コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成23年度第7回開催 戸塚記念 他

8月31~9月2日、5・6日の開催のメインは、2日に行われた3歳馬による重賞・戸塚記念でした。東京ダービーでクラーベセクレタに1馬身まで迫ったヴェガスが1番人気に支持されましたが、勝ったのはナターレ。的場文男騎手による逃げ切りで、クラウンカップに続く重賞2勝目となりました。2着にはゴールドスガが入り、川崎所属馬のワンツーという決着でした。 8月31日、2歳馬による若武者賞は、キョウエイロブストとヴァイタルローズによる1着同着。鞍上は、増田充宏騎手、酒井忍騎手で、川崎ジョッキー同士の叩き合いは見ごたえがありました。また、1日に行われたJRAとの条件交流、セプテンバーフラワー賞は、ディーズスイープが逃げ切り楽勝。この鞍上も増田充宏騎手でした。 今回はこの3レースについて佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2011年9月2日戸塚記念

優勝馬 ナターレ

斎藤
楽にハナに立った的場文男騎手のナターレがそのまま逃げ切りました。
竹見
逃げると思われた中野省吾騎手のエースフォンテンが出遅れました。ゲートをちゃんと出れば、この馬がハナに行ったでしょうが、出遅れたにもかかわらず前に行こうとしたので、1周目のスタンド前では馬群に包まれて完全に折り合いを欠いてしまいました。どこかで外に出していれば違っていたかもしれませんが、これではレースになりません。エースフォンテンが出遅れたので、的場騎手のナターレにとっては単独で楽に逃げる展開になりました。楽に先行すれば、この馬は強いレースをします。向正面では馬が耳を立てて、遊びなら楽に走っています。今回は的場騎手がうまく乗りました。
斎藤
2着には今野騎手のゴールドスガが追い込んできました。
竹見
ゴールドスガは、向正面まで最後方の位置取りでした。いくら終いに脚を使える馬でも、あの位置からでは届きません。エースフォンテンがきっちりと逃げてペースが速くなっていれば、結果は違ったかもしれませんが、それにしても、もう少し前につけたほうがいいでしょう。最後は1馬身半まで迫っていますから、2着には来ましたがちょっと残念なレースでした。
斎藤
1番人気、酒井騎手のヴェガスは5着でした。
竹見
スタンド前ではゴールドスガと同じく最後方でしたが、こちらは向正面から早めに仕掛けて3~4コーナーで前にとりつきました。ただ最後に伸びなかったのは、3冠を休みなく使ってきた影響があったと思います。

2011年8月31日(水)若武者賞

優勝馬 キョウエイロブスト/ヴァイタルローズ

斎藤
増田騎手のキョウエイロブストがハナに立って、酒井騎手のヴァイタルローズは3番手からでした。
竹見
キョウエイロブストはダッシュよく飛び出して、増田騎手がうまくこの馬のペースに落としたと思います。2コーナーあたりでは内の手綱を引いていたので、1頭になると遊ぶところがあるのかもしれません。そこに外からケライノが併せてきてくれたので、この馬にとってはそれもよかったと思います。
斎藤
4コーナーではヴァイタルローズが並びかけてきました。
竹見
ヴァイタルローズの酒井騎手は4コーナーまで楽に追走していのに対して、キョウエイロブストの増田騎手はすでに追っていました。それだけに、増田騎手は最後までよくもたせたと思います。
斎藤
直線では1番人気のセンゲンオーラも加わって3頭の叩き合いでしたが3着でした。
竹見
4コーナーあたりではセンゲンオーラの真島騎手の手ごたえもよかったですから、真島騎手は勝ったと思ったのではないでしょうか。今回は、増田騎手がスローに落として逃げたのが勝因でしょう。

2011年9月1日(木)セプテンバーフラワー賞

優勝馬 ディーズスイープ

斎藤
増田騎手のディーズスイープが、内枠から楽にハナに立ちました。
竹見
増田騎手の手ごたえはずっと楽なままでした。勝負どころの3コーナーあたりで後続は仕掛けていますが、ついてこられる馬はいませんでした。直線で差を広げて4馬身差。中央の馬が人気になっていて、この馬は4番人気でしたが、ほんとうに強いレースをしました。
斎藤
2着に追い込んできた中央のオーミチャンドラには、山崎誠士騎手の手綱でした。
竹見
向正面では最後方でしたが、直線でよく伸びてきたと思います。中央の有力馬が勝ち馬について行けませんでしたから、そのぶん、うしろにいたこの馬にはよかったのかもしれません。