コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成30年度第7回開催 戸塚記念 他

9月10~14日の開催でメインとして行われたのは、3歳馬による戸塚記念です。勝ったのは船橋のチャイヤプーンで、鞍上は森泰斗騎手でした。チャイヤプーンは、このあとは岩手に戻ってダービーグランプリを目指すことになるようです。 13日に行われた鎌倉記念トライアルの若武者賞を勝ったのは、5番人気のカネトシテッキン。鞍上は増田充宏騎手でした。また同日最終レースに行われた、あつぎハロウィーン2018特別は、ラチ沿いから伸びた今野忠成騎手のゼンノリボーン、外から伸びたフィールザシルバー(濱田達也騎手)の1着同着となりました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2018年9月12日(水)戸塚記念

優勝馬 チャイヤプーン

斎藤
御神本騎手のクレイジーアクセルがマイペースの逃げとなって、勝ったチャイヤプーンは中団の内を追走していました。
竹見
クレイジーアクセルがハナをとって、ペースはすぐに落ち着きました。チャイヤプーンの森騎手は、内々でじっと我慢していました。向正面から少しずつ手を動かしていて、4コーナー手前でうまく外に持ち出しました。それにしても向正面からずっと追ってきて、直線でもよく伸びました。森騎手の好騎乗でした。
斎藤
町田騎手のトキノパイレーツが2着。直線を向いたところでは先頭に立ちかける場面がありました。
竹見
トキノパイレーツは、スタートでタイミングが合わなかったようで、出遅れました。それでも2100メートルですから慌てませんでした。向正面では、勝ったチャイヤプーンより早めに仕掛けていって、4コーナーで先頭のクレイジーアクセルを一気にとらえました。出遅れはありましたが、町田騎手はミスしたようなところもなく、うまく乗っています。今回は、勝った馬が強かった。トキノパイレーツはここを狙って中央から移籍してきたようですが、8月21日に移籍初戦を勝って、そこから中2週。重賞を勝つには、もう少し早めにこちらに馬を持ってきていれば、また結果は違っていたかもしれません。

2018年9月13日(木)若武者賞

優勝馬 カネトシテッキン

斎藤
スマートポラリスと1番人気のトーセンボルガが競り合うように先行して、カネトシテッキンは離れた4番手からでした。
竹見
増田騎手はゲートを出て、気合をつけて行っていますが、押してもフワフワして、ハミがかからないようです。縦長になって、先行勢はペースが速かったと思います。
斎藤
カネトシテッキンは、3、4コーナーで一気に前に迫りました。
竹見
増田騎手は道中ずっとラチ沿いを通って、向正面半から追い通しでした。それでも直線半ばから最後はよく伸びました。カネトシテッキンは、これが5戦目での初勝利です。もっと早く勝てる実力はあったと思いますが、気性的によくないところもあるようです。ただ大事に使っていけば、出世する能力はあると思います。
斎藤
1番人気のトーセンボルガが直線でも単独先頭でしたが、カネトシテッキンはよく差し切りました。
竹見
トーセンボルガはハナに立つのが少し早かったように思います。4コーナーあたりまで我慢させてもよかったと思います。

2018年9月13日(木)あつぎハロウィーン2018特別

優勝馬 ゼンノリボーン/フィールザシルバー

斎藤
フィールザシルバーは外めの3番手、1番枠だった今野騎手のゼンノリボーンは、控えてやや離れた4番手からの追走でした。
竹見
逃げたのは町田騎手のコパノベストで、楽にハナに立ちました。今野騎手はうまく下げて内に入って、余裕をもって乗っていたので、楽勝かと思って見ていたのですが。
斎藤
4コーナーではコパノベストの行き脚が鈍って、直後にいた今野騎手は行くところを探しているようでした。
竹見
外に出すタイミングではなかったですから、直線を向いて今野騎手はおそらく町田に声をかけています。それで町田騎手もうしろを振り返りました。
斎藤
ゴール前は、外のフィールザシルバーが並びかけたところがゴールで、1着同着でした。
竹見
フィールザシルバーは最低人気でしたが、ゴール前、外からよく伸びてきました。内外離れていたのでわかりませんが、もし馬体が合っていれば、今野騎手のゼンノリボーンはもうひと伸びしていたかもしれません。