コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第10回開催 ローレル賞・ロジータ記念 他

11月9〜13日の開催では牝馬による重賞が2レース行われました。 グランダム・ジャパン2歳シーズンのローレル賞は、直線での追い比べから浦和のケラススヴィアが抜け出しました。鞍上は森泰斗騎手でした。 3歳牝馬による全国交流のロジータ記念は、川崎のルイドフィーネが二冠牝馬アクアリーブルを1馬身半差でしりぞけ、一矢報いる勝利が重賞初制覇となりました。こちらも鞍上は森泰斗騎手でした。 森下博記念と冠された川崎ジョッキーズカップ第7戦はゴール前大混戦。これを制したのは、12番人気のモリトカチグリに騎乗したルーキー・古岡勇樹騎手でした。古岡騎手はこのシリーズ2勝目となり、ポイントでトップに立ちました。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年11月10日(火)ローレル賞

優勝馬 ケラススヴィア

斎藤
逃げたのは北海道のセカイノホシで、人気のナジャが競りかけていきました。
竹見
前の2頭は向正面から競り合って、勝ったケラススヴィアはその2頭を前に見る位置で、ラチ沿いの絶好位を進みました。前は競り合っていましたが、ペースはそれほど速くありませんでした。
斎藤
4コーナーではケラススヴィアが外に持ち出して、直線では3頭の追い比べになりました。
竹見
セカイノホシは、ナジャにずっと厳しくマークされながら、最後までよく粘りました。勝ったケラススヴィアは最後までしっかり脚を使って伸びました。控えて目標と定めた馬をきっちり差し切る、3戦目でこういうレースができるのは、将来的に期待できると思います。3着のナジャも含めて、このメンバーでは3頭の力が抜けていました。

2020年11月11日(水)ロジータ記念

優勝馬 ルイドフィーネ

斎藤
好スタートのルイドフィーネは控えて4番手。人気のアクアリーブルが、逃げたノラを追いかける形になりました。
竹見
隊列がすぐに決まったのでペースは落ち着きました。ルイドフィーネの森騎手は内枠ということもあって、ローレル賞のケラススヴィアもそうでしたが、ライバルを前に見る位置で、ラチ沿いの絶好位につけました。スローペースでも最初のスタンド前で動いてくる馬がいなかったのは、人気2頭が好位につけていたからかもしれません。人気2頭は折り合いもついて楽にレースを進めることができました。
斎藤
向正面では前の馬群が固まりましたが、直線では結局人気2頭の一騎打ちになりました。
竹見
3、4コーナー中間でルイドフィーネが外に持ち出して、アクアリーブルを早めにとらえにいきました。森騎手は道中でも余裕があったし、追い出しのタイミングも絶妙でした。前半脚を溜めて、4コーナーで一気に仕掛けたのが勝因でしょう。アクアリーブルも力を発揮しましたが、今回はルイドフィーネのほうがそれを上回っていました。勝ち負けはつきましたが、森騎手も、アクアリーブルの矢野騎手も、最高のレースをしたと思います。

2020年11月13日(金)川崎ジョッキーズカップ第7戦 森下博記念

優勝馬 モリトカチグリ

斎藤
勝ったのは新人の古岡勇樹騎手で12番人気。1番枠でも中団よりうしろに控えての追走でした。
竹見
古岡騎手のモリトカチグリは、スタートでムチを入れられてもあまり進んで行きませんでした。それであの位置取りになったのかもしれません。逃げたのは増田騎手で、町田騎手が好位の2番手。後方からの追走だった今野騎手は、前半掛かっていたこともあって、向正面で一気に動いていきました。それでも古岡騎手はうしろでじっとしたままでした。
斎藤
4コーナーでは3番人気の町田騎手が先頭に立ちました。
竹見
ただそのあたりでもまだどの馬が勝つのかわかりませんでした。古岡騎手は、ようやく先団のうしろです。直線ではコース取りが難しかったと思いますが、前にいる馬たちをさばいてよく抜けてきました。これには驚きました。新人とは思えません。3キロの減量があったとはいえ、これはうまく乗りました。向正面で今野騎手が動いて一気にペースが上がったのもこの馬には向いたのかもしれません。そのペースアップにつられて行かなかったことで、モリトカチグリは最後まで脚が残っていたのでしょう。