コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成21年度第13回開催 エンプレス杯JpnII 他

2月下旬の開催では、牝馬によるJpnIIのエンプレス杯が行われました。勝ったのは、ダートで実績のなかったJRAのブラボーデイジー。直線叩き合いの末、ラヴェリータをクビ差でしりぞけました。クイーン賞JpnIII(船橋)、TCK女王盃JpnIII(大井)を連勝してきたユキチャンに期待がかかりましたが、残念ながら中間の熱発で回避。次は4月14日のマリーンカップJpnIII(船橋)に期待したいところです。 そのほか、エンプレス杯の準メイン、今野忠成騎手のブラッシュボールが勝ったJRA交流のフェブラリースター賞と、翌25日のメイン、藤江渉騎手のヤマイチカチドキが勝ったきさらぎ特別を取り上げます。(聞き手・構成/斎藤修)

2010年2月24日(水)エンプレス杯JpnII

優勝馬 ブラボーデイジー

斎藤
ブラボーデイジーが好スタートでしたが、シスターエレキングがハナに行きました。
竹見
シスターエレキングは大外枠だったので、少し無理やりという感じでハナを奪いに行きました。ブラボーデイジーの武豊騎手も、この馬が行くだろうとわかっていたので譲りましたが、庄司大輔騎手は無理せず2番手でもよかったのではないでしょうか。
斎藤
ラヴェリータも、今回はスタートがよかったですね。
竹見
スタートがよかったからということでもないでしょうが、今回は引っかかっていました。前走、1400メートルの兵庫ゴールドトロフィーは追い通しだったこともあって、ゆったり流れる2100メートルの今回はかなり行きたがっていました。1周目のスタンド前で、ツクシヒメのうしろに入れて砂を被せていけば折り合いがついたかもしれませんが、外に出したので馬が行きたがっていました。
斎藤
向正面に入ったところで、ラヴェリータがブラボーデイジーに並びかけて行きました。
竹見
おそらくラヴェリータの岩田騎手は抑えてもよくないと思って、一気に行ってしまおうと思ったのではないでしょうか。武騎手も、ここで一気に行かれてしまってはと思い、譲りませんでした。
斎藤
それで、向正面から2頭の一騎打ちになりました。
竹見
スタートで仕掛けて行ったわけではないブラボーデイジーは、道中ずっと楽して走っていました。折り合いを欠いていたラヴェリータと、最後のクビ差は、その折り合いの差だったのではないでしょうか。やはり長距離のレースでは、うまく折り合いをつけられるかどうかで勝負が決まります。

2010年2月24日(水)フェブラリースター賞

優勝馬 ブラッシュボール

斎藤
スタート後の直線は、前で5~6頭が横一線の競り合いになりました。勝ったのは今野騎手のブラッシュボールですが、かなり離れたうしろからの追走でした。
竹見
仕掛けて行った馬が多かったですね。中央との交流では、前へ前へという馬が多いですから、どうしても流れは速くなります。今野騎手は、そうした流れを読んでいたのでしょう。
斎藤
向正面ではラチ沿いから徐々に位置どりを上げていきました。
竹見
ずっとラチ沿いをまわって、3~4コーナーではいいところにつけました。おそらく外を回っていたら勝てなかったでしょう。4コーナーから直線を向くところでも、うまく前が開いてくれました。それにしても最後はよく伸びました。2走前にこの馬に乗っていた藤江騎手が『この馬は、追っても追っても伸びないんですよ』と言っていたのですが、今回は今野騎手が落ちついていて、好騎乗でした。

2010年2月25日(木)きさらぎ特別

優勝馬 ヤマイチカチドキ

斎藤
ヤマイチカチドキの藤江騎手は、出ムチを入れて行きました。
竹見
1番枠だから、行くしかないと思って行ったのでしょう。それを見て外の馬は抑えていましたから、ペースはあまり早くならず、落ち着いた流れになりました。
斎藤
向正面では坂井英光騎手のアンペアが競りかけてきました。
竹見
それでもヤマイチカチドキは手ごたえがよかったですから、藤江騎手は落ち着いて乗っていました。
斎藤
直線では今野騎手のブライトフェースが交わすような勢いで追い込んできました。
竹見
最後は交わされるかとも思いましたが、交わされませんでした。外からブライトフェースが来たときに、ヤマイチカチドキの藤江騎手は外へ馬を寄せて、併せに行ったのもよかったですね。この馬はテンに行って最後まで粘ります。