コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成25年度第9回開催 ローレル賞 他

11月11日~15日の開催では重賞が2レース行われました。2歳牝馬による全国交流のローレル賞は、ホッカイドウ競馬のクライリングが1番人気にこたえて強い勝ち方を見せました。鞍上は御神本訓史騎手。なお同馬はこのあと山崎尋美厩舎に転厩しています。3歳牝馬によるロジータ記念は、船橋のカイカヨソウが勝利。鞍上は今野忠成騎手でした。そのほか、最終日のC1特別(かめ太郎特別)を制したのがトラストシンシ。こちらも今野忠成騎手で、昨年の川崎転入後2勝目としました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2013年11月12日(火)ローレル賞

優勝馬 クライリング

斎藤
クライリングは中団からの追走でした。
竹見
逃げるのは山崎誠士騎手のヴァカンスとわかっていました。クライリングの御神本騎手は好スタートでしたが、外から何頭かに来られたこともあり、内の6番手あたりまで下げました。ほとんど仕掛けて行っていませんから、末脚がいいことはわかっていたか、聞いていたかしたのでしょう。返し馬でもある程度それがわかったのかもしれません。
斎藤
向正面では縦長の展開で、クライリングはラチ沿いから前にとりつきました。
竹見
御神本騎手は自信を持って乗っています。直線で前をとらえると楽に突き放しました。やはり追ってから伸びがいい馬ですね。道営からの遠征ですから、初めて左回りが心配されましたが、まったく問題なかったです。次走予定の東京2歳優駿牝馬は門別と同じ右回りになりますから、さらにいいレースを見せてくれるかもしれません。

2013年11月13日(水)ロジータ記念

優勝馬 カイカヨソウ

斎藤
オキナワレッドが逃げて、カイカヨソウは5番手あたりからでした。
竹見
オキナワレッドは、見澤騎手が思い切って飛ばして行きました。もう少し抑えてもよかったと思います。ただ、オキナワレッドが単騎で逃げたのは、カイカヨソウにとってはよかったかもしれません。今野騎手は、馬の力はわかっていますから、無理には追いかけずマイペースでした。
斎藤
今野騎手は、勝負どころでは自ら逃げ馬をつかまえに行くことになりました。
竹見
3~4コーナーあたりでは、カイカヨソウはまだオキナワレッドと差があって、届くのかどうかと思いましたが、終いのいい馬なので、今野騎手はそれを生かす競馬に徹していました。そもそもこのメンバーでは力が違います。道中はかなり余裕がありました。この馬は距離が長いほうがいいと思います。
斎藤
直線伸びた森騎手のケンブリッジナイスが2着に入り、オキナワレッドもよく3着に粘りました。
竹見
オキナワレッドは、単独で逃げられたぶん、3着に粘ったと思います。イチリュウが案外でした。3~4コーナーあたりではカイカヨソウを追ってきましたが、直線では離されて5着。イチリュウにとっては距離が少し長かったかもしれません。

2013年11月15日(金)かめ太郎特別

優勝馬 トラストシンシ

斎藤
逃げたのは増田充宏騎手のカネトシエフォートで、的場騎手で1番人気のビーユアエンジェルがピタリと2番手、今野騎手のトラストシンシはそのうしろにつけました。
竹見
今野騎手はラチ沿いの4番手。絶好位からの追走でした。
斎藤
ずっと内を回ってきて、4コーナーでもよく内を突いたと思います。
竹見
なかなかあそこで内には行きにくいですが、直線では、逃げていたカネトシエフォートがバテて下がってきたところ、よく1頭分しか空いていない内から抜けてきたと思います。
斎藤
トラストシンシは、ゴール前のもうひと伸びして差し切りました。
竹見
普通なら1番人気のビーユアエンジェルに勝たれていた展開です。的場騎手は、おそらく外から伸びてきた町田騎手のスペシャルゴールドに併せに行ったのではないでしょうか。それでトラストシンシは、ぽっかり空いた内から伸びてきました。的場騎手も最初は気づいていなかったようで、ゴール前では内に寄せてきました。それにしてもトラストシンシはゴール寸前でよく差し切ったものと思います。逆に的場騎手は、内から差されたわけですから、悔しかったと思います。