コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成27年度第9回開催 ローレル賞 他

11月16日~20日の開催では、牝馬重賞が2レース行われました。 2歳馬によるローレル賞は、北海道のモダンウーマンが船橋のスアデラとの一騎討ちを制し、3着馬には9馬身差をつけるという、2頭の強さが目立ったレースでした。なおモダンウーマンはレース後、川崎・佐々木仁厩舎に移籍しています。 3歳馬によるロジータ記念は、大井のララベルが圧勝。鞍上は大井の真島大輔騎手でした。 また、ロジータ記念当日の第6レースに行われた2歳馬による紅葉特別では、エメンタールベルンが好位から抜け出し、デビュー2戦目での初勝利。鞍上は町田直希騎手でした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2015年11月17日(火)ローレル賞

優勝馬 モダンウーマン

斎藤
外枠からモダンウーマン(阿部龍騎手)が逃げて、スアデラ(本田正重騎手)が2番手。結果的に、その2頭の一騎打ちになりました。
竹見
モダンウーマンはスタートダッシュがいいですね。内のほうに前に行く馬がいなかったので、モダンウーマンはすんなりハナをとれました。
斎藤
3~4コーナーでスアデラがモダンウーマンに並びかけた時は、スアデラの本田騎手がうしろを振り返っていました。
竹見
そのあたりではスアデラの手ごたえがまだ楽だったので、勝つかと思って見ていたのですが、直線ではモダンウーマンがもう一度伸びました。スアデラのほうは、まだあまり強い相手と対戦していませんでしたから、その差はあったかもしれません。
斎藤
3着馬には9馬身差がつきました。
竹見
ここでは2頭の力が抜けていました。モダンウーマンは距離が延びてもバテない強さがありそうです。スアデラは今まで本気で追われたことがなかったですから、今回のレースを使ったことで、まだまだ成長すると思います。

2015年11月18日(水)ロジータ記念

優勝馬 ララベル

斎藤
逃げたのは兵庫のトーコーヴィーナス(大山真吾騎手)で、真島騎手のララベルは4番手の外を追走しました。
竹見
大山騎手は1周目のスタンド前でもそれほどペースを落とすことなく、平均ペースで逃げていました。掛かる馬もなく、どの馬も実力を発揮できる流れだったと思います。ララベルは楽に好位につけて、真島騎手は自信があったのでしょう。前を見ながら、あとはうしろからミスアバンセがいつ来るか、という競馬でした。
斎藤
ララベルは、向正面で動いて2番手、4コーナー手前でトーコーヴィーナスをとらえにかかりました。
竹見
直線では楽に突き放して、横綱相撲でした。トーコーヴィーナスは、うしろの馬に交わされるかと思いましたが、よく粘りました。とにかくララベルは強いです。南関東の3歳牝馬では力が抜けています。あとは大事に使っていけば、将来は相当期待できる馬になるでしょう。戸塚記念で牡馬を負かしたミスアバンセは案外でした(6着)。連勝してきての反動があったのかもしれません。

2015年11月18日(水)紅葉特別

優勝馬 エメンタールベルン

斎藤
増田騎手のキョウエイビーナスが逃げて、町田騎手のエメンタールベルンは控えて3番手の内を追走しました。
竹見
町田騎手は、スタートから自信を持って乗っていました。互角のスタートでしたが、他に行く馬がいたので控えました。ハナをとったキョウエイビーナスの増田騎手も、道中でうまくペースを落としました。町田騎手にとっては、マークした逃げ馬さえ交わせばという競馬で、直線では意外に食い下がられましたが、それでも最後は3馬身差をつけました。さらに3着馬には9馬身差がつきましたから、この2頭は強い競馬をしました。
斎藤
エメンタールベルンは、デビュー戦は逃げて2着、今回は控えて差し切りました。
竹見
今回は馬を前に置いてという、指示があったのかもしれません。控えて直線抜け出す、こういうレースができる馬は将来性があります。すでに500キロを超えて馬体も大きいし、たとえば長い直線の大井ならさらに強い競馬をするかもしれません。