コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第11回開催 全日本2歳優駿 他

12月14〜18日の開催でメインとして行われた全日本2歳優駿は、船橋のアランバローズが逃げ切り、昨年のヴァケーションに続いて南関東勢の勝利となりました。鞍上は船橋の左海誠二騎手でした。 15日に行われたB3クラスによる大磯港にぎわい交流施設完成記念は、藤江渉騎手のフリーホースカップがゴール前で抜け出し、門別からの連勝を4に伸ばしました。 そして開催最終日に行われた2020川崎ジョッキーズカップ・ファイナルを制したのは、今年デビューした新人の古岡勇樹騎手。最終戦を前にすでにトップに立っていた古岡騎手は、全8戦のシリーズで3勝を挙げる活躍を見せての優勝となりました。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年12月16日(水)全日本2歳優駿

優勝馬 アランバローズ

斎藤
アランバローズの左海誠二騎手は思い切ってハナに行きました。
竹見
好スタートだったとはいえ、外目の枠からちょっと強引だったような感じはしました。人気のデュアリストが一瞬、手綱を引くような場面がありました。内から行く馬がいれば左海騎手はおそらく控えたでしょうが、それほど仕掛けなくてもハナに立てるスピードがあります。勢いがついていたので1コーナーまでにハナを取りきろうという判断だったのでしょう。
斎藤
アランバローズは向正面から2番手以下を離しました。
竹見
2コーナーを回って向正面に入っても行きたがっているのを、左海騎手はなんとかなだめていました。無理に抑えるよりは、行かせてしまったほうがという判断でしょう。対して2番手につけたランリョウオーはよく折り合っていました。
斎藤
直線では後続を寄せ付けないまま独走になりました。
竹見
それにしても強い。直線でもほとんど追っていません。時計も良馬場で1分40秒台(1分40秒7)は速い。2着に5馬身差、3着以下の中央馬にもさらに差をつけて、これほど大きな差をつけて地方馬が勝つのはめずらしいのではないでしょうか。あとは折り合いがつくようになれば、来年のクラシック戦線での活躍が楽しみになります。逃げ馬でも、溜め逃げができる馬なら乗りやすいですが、アランバローズのように馬がみずから行きたがるような馬は、折り合いをいかにつけるかだと思います。2着のランリョウオーは終いに脚を使うタイプなので、距離が延びてさらにいい競馬をすると思います。

2020年12月15日(火)大磯港にぎわい交流施設完成記念

優勝馬 フリーホースカップ

斎藤
勝ったフリーホースカップの藤江騎手は、スタートして積極的に好位を取りにいきました。
竹見
真ん中の7番枠で、内枠の行く馬を行かせて、それを見ながら1コーナーあたりで内に入れました。行く馬はわかっていたでしょうから、その位置取りは最初から狙っていたのでしょう。落ち着いて3番手のいい位置を取りました。
斎藤
藤江騎手は3コーナーあたりから追い通しでした。
竹見
逃げていた左海騎手(タマモカプチーノ)が3コーナー過ぎでもまだ楽な手応えでしたから、早めにつかまえに行ったのでしょう。それにしても直線でもよく伸びました。藤江騎手はスタートして内に入れていくコースのとり方がよかった。これで門別から4連勝。まだ3歳ですし、勝ち方に余裕がありましたから、上のクラスにいっても勝てるでしょう。牝馬重賞に出てくるようになるかもしれません。この馬は1番人気でしたが、藤江騎手は人気がない馬でも思い切ったレースをするのがいいところです。最近では川崎以外でも多く騎乗するようになって、それが結果にも表れています。

2020年12月18日(金)川崎ジョッキーズカップ・ファイナル

優勝馬 サンベリーニ

斎藤
勝った古岡騎手(サンベリーニ)は、後方3番手からの追走でした。
竹見
増田騎手が逃げて、ゆったりしたペースでも縦長の展開になりました。サンベリーニはこれまでもうしろから行くことが多かったので、そういう脚質なのでしょう。
斎藤
古岡騎手は向正面の中間より手前から一気に進出しました。
竹見
調教師からの指示もあったかもしれませんが、3キロ減の51キロだからということで思い切って行けたと思います。前がペースアップする前に、早めに仕掛けていったのがよかった。
斎藤
結局、逃げた増田騎手、2番手の町田騎手が2着、3着に残って、それを差し切ったのが古岡騎手でした。
竹見
スローで逃げた増田騎手も直線でバテたわけではなく、そのまま粘るかと思いましたが、古岡騎手は並ぶ間もなく交わしました。向正面の残り半マイルより手前から一気に行って、直線でもよく伸びたのは、減量があってこそでしょう。それにしてもうまく乗りました。
斎藤
古岡騎手はジョッキーズカップ全8戦で3勝を挙げての優勝でした。
竹見
こういうふうに減量を活かして思い切った騎乗で勝てば、また騎乗依頼が増えてきます。つい先日、(古岡騎手が所属する)岩本洋調教師と、乗り方がよくなったと話したばかりです。追うときにも手綱が緩まなくなったし、コースのとり方もよくなりました。