コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成24年度第10回開催 全日本2歳優駿 他

12月開催のメインは、ダート2歳チャンピオン決定戦、全日本2歳優駿JpnI。空馬の影響はあったものの、JRAのサマリーズが後続を突き放して強い勝ち方を見せました。残念ながら川崎所属馬の出走はありませんでしたが、道営から船橋に移籍してきたジェネラルグラントが接戦の2着争いから抜け出しました。 そのほか、今野忠成騎手の手綱で南関東転入後3連勝となったカネトシテンアップのシンフォニー特別、そして恒例の川崎ジョッキーズカップは、11番人気の本田紀忠騎手が勝ち、2着には14番人気の拜原靖之騎手が入って大波乱となりました。今回は、この3レースについてうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2012年12月19日(水)全日本2歳優駿

優勝馬 サマリーズ

斎藤
スタートで今野騎手のアメイジアが落馬しました。
竹見
危なかったですね。勝ったサマリーズは、スタート後もほとんど仕掛けずに先頭に立ちましたから、ダッシュ力はかなりのものがあります。スピードもあります。
斎藤
直線を向くあたりでは、すでに後続と差がありました。
竹見
空馬がうしろからぐんぐん伸びてきました。ゴール前は空馬が内にささってきて、サマリーズは少し危ない場面もありましたが、何もなくてよかったですね。空馬がいなければ、もっと楽に勝てたかもしれません。それほどペースが速いようには見えませんでしたが、勝ちタイムの1分41秒台は速いです。
斎藤
サマリーズは芝の桜花賞を目指すようです。
竹見
芝でもスピードを生かせるのではないでしょうか。もし芝でダメでも、またダートに戻ってくれば強いレースをすると思います。
斎藤
1番人気のアップトゥデイトは3着でした。
竹見
3コーナーの勝負どころで、空馬に外からかぶされましたから、その影響もあったかもしれません。地方の馬では、石崎駿騎手のジェネラルグラント、戸崎騎手のアウトジェネラルが終いに伸びて2着と4着。この2頭は、3歳になってさらに力をつけてくれば楽しみです。

2012年12月18日(火)シンフォニー特別

優勝馬 カネトシテンアップ

斎藤
勝った今野騎手のカネトシテンアップは、中団よりうしろからでした。
竹見
もともとうしろから行く馬ですが、前のペースも速かったかもしれません。今野騎手は3コーナーから仕掛けて行きました。馬に力がなければあそこからは行けません。
斎藤
2着に入る酒井騎手のジョウテンデジタルは最後方からでした。
竹見
カネトシテンアップは直線だけでよく伸びて差し切りましたが、ジョウテンデジタルは、さらにそのうしろからですからね。後方から来る馬同士での決着になりました。すごくいいレースでした。
斎藤
今野騎手あたりの位置取りでも、道中は勝てるような手ごたえはあるのでしょうか。
竹見
多頭数だったこともあって、ペースが速くなりましたから、自信をもって乗っていたと思います。

2012年12月21日(金)川崎ジョッキーズカップ2012冬

優勝馬 パラダイスポイント

斎藤
先行争いが激しくなりました。
竹見
郷間騎手のトーセンクリオネはもともと前に行く馬なのですが、今回はムチを入れてハナを叩きました。向正面で一旦ペースが落ち着きましたが、ほとんどの人気馬が早め早めに仕掛けていっています。
斎藤
勝った本田騎手のパラダイスポイントは、ぴたりと2番手についていって粘りました。
竹見
おそらく調教師から前に行くように言われていたのではないでしょうか。それにしても最後までよく粘りました。
斎藤
最低人気だった拜原騎手のコスモロングロードが2着に入りました。
竹見
直線では差し切るような勢いで伸びてきました。いちばん強いレースをしたのはこのコスモロングロードかもしれません。前で2頭が競り合ったわりには、逃げた郷間騎手のトーセンクリオネもよく3着に残りました。郷間騎手は最近特に乗れるようになってきたと思います。人気馬が案外伸びず、1番人気だった今野騎手のカンクロは、どうしたんでしょう、向正面で一杯になってしまいました。