コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成21年度第7回開催 戸塚記念 他

9月4日~8日の開催では、8日のメインに3歳馬による重賞・戸塚記念が行われました。ブルーラッドが直線で突き放し、人気になったブルーヒーローは今回も2着。なかなか重賞が勝てません。 今回は、その戸塚記念のほか、増田充宏騎手が人気薄ながらケイアイハリウッドを勝利に導いた7日のC3級戦と、2歳馬らしからぬレースぶりを見せたハクシュウワインが勝ったレースを振り返っていただきました。(聞き手・構成/斎藤修)

2009年9月8日(火)戸塚記念

優勝馬 ブルーラッド

斎藤
ブルーヒーローは、今回は差のない4番手あたりから積極的なレースをしました。
竹見
真島大輔騎手は、ちょうどいいところから行ってるんですが、どうしてか最後は伸びませんでしたね。
斎藤
1周目のスタンド前は、かなりペースが遅くなりました。
竹見
そうですね。ずいぶんペースが遅くなりました。馬群が一団になって、それでもどの馬も折り合いがついて、掛かっている馬はいませんでした。ブルーラッドだけがちょっと行きたがっている感じでしたが、御神本騎手は無理に押さえずに、2コーナーで行かせました。これがよかったと思います。
斎藤
3~4コーナーでも、真島騎手は早めに前をとらえに行きました。
竹見
ブルーヒーローは、3~4コーナーでブルーラッドに楽に並びかけられれば直線で差し切れたんでしょうが、ブルーラッドの御神本騎手の手ごたえが楽なのに対して、ブルーヒーローの真島騎手は、すでに懸命に追っているような状態でした。3コーナーまではいい感じの手ごたえだったんですが……
斎藤
ブルーヒーローは、どんなレースをしてもなかなか勝ち切れません。
竹見
そうですね。このレースでは下手に乗った騎手はひとりもなく、みんなうまく乗っていました。特にブルーヒーローの真島騎手もまったくミスはありませんでした。これで勝てないのでは、どういうレースをすればいいのか、難しいですね。それに対して、ブルーラッドのほうは東京湾カップも勝っていますし、勝つときは強いレースをします。

2009年9月7日(月)C3四五

優勝馬 ケイアイハリウッド

斎藤
ケイアイハリウッドは、最内枠でしたが5番手からになりました。
竹見
スタート後に増田充宏騎手が気合を入れていますが、前には行けませんでした。ダッシュ力はあまりないのかもしれません。
斎藤
内枠だったのでもう少し積極的に行ってもよかったように思うのですが。
竹見
先頭からはやや離れていましたが、ギョクコウヒカリは掛かっているし、3頭が前でかなり競り合っていました。それを見ての4~5番手はちょうどいい位置だったでしょう。3コーナーでは、それほど追わずに楽に前にとりつきました。
斎藤
直線はうまく抜け出しましたね。
竹見
3~4コーナーでは、前で競り合っていた3頭のうちの2頭が下がって、増田騎手はうまくラチ沿いの経済コースを通ってきました。直線では岩城騎手のエイコーロンシャンだけ交わせばというレースになりましたから、うまく乗ったと思います。最後は1番人気、町田騎手のラブファンタジーが伸びてきましたが、差を詰められずに押し切ることができました。

2009年9月8日(火)特選2歳2イ

優勝馬 ハクシュウワイン

斎藤
ハクシュウワインの酒井忍騎手は、2番枠でもあり、積極的に行こうとしていました。
竹見
ゲートを出てからかなり追っていますが、ハナには行けませんでした。1コーナーの手前では口向きが悪いところを見せました。あまり真面目にレースをしていませんね。
斎藤
3コーナー手前、前が速くなったところでハクシュウワインはついて行けない感じで、位置取りを下げましたが。
竹見
先に行った馬たちが固まってごちゃつく感じになりました。だから、ここで行かなかったのは、むしろよかったのではないでしょうか。
斎藤
直線を向いたあたりでは、すでに手ごたえが残っているようには見えませんでしたが、ゴール前では酒井騎手が必死で追って来ました。
竹見
最後はよく追い込んで差し切りました。デビュー間もない2歳馬が、一旦下げてゴール前で差し切るというレースぶりは、将来性があります。いい経験になったと思います。2歳戦では、だいたいハナに行くか2番手あたりから抜け出すようなレースが多いですが、なかなかこういう勝ち方ができる馬はいません。