コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成23年度第1回開催 川崎ジョッキーズカップ 他

震災の影響で中断されていた南関東の競馬が4月12日の川崎開催から再開されました。 その初日に行われた川崎ジョッキーズカップ・2011春では、前回(2010秋)に続いてベテラン・金子正彦騎手が勝利。翌13日の第3レースでは、新人の田中涼騎手がデビュー2戦目で見事初勝利を挙げました。 この開催のメインとなる3歳馬のクラウンカップは、13日の予定が15日に延期して行われました。勝ったのはナターレで、これが重賞初制覇。2着には最低人気のヴェガスが入り、川崎所属馬のワンツーとなりました。 今回はこの3レースについてうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2011年4月12日(火)2011春 川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 サイレントカイザー

斎藤
勝った金子正彦騎手のサイレントカイザーは、好スタートでした。
竹見
金子騎手はほとんど何もせずに2番手につけた感じです。内に岩城方元騎手のキョウワプレジャーがいて、楽にその2番手につけました。引っ張りきれないような手応えのまま、3コーナー過ぎでハナに立ちました。
斎藤
最後は突き放して勝ちました。
竹見
サイレントカイザーは、このクラスでは力が違いました。上のクラスに行っても勝負になるでしょう。今回は抽選で金子騎手に当たりましたが、いつもは酒井忍騎手が乗ってる馬で、普段からいい走りをしていました。
斎藤
増田充宏騎手のキザハシが2馬身半差の2着でした。
竹見
増田騎手もうまく乗りました。先行4頭からやや離れた5番手でしたが、1~2コーナーを回るまでじっと我慢していました。いい位置につけて、道中はずっと追い通しでしたが、それでも直線ではよく伸びてきました。

2011年4月13日(水)3歳5ロ

優勝馬 ビービーチェスター

斎藤
田中涼騎手のビービーチェスターは好スタートでした。
竹見
スタートもよかったですが、ひとつ内枠の藤江騎手のサイレントライトも好スタートで、内に切れ込んでいったのに連れてビービーチェスターも一緒に内に入っていきました。そのあとすぐに藤江騎手が控えてくれたので、田中騎手は外枠からのスタートでも他馬のじゃまをすることなくハナを切ることができました。
斎藤
5番人気でしたが、7馬身差の圧勝でした。
竹見
向正面では御神本騎手のザマプロテクターに並びかけられましたが、3~4コーナーあたりから脚色が違っていて、4コーナーからは突き放す一方でした。もともとハナに行けば強い馬だと聞いていましたが、3キロ軽いのはやはり有利ですね。減量騎手の場合、先行できればそのまま最後まで粘ってしまうことはよくあります。
斎藤
田中騎手の騎乗ぶりはいかがでしょう。
竹見
教養センターにいたときはあまり目立ちませんでしたが、競馬場に来てから見違えるほどよくなりました。ただ上半身が上下に揺れるところがあるので、それは直したほうがいいと言っています。それにしても2戦目で初勝利を挙げられたのはよかったですね。

2011年4月15日(金)クラウンカップ

優勝馬 ナターレ

斎藤
勝った的場文男騎手のナターレは競り合っての3番手からでした。
竹見
ナターレは、浦和の桜花賞を使う予定だったようですね。今回、特にペースが速くなったというわけではないと思いますが、競り合ったほかの2頭がバタバタになって、ナターレだけが粘りました。
斎藤
2着に追い込んできた酒井忍騎手のヴェガスは、出ムチを入れていましたが、離れた最後方からでした。
竹見
これほど行き脚のつかない馬はめずらしいですね。この脚質ではよほど前が速くならないと、展開的に厳しいと思いますが、最後はよく追い込んできました。耳を絞っていたので、気性があまりよくないのかもしれません。それにしても最後の伸びには驚きました。
斎藤
竹見
浦和のニューイヤーカップを勝った馬ですね。競り合った前3頭からやや離れて4番手、いちばんいい位置を進んでいました。展開的にはいちばんいいレースをしていますから、これで勝てなかったのは残念でした。
斎藤
1~2コーナーでは後続馬群がごちゃつく場面がありました。
竹見
町田騎手のゴールドスガが、マニエリスムに接触していました。町田騎手はあそこで外で出したかったのかもしれません。ゴールドスガはずっと追い通しで、それでも4着にきましたが、早めに外に出していればもう少しいいところがあったかもしれません。