを我慢した本橋騎手もうまく乗りました。

2022年8月25日(木)シャイニングメモリー賞

優勝馬 エスプリダーコ

 エスプリダーコは新馬戦のときも見ていましたが、将来強くなるという印象でした。その新馬戦は逃げ切りでしたが、今回はレース前に久保調教師から「今度は砂をかぶせていく」と聞いていましたが、そのとおり、今野騎手はスタート直後から抑えて行きました。少しごちゃつくようなところがあって、頭を上げて嫌がるような素振りもありましたが、1コーナーを回るあたりで落ち着きました。4番手のラチ沿い、絶好位をキープして、前にいる逃げ馬とは少し離れていましたから、あまり砂をかぶらない位置が取れました。  他馬の鞍上の手が動いていた4コーナー手前でもまだ手応え十分でした。このあたり、前3頭が壁になって、外にも2頭がいて完全に囲まれるような形になりましたが、今野騎手は自信もあったのでしょう、落ち着いていました。  直線を向いて、ラチ沿い1頭分スペースができたので、今野騎手は迷わずそこから抜け出して、余裕で後続を振り切りました。仮に最内が開かなくても、直線を向いてバテて下がる馬もいましたから、馬群の間からでも抜けて来られたと思います。ゴール前にもうひと伸びして後続を離しましたが、馬がまじめに力を発揮したのはそこだけかもしれません。  デビュー2戦目からこういう控えたレースを経験させたことでは、大事に使っていけばこのあとまだまだ強くなるでしょう。距離的にも、もっと長くても問題ないでしょうし、将来性はかなりあると思います。

2022年8月29日(月)宮前スプリント

優勝馬 コウギョウブライト

 5頭立てで内2頭がスタートから競り合い、勝った池谷騎手のコウギョウブライトは3番手につけました。内の2頭が行くのはわかっていたでしょうから、コウギョウブライトは、砂をかぶらない外目につけられる5番という枠順もよかったと思います。もし枠順が逆で、コウギョウブライトが内に入っていたら、一旦下げて外に持ち出さないといけませんから、苦しい展開になっていたかもしれません。  池谷騎手は前の2頭を見ながら、直線を向くまで待って追い出したというタイミングもよかったと思います。直線でも1番人気のコパノフィーリングが先頭で粘っていましたが、コウギョウブライトは最後によく差し切りました。  池谷騎手は追ってくるときも手綱を緩めないように短く持って、という基本がしっかりできています。姿勢がぶれないのもいいです。デビューしたころからは見違えるようにうまくなりました。