コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成21年度第12回開催 川崎記念 他

川崎記念は、フリオーソとヴァーミリアンによる互いに譲らぬハナ争いでスタートし、最後の直線も2頭の叩き合いは見ごたえがありました。勝ったヴァーミリアンにとっては、07年に続く川崎記念制覇で、GI(JpnI)9勝目となりました。クビ差で及ばなかったフリオーソにとっては、3年連続でこのレース2着と悔しい結果となりました。 また、第8回を迎えた佐々木竹見カップジョッキーズグランプリは、初出場の町田直希騎手が見事総合優勝を果たしました。 今回は、これら注目を集めたレースについて解説をいただきました。(聞き手・構成/斎藤修)

2010年1月27日(水)川崎記念

優勝馬 ヴァーミリアン

斎藤
スタート後、ヴァーミリアンとフリオーソがハナを譲らず競り合いました。
竹見
ヴァーミリアンはフリオーソより内枠でしたから、武豊騎手はハナに行くつもりで3コーナーまで行ったのでしょう。フリオーソにすんなり行かせたら、もしかして勝たれてしまったかもしれません。武騎手がこれほど主張したのは久しぶりに見ました。川崎コースは包まれるとよくないですからね。結局はフリオーソにハナを譲りますが、ここで後続に差をつけたことで2番手に下げても包まれることがなくなりました。そのあと武騎手は、フリオーソには並びかけずに真後ろにつけます。横につけると行きたがってしまいますから、少し砂がかかるような位置で折り合いをつけたのでしょう。
斎藤
最後はヴァーミリアンとフリオーソの叩き合いになりました。
竹見
フリオーソは抑えても最後に切れる馬ではないですから、4コーナー手前から追って行きました。これが最後の粘りにつながったと思います。デムーロ騎手はフリオーソに初めての騎乗でしたが、それでも馬の脚質がわかっているような乗り方ができるのは、さすがに世界のトップジョッキーです。

2010年1月26日(火)佐々木竹見カップ・マイスターチャレンジ

優勝馬 マイネルリンク

斎藤
断然人気が予想された馬は、町田直希騎手が引き当てました。
竹見
町田騎手は、初めての重賞勝ちが東京ダービーだったように、強運を持っていますね。川崎競馬場だけの昨年のリーディングでは、川崎所属騎手では今野騎手、山崎騎手、佐藤騎手に続いて4位でしたが、南関東4場のリーディングになると、川崎所属騎手では今野騎手に次いで2位。それで今回は初出場となりました。
斎藤
町田騎手のマイネルリンクはスタートダッシュが速かったですね。
竹見
一気に内に切れ込んで行きましたが、後ろで繁田騎手のトーホウヘルメスが少し詰まった感じになったので、ちょっと無理にラチ沿いまで行った感じはありました。
斎藤
直線は後続を突き放して楽勝でした。
竹見
それにしてもスピードがあって強い馬ですね。移籍してきて5連勝。まだまだ上に行けそうです。このメンバーでは力が抜けていました。

2010年1月26日(火)佐々木竹見カップ・ヴィクトリーチャレンジ

優勝馬 シツジツゴウケン

斎藤
1周目の直線を向いたところで的場騎手のオレサマががハナに立ちました。
竹見
的場騎手は流れが遅いと見て一気に先頭に立ったのでしょう。馬が行きたがっていたようなので、抑えきれなかったのかもしれません。
斎藤
勝った木村健騎手のシツジツゴウケンは前には行きませんでした。
竹見
1周目のスタンド前では中団あたりを追走していました。的場騎手が行ったことで少し流れが速くなりましたから、このあたりが一番いい位置です。落ち着いてうまく乗っています。
斎藤
勝負どころではいかがでしたか。
竹見
4コーナーから直線を向くところでは、木村騎手はうまく外に出しました。このあたりでは外から抜けてくる勢いだった戸崎騎手に勝たれたかと思いましたが……。
斎藤
最後は、戸崎騎手と木村騎手の叩き合いとなりました。
竹見
木村騎手が最後、クビ差で競り勝ったのは、3~4コーナーあたりでも手ごたえに余裕があったからでしょう。さすがに園田の小回りコースで乗っているだけあって、難しい川崎の4コーナーもうまくこなしました。的場騎手もあのペースで行って、最後はよく3着に粘りました。