コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成23年度第8回開催 鎌倉記念 他

10月3~7日の開催のメインは、5日に行われた2歳馬による全国交流の重賞・鎌倉記念でした。北海道から遠征の実績馬2頭が人気を集めましたが、勝ったのは、同じ北海道でもあまり注目されていなかった9番人気のニシノファイターでした。 また7日には、スーパージョッキーズトライアルの第1・2戦が行われました。地方競馬を代表するトップジョッキーによる争いで、第1戦を制したのは岩手の村上忍騎手、第2戦を制したのは大井の戸崎圭太騎手でした。 今回はこの3レースについて佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2011年10月5日(水)鎌倉記念

優勝馬 ニシノファイター

斎藤
ゲートを突進した馬がいて、ゲート内でかなり待たされたこともあって、1番人気のウィードパワーは出遅れてしまいました。
竹見
出遅れて離れた最後方からとなりましたから、さすがにこれでは勝負になりません。
斎藤
北海道の人気のもう1頭、御神本騎手のヘヴンズパワーが外に膨れるアクシデントもありました。
竹見
御神本騎手は、ダッシュよく先行しましたが、1コーナーで外に逸走して、先行争いで外にいた3頭も一緒に外に振られてしまいました。この4頭は相当にロスがありましたから、レースにならなかったのは残念でした。結果的に、スタート後に中団からうしろにいた馬が先行集団を形成することになり、この馬たちの勝負になりました。
斎藤
最後の直線では4頭の競り合いから、北海道の小国騎手のニシノファイターがゴール前で抜け出しました。
竹見
4コーナーでは繁田騎手のクリヤマキアートがやや外に膨らんで、これで外に振られたのが、小国騎手のニシノファイターでした。その外にも馬がいて、小国騎手は両方から挟まれる格好になりましたが、最後はよく伸びました。このあたりはレースを数多く経験していることもあるでしょう。クリヤマキアートは3着でしたが、これが3戦目。これからが期待できそうな馬です。ただアクシデントがありましたから、必ずしも実力どおりの結果にはならなかったのが残念でした。

2011年10月7日(金)シルバーサドル賞

優勝馬 プリティーパイン

斎藤
勝ったプリティーパインは、スタートはあまりよくなく、6番手あたりからになりました。
竹見
プリティーパインの村上忍騎手は、それでも先行集団を前に見て5~6番手のいい位置につけました。このあたりが位置取り的にはいちばんよかったかもしれません。
斎藤
村上騎手は、3~4コーナーで外から一気にまくっていきました。
竹見
ペースはそれほど速くはなく、逃げていたキタサンメールの御神本騎手が4コーナーまで楽な手ごたえだったので、このまま勝つかという勢いでした。ただ、決め手ではプリティーパインのほうが上でした。一気に来られて、こういう展開になると、追ってから末脚を発揮する馬にはかないません。村上騎手はそうした馬の能力をよく引き出したと思います。

2011年10月7日(金)シルバーブライドル賞

優勝馬 ラヴァリーズーム

斎藤
戸崎騎手のラヴァリーズームが逃げる展開でした。
竹見
戸崎騎手はダッシュよく飛び出して、ほかに競りかけてくる馬もいなかったので、すぐに単独で先頭になりました。テンから終始楽な手ごたえでレースを進めることができて、そのまま逃げ切りました。
斎藤
最後は2着争いが激しくなりました。
竹見
今野騎手のエスケイドリームが2着でしたが、惜しかったのは吉原騎手ですね。吉原騎手のエンジンソウルは、道中ずっと内でがまんして、うまく乗っています。4コーナーでは前3頭が壁になりましたが、少し早いタイミングで外に出していれば2着はあったかもしれません。内を突いて、直線ではちょっと狭くなるところがあったのが残念でした。ただやはりずっと内を回って来ましたから、急に外に出すのは難しかったのでしょう。そのあたりの判断が、川崎コースでは難しいところです。