コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成22年度第3回開催 関東オークス 他

6月14~18日の開催では、関東オークスが行われました。勝ったのは、これが初ダートとなるJRAのシンメイフジでしたが、今野忠成騎手が騎乗した大井のハーミア、船橋のギンガセブンも見せ場をつくりました。 そのほか、今野騎手がフレンチマリーで制した17日の条件交流ジューンスター賞、開催最終日に行われたJRA認定新馬戦のうち、酒井忍騎手のヴェガスが圧勝したレースついてお話をうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2010年6月16日(水)関東オークス

優勝馬 シンメイフジ

斎藤
勝ったシンメイフジの内田博幸騎手は3番手あたりを追走して、ゴール前で抜け出しました。
竹見
さすがに内田騎手ですね、絶好の位置を進みました。それをマークするように、今野騎手のハーミア、真島騎手のショウリダバンザイもいい位置取りだったと思います。有力馬はほとんどが好位につけました。シンメイフジは初めてのダートでも、さすがに力が違いました。ハーミアも最後はよく追い込んできたと思います。
斎藤
本橋騎手のギンガセブンは、直線ではシンメイフジに食い下がりました。
竹見
ギンガセブンは2番手を追走して見せ場をつくりました。前のアイシークレットが速かったですから、この馬あたりはいいペースで行けた思います。最後はハーミアに交わされて3着でしたが、それでもよく粘りました。次回、どんなレースをするか楽しみです。
斎藤
ハイペースで逃げたアイシークレットは、直線ではバテてしまいましたが。
竹見
掛かりぎみの逃げでしたね。これまで短いところしか使ってなかったので、抑えがきかなかったのでしょう。ただ、一度こういうレースを経験すれば、次は折り合っていいレースができるかもしれません。

2010年6月17日(木)ジューンスター賞

優勝馬 フレンチマリー

斎藤
フレンチマリーの今野騎手は、スタートでは先頭に立ちましたが、外を見て控えました。
竹見
先頭には行きたくなかったので、他の馬を先に行かせたのでしょう。そのあと4番手まで下げましたが、この位置にいれば直線で内が開きますから、そこを狙っていたのでしょう。
斎藤
あれだけ楽に先頭に立ったら、そのまま逃げたほうがよさそうな気がしますが。
竹見
おそらく前に馬を置いて、うしろに入りたかったのでしょう。4コーナーあたりでは、あとは前が開くのを待つだけでした。それにしても直線ではラチ沿いの狭いところから抜けてきましたね。あの場面で、今野騎手は、前にいたエーシンセーフティの戸崎騎手に声をかけたのではないでしょうか。エーシンセイフティが外に寄って、内田利雄騎手のダンスソーラン、森泰斗騎手のプリンセスビジューが、外から伸びてきた馬との間に挟まれて狭くなりました。上手い騎手ばかりだったのでアクシデントにはなりませんでしたが、少し危ない場面ではありました。

2010年6月18日(金)JRA認定新馬2歳1イ

優勝馬 ヴェガス

斎藤
勝ったのは酒井忍騎手のヴェガスでしたが、スタート後は3番手集団に控えて、直線ではあっという間に突き放しました。強かったですね。
竹見
ただ口向きが悪かったり、直線では内に刺さったりで、まだまだ素直には走っていません。そんな状態でこの勝ち方ができれば、将来が楽しみです。
斎藤
町田騎手のケベックフォートも、勝ち馬と同じ位置を追走して、最後は2着を確保しました。
竹見
この馬は、今回は残念な2着でした。3~4コーナーでは、前で競り合っていた的場文男騎手のタイセイフェアリーがバテて下がってきて、内にも外にも馬がいましたから、行き場がなくなって手綱を引く場面がありました。さらに直線でも内を突こうとして前が開かず、外に切り替えてから立て直すというロスがありました。勝ったヴェガスからは5馬身離されましたが、それでも2着は確保しました。スムーズにレースができれば、この馬も強いと思います。将来的には出世が期待できるのではないでしょうか。