コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成26年度第10回開催 全日本2歳優駿 他

12月15~19日、今年最後の川崎開催のメインは全日本2歳優駿でした。中央勢が上位4着までを独占する結果となり、勝ったのはディアドムス。GI/JpnI初制覇となった三浦皇成騎手はガッツポーズで喜びを表していました。 同日第8レースに行われた3歳馬によるシクラメン特別は、増田充宏騎手のダテオトコが直線抜け出しての快勝。そして最終日恒例の川崎ジョッキーズカップは、南関東で現役最年長の森下博騎手が渾身の手綱さばきで、逃げ込みを図る山林堂信彦騎手をハナ差とらえてのゴールでした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2014年12月17日(水)全日本2歳優駿

優勝馬 ディアドムス

斎藤
スタート後の直線では前で4頭が競り合いました。
竹見
中央3頭と浦和のラッキープリンスが互いに譲らずという感じで、最初のゴール板のあたりでペースが速くなりました。1~2コーナーを回るところでハナに立ったワンダフルラスターは、わりと楽にレースを進めていたので勝ち負けかと思いましたが、案外でした。対して勝ったディアドムスの三浦騎手は、競り合った4頭を前に見ながら絶好位での追走となりました。
斎藤
ラッキープリンスが3コーナー手前で後退すると、替わってディアドムスが3コーナー過ぎで一気に仕掛けて行きました。
竹見
すでに目標にする馬が前にしかいませんから、三浦騎手は思い切って行ったのでしょう。早めに先頭に並びかけて、直線では先行した中から粘っていた人気のタップザットとの競り合いで、いい勝負になりました。最後は半馬身差でした。前半速い流れを控えて進み、3コーナー過ぎで前をとらえに行った三浦騎手の好騎乗だったと思います。福永騎手のタップザットも2着に負けはしましたが、これがまだ3戦目ですから、使われながらまだまだ強くなるでしょう。勝ったディアドムスは前走(北海道2歳優駿)で交流重賞を勝っていることもあり、1、2着はキャリアの差だったかもしれません。

2014年12月17日(水)シクラメン特別

優勝馬 ダテオトコ

斎藤
勝ったのは北海道からの転入3戦目、増田充宏騎手のダテオトコでした。
竹見
行く馬を行かせて、増田騎手は3番手の内を追走していきました。
斎藤
3コーナーあたりからは前5頭が固まって、増田騎手はラチ沿いで囲まれるような形になりました。
竹見
あれで先頭の馬が早めにバテたら行き場がなくなるところでしたが、逃げていた山崎騎手のシゲルウゴが直線までもってくれたのでよかったです。2番手ですぐ外を追走していたタマノエタニティが4コーナーで一杯になって下がったので、ダテオトコは直線を向いて前に進路が開けました。
斎藤
1番人気のキャプテンヒーローが直線で追ってきましたが、ダテオトコは1馬身半差をつけての快勝でした。
竹見
キャプテンヒーローが直線ではぐんぐん追ってきましたが、ダテオトコが強い勝ち方を見せました。キャプテンヒーローは4コーナーで外を回ったので、直線を向いたところで勝ち馬とは3馬身ほども差ができていました。最後に詰めきれなかったのはそのぶんでしょう。増田騎手は内でじっと我慢して、うまく乗ったと思います。

2014年12月19日(金)2014冬・川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 テッペントッタル

斎藤
ハナをとったのは山林堂騎手のヒカルスプレンダーでした。
竹見
競りかけてくる馬もいなかったので、山林堂騎手はすんなりと先頭で、森下騎手は中団よりうしろからでした。普段のレースと違って、抽選で騎乗馬を決める騎手の対抗戦はペースが速くなりがちです。このレースも縦長になりました。
斎藤
森下騎手は向正面で動いて行きました。
竹見
我慢せずに早めに行ったのがよかったと思います。自分から動いていって、3コーナー過ぎでは息を入れています。それが最後のひと伸びにつながったと思います。直線半ばあたりでは山林堂騎手が逃げ切ったかと思いましたが、惜しかったですね。
斎藤
ゴール前、森下騎手は年齢を感じさせない追いっぷりでした。
竹見
追って追って、並んだと思ったら、ゴール前でグンとひと伸びしました。最後は強かったですね。このあたりはさすがに森下騎手です。59歳で、ここまで現役を続けているのはたいしたものです。