コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和3年度第3回開催 関東オークス 他

 6月14〜18日の開催メインはJpnIIの関東オークス。浦和のケラススヴィアに牝馬三冠の期待がかかりましたが、惜しくも2着。勝ったのはJRAのウェルドーン、鞍上は武豊騎手で、このレース3勝目となりました。  開催初日第10レースの麦日和特別では、単勝1.3倍の断然人気に支持されたエンが勝って6連勝としました。鞍上は町田直希騎手でした。  恒例の2021川崎ジョッキーズカップ第5戦は、今野忠成騎手が逃げ切り勝ち。若手騎手の活躍が目立つこのシリーズですが、今回は2着に町田直希騎手、3着に酒井忍騎手で、ベテラン、中堅が上位を占めました。    今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(インタビュー・構成/斎藤修)

2021年6月16日(水)関東オークス

優勝馬 ウェルドーン

 ケラススヴィアがすんなりハナに立って、ウェルドーンはスタート後には頭を上げて行きたがる素振りを見せました。ウェルドーンは外枠なのはよかった。内枠で包まれて掛かってしまえば消耗するところでした。1周目の4コーナーを回るあたりでもまだ行きたがっていました。  それでもケラススヴィアが緩みのないペースで引っ張りましたから、スタンド前では折り合いもついて、ほかに行きたがるような馬もいませんでした。  ウェルドーンの武豊騎手は、2コーナーを回って向正面に入ったあたりから少しずつ追っていっています。早めに仕掛けたのは、500キロ近い大型馬で、直線で一瞬の脚を使えるタイプではないということもあるし、相手はケラススヴィアと見ていたのでしょう。  2番手につけていたウワサノシブコが後退して、3コーナーからは2頭の勝負になりました。ウェルドーンは3コーナー過ぎから追っていっても、先頭のケラススヴィアをなかなかつかまえることができません。それでもバテることなく、ゴール前でようやく交わして2馬身差をつけました。長く脚を使うスタミナタイプなので、長い距離が向いていると思います。  直線を向いたあたりでは、なかなか差がつまらず、ケラススヴィアが逃げ切ったかにも思えました。ただゴール前では脚が上っていました。森泰斗騎手は、折り合いをつけて、いいペースで逃げていたと思います。三冠は残念でしたが、これで負けたのでは仕方ありません。相手が強かった。  もしこれがマイルあたりの距離だったら、ウェルドーンには忙しい流れになって、結果は違っていたかもしれません。このメンバーでは、2頭の力が抜けていました。

2021年6月14日(月)麦日和特別

優勝馬 エン

 外めの枠から西啓太騎手(ファーストスキップ)がハナを取りに行って、前はやや速い流れになりました。エンはスタートダッシュはそれほど速くありません。それでも無理に位置を取りには行かず、中団よりうしろから。町田騎手は、このメンバーでは自信もあったのでしょう。前が流れたぶん、馬群がバラけたことで、1〜2コーナーでうまく外に持ち出すことができました。  向正面、流れが落ち着いたところで、町田騎手は位置取りを上げていって、3コーナーでは2番手の外。4コーナー手前から追い出して、直線では一気に抜け出しました。エンは、このクラスでは力が違いました。横綱相撲です。ひとつ上のクラスに上ってもまだ勝てそうです。さらにオープンに上ったときにどのくらいやれるかですね。  エンの後ろから伸びてきたフェイバリットが2着。さらに4コーナー最後方だったハイテルカイトが3着ですから、やはり前はペースが速かったようです。

2021年6月16日(水)2021川崎ジョッキーズカップ第5戦

優勝馬 ホイップミルク

 今野騎手のホイップミルクは、最内枠で楽に先頭に立ちました。酒井騎手のエックがすぐ外の2番手、ベニノプリティの町田騎手は7番枠から内に入れて、ラチ沿い3番手の絶好位につけました。  すぐに隊列が決まって、競りかけてくる馬もいませんでしたから、逃げ馬には楽なレースになりました。隊列は縦長になりましたが、ペースは速くありません。直線でもうしろから差を詰めてくる馬はなく、むしろ差がついてバラバラでの入線となりました。2番手と3番手が入れ替わっただけ、4着まで前残りという結果でした。  1番枠からハナをとって、楽なペースに持ち込んだ今野騎手の好騎乗でした。