コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第14回開催 エンプレス杯 他

3月1~5日の開催でメインとして行われたエンプレス杯JpnIIは、1番人気のマルシュロレーヌ(JRA)が、逃げたサルサディオーネをゴール前でとらえ、牝馬のダートグレード競走3勝目としました。鞍上は川田将雅騎手でした。 その日の最終レースに行われた川崎ジョッキーズカップ第2戦は、3コーナーで先頭に立った酒井忍騎手のウインゴライアスが6馬身差の圧勝で1番人気にこたえました。 また5日のメイン啓蟄(けいちつ)特別は、6番人気のシックザールが直線での追い比べから抜け出しました。鞍上は櫻井光輔騎手でした。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2021年3月4日(木)エンプレス杯

優勝馬 マルシュロレーヌ

斎藤
大井のサルサディオーネがすんなりハナをとりました。
竹見
サルサディオーネの思い切った逃げはよかった。この馬が内枠から好スタート切れば、競りかけてくる馬はいません。
斎藤
前半は縦長の展開でした。
竹見
2100mにしては道中のペースがそれほど緩むこともなく、1周目のスタンド前は縦長になりました。勝ったマルシュロレーヌは、スタート後は最後方まで下げましたが、1周目の直線で、馬なりのまま徐々に位置取りを上げていきました。向正面では中団、3コーナーを回って3番手まで来ていました。川田騎手は余裕もあったし、仕掛けのタイミングもよかった。
斎藤
3コーナーあたりでマドラスチェックがサルサディオーネをとらえにかかりました。
竹見
マドラスチェックの森泰斗騎手は、3コーナー手前から動いていって、早めにサルサディオーネに並びかけましたが、もう少し仕掛けを待ってもよかったと思います。着順は3着で変わらなかったと思いますが、そうすればもう少し際どい勝負になったかもしれません。
斎藤
逃げたサルサディオーネは直線でも単独先頭でした。
竹見
最後の直線では、サルサディオーネがマドラスチェックを突き放しましたが、マルシュロレーヌはそれを難なくとらえました。終いの脚が違います。マルシュロレーヌは強かったですが、サルサディオーネもよく2着に粘りました。大井に移籍してからほんとうに強くなりました。

2021年3月4日(木)2021川崎ジョッキーズカップ第2戦

優勝馬 ウインゴライアス

斎藤
勝った酒井忍騎手(ウインゴライアス)は縦長の6番手あたり、外に持ち出しての追走でした。
竹見
前3頭が競り合ってペースが速くなりましたから、酒井騎手はそれを見てすぐに控えました。先行勢はこれだけ速くなると厳しいです。この流れでは、4番手の山崎誠士騎手(ロサデラルス)あたりが絶好位。酒井騎手はそのうしろにつけていました。
斎藤
酒井騎手と、そのうしろから増田充宏騎手が、向正面の中間あたりから徐々に進出しました。
竹見
先行した馬たちは3コーナーあたりで苦しくなって下がってしまい、そのあたりで前が一気に入れ替わりました。酒井騎手は前半控えて、早め早めに行ったのがよかったと思います。好騎乗です。
斎藤
直線では、増田騎手のアスクヴェリウェルを突き放して6馬身差の圧勝でした。
竹見
このクラス(C2)の1500m戦で1分34秒9は、時計的にも速かった。酒井騎手は追い出してからも手綱が緩むことなく、騎乗フォームもきれいです。

2021年3月5日(金)啓蟄特別

優勝馬 シックザール

斎藤
勝ったシックザールの櫻井光輔騎手は控えて4番手。向正面に入ったあたりでは、前3頭から離れた位置を追走していました。
竹見
櫻井騎手はスタートして気合をつけて行きましたが、外から勢いよく来られたので、すぐに控えて内に入れました。それでラチ沿いの一番いい位置をとれました。このレースも前が競り合ってやや厳しいペースになりました。櫻井騎手は無理に前を追いかけることなく、勝負どころの3コーナー手前から徐々に差を詰めていきました。
斎藤
4コーナー手前では、先行3頭が横に並んで前がカベになるような場面がありました。
竹見
外から他の馬が来ていたので外に出すこともできず、そこでじっとしていたのがよかった。直線を向くと、前3頭のうち外2頭の脚色が鈍ったので、前がうまく開いてそこを伸びてきました。先行した中では笹川騎手のリトルパイングッドが最後までよく粘りました(2着)。4コーナーで前が壁になったところで、その3頭の外に出していたら届かなかったかもしれません。人気はあまりなかったですが、櫻井騎手は慌てず、うまく乗りました。