コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成21年度第1回開催 クラウンカップ 他

4月13日~17日の開催では、15日のメインとして、東京ダービーへ向けた重賞・クラウンカップが行われました。 そのクラウンカップは、金子正彦騎手のサイレントスタメンが最後方から一気の追込みを決めて勝利。そして同日の最終レース、春眠特別(B2三組、B3一組)は、今野忠成騎手のハナビバーチェが勝ちました。今回は、この2レースを振り返っていただきました。(聞き手・構成/斎藤修)

2009年4月15日(水)クラウンカップ

優勝馬 サイレントスタメン

斎藤
スタート後に町田直希騎手のワールドベアハートが内にヨレているのが気になりました。
竹見
1600メートルのスタート後は、4コーナーのところまで内ラチがないので、ああいうふうに内に行ってしまう馬もたまにいます。ただ1周目の直線では、今度は急に外に持ち出して、他の馬の邪魔にならなかったからよかったですけど、あまり誉められた騎乗ではありませんね。
斎藤
サイレントスタメンは最後方からになりました。金子騎手は、もう少し前に行けると思っていたとレース後に話していましたが。
竹見
向正面でも一番うしろですからね。さすがにこの位置取りになったら、もう開き直って乗るしかないでしょう。もしかすると、着くらいあればというような気持ちで乗っていたかもしれません。金子騎手は、わりとゆったり乗る騎手なので、それもよかったと思います。いつものとおり3コーナーから仕掛けていくつもりで乗っていたんでしょう。
斎藤
直線はすごい脚で追い込みました。
竹見
3コーナー手前から行って、4コーナーであの位置(中団よりうしろ)から届くんですからね。以前に雨馬場で勝ったとき(2月23日・うぐいす特別)に、この馬は走るなと思ったんですが、それにしても勝負強い馬です。川崎のコースで、こうした追込みが決まることはあまりないですよ。
斎藤
次走は東京ダービーのようです。
竹見
ちょっと馬体が薄い感じがしますが、力はあります。大井コースになれば直線が長くなるので、この馬にはいいのではないでしょうか。
斎藤
2着がブルーヒーローで、足立勝久厩舎のワンツーでした。
竹見
2着に入ったブルーヒーローも、内から抜け出してきて粘るんですから、将来性はあります。このあと東京湾カップでは3着でしたが、勝ったブルーラッドも足立さんの厩舎でした。足立さんのところには、ほんとうにいい馬がたくさんいます。
斎藤
ホットロッドの今野騎手が、3~4コーナーで仕掛けて、4コーナーでは先頭に立つ勢いでした。
竹見
道中は5番手あたりのいい位置につけて、3コーナーから行って、勝てるパターンではあったんですが……。最後、もう少し力があれば、内から(ブルーヒーローに)抜けてこられるようなことはなかったと思います。最後は力負けでしたね。

2009年4月15日春眠特別

優勝馬 ハナビバーチェ

斎藤
ハナビバーチェの今野騎手は、スタートして気合を入れて行きました。ハナに行こうとしていたんでしょうか。
竹見
いえ、好位につけて行くつもりで追っていたと思います。おそらく、ハナに行くつもりはなかったでしょう。外からビービーブルースが行く構えだったので、うまくそのうしろに入れました。
斎藤
今野騎手は、向正面では3番手の絶好位につけました。
竹見
そうですね。行く馬を行かせて、積極的にいい位置を取りに行って、理想的なところにつけられたのではないでしょうか。
斎藤
4コーナーで外から先頭に立ちました。
竹見
3~4コーナーでも手ごたえがよかったですね。川崎では、4コーナーで内に入れると詰まってしまうことがあるので、手ごたえのある馬は外に出したほうがいいんです。大井のように直線が長ければ、内から抜け出してくることもありますけど……。
斎藤
直線では3馬身突き放しました。
竹見
ハナビバーチェは、大井の鷹見厩舎ですよね。今回川崎は初めてでしたが、大井でちょっと足りないような馬は、川崎(の同じクラス)に持ってくると勝てることがあるんです。この馬はまだ上のクラスにいっても活躍できるでしょう。
斎藤
増田充宏騎手のカネショウパパが2着でした。
竹見
位置取りは中団よりうしろでしたが、向正面から早めに仕掛けて、直線ではいい脚を使って伸びてきました。増田君は調教でも真面目にやっているので、あとは数を乗せてもらえば、これから伸びてくるでしょう。