コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第9回開催 鎌倉記念 他

10月11日〜16日の開催でメインとして行われた鎌倉記念は、北海道から遠征のリーチが直線外から豪快に差し切りました。鞍上は船橋の本田正重騎手でした。 6頭立ての少頭数で争われた13日のメイン、多摩オープンは、今野忠成騎手のアドマイヤゴッドが2番手から直線抜け出す快勝でした。 開催最終日の最終レースに行われた、恒例の川崎ジョッキーズカップ第6戦は、増田充宏騎手が9番人気のオビワンズドーンを見事勝利に導きました。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年10月14日(水)鎌倉記念

優勝馬 リーチ

斎藤
1コーナーまでの先行争いが激しくなりました。
竹見
外枠から一気に行ったジョーロノ(森泰斗騎手)は、調教師からの指示もあったのでしょう。内枠の何頭かも引かなかったので、ごちゃついて危ないところがありました。特に1番人気のナジャは挟まれるような格好で位置取りを悪くしてしまい残念でした。
斎藤
向正面でもペースは緩みませんでした。
竹見
期待された1頭、今回は笹川騎手に乗替ったヴァヴィロフが、まだペースが落ち着かない向正面から仕掛けて行きました。前回は砂をかぶったりして早めに差を広げられてしまったこともあったでしょうが、今回は動くのが早かった。勝ったリーチ、2着だった今野騎手のセイカメテオポリスは、向正面でも中団うしろでまだじっとしていました。
斎藤
リーチの本田正重騎手は、3コーナー過ぎから追ってきて、直線大外からまとめて差し切りました。
竹見
勝った馬は強かったですが、2着の今野騎手もうまく乗りました。勝ち馬より少し遅れて追い出したのは3、4コーナー中間あたりから。直線を向いたところで一旦は外に行こうとしましたが、内が開いているのを見て進路を内に切り替え、ラチ沿いから抜けてきました。先頭のジョーロノをとらえたあたりでは勝ったと思ったのではないでしょうか。今野騎手は好騎乗でしたが、これで負けたのでは仕方ありません。勝ったリーチは、ゴール前の脚色が違っていました。ステッキをほとんど使わないで、この勝ち方ですから、着差以上に強かった。先々が楽しみです。

2020年10月13日(火)多摩オープン

優勝馬 アドマイヤゴッド

斎藤
1番人気サンロアノーク(矢野貴之騎手)が逃げて、今野騎手のアドマイヤゴッドは2番手、トキノパイレーツ(加藤和博騎手)は3番手で内に入れました。
竹見
今野騎手はスタートで好ダッシュでしたが、1番枠のサンロアノークが行く気を見せたので控えて2番手でした。トキノパイレーツの加藤騎手は内に入れて前に馬を置いてレースを進めたのはよかったと思います。
斎藤
直線までほとんど隊列は変わりませんでした。
竹見
少頭数では、勝とうと思えばある程度前に行っていないと、ということはあったと思います。それにしても今野騎手は3コーナー過ぎから手を動かしていましたが、直線よく伸びました。人気のサンロアノークも楽な手応えのまま直線を向きましたが、今回はアドマイヤゴッドが強かった。
斎藤
直線ではトキノパイレーツの進路が狭くなって危ない場面がありました。
竹見
直線で内にこだわって、ほんの一瞬の判断ですが、あの狭いところに行くべきではなかった。事故にならなくてよかったです。4番手にいたマイネルバサラがゴール前でよく伸びて3着。トキノパイレーツは直線で行き場がなくなって残念でしたが、上位馬はそれぞれ能力を出し切ったと思います。

2020年10月16日(金)2020川崎ジョッキーズカップ第6戦

優勝馬 オビワンズドーン

斎藤
外から増田騎手のオビワンズドーン(9番人気)が一気に逃げました。
竹見
スタート後のダッシュは、1頭だけスピードが違いました。そのあと手綱をふわっと緩めて、増田騎手はうまく乗っていました。逃げてという指示だったのかもしれません。人気薄だったので、うしろの馬たちも追いかけてきませんでした。
斎藤
ただ3コーナーでは一気に差が詰まって、何頭かに交わされてしまいました。
竹見
この馬は気性が悪いとは聞いていましたが、完全にレースをやめていました。ただ4コーナー手前で前に3頭を見る形になったら、また馬が行く気を見せて、直線外に出して追ったらまた伸びました。普通、逃げ馬がこれだけ下がってしまったら盛り返すのは難しいですが、直線で差し切ってしまいました。こういうパターンはめずらしいです。馬の能力もありますが、増田騎手もうまく乗りこなしました。
斎藤
2着の酒井忍騎手(サンベリーニ)も11番人気でした。
竹見
後方からの追走で、3コーナー手前からまくっていって4コーナーで先頭。酒井騎手は直線で勝ったと思ったのではないでしょうか。3着の田中涼騎手(タカラチーター)も向正面から早めに位置取りを上げていって、3コーナー過ぎではサンベリーニよりも先に先頭。これも田中騎手がうまく乗りました。