コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成28年度第4回開催 関東オークス 他

6月13日~17日のメインとして行われたのは関東オークス。ホッカイドウ競馬からJRAに移籍していた昨年のNARグランプリ2歳最優秀牝馬、タイニーダンサーが快勝。鞍上は今回が初騎乗の戸崎圭太騎手でした。 初日に行われた3歳2組戦では、山崎誠士騎手のドリームスピードが強い競馬を見せ、デビューから4戦3勝としました。また関東オークスの準メインとして行われた入梅特別は、モフモフが人気にこたえて3連勝。いよいよ本格化をうかがわせる走りで、通算10勝目としました。鞍上は、デビューから手綱をとっている今野忠成騎手でした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2016年6月15日(水)関東オークス

優勝馬 タイニーダンサー

斎藤
スタート後、アルセナーレと的場騎手のエメンタールベルンが競り合いました。
竹見
2頭とも行く気だったんでしょう。それでテンのペースが速くなって、縦長の展開になりました。それでも直線を向いてぐっとペースが落ちました。戸崎騎手のタイニーダンサーも抜群のスタートで、行く気になれば行けたでしょうが、すぐに控えて3番手。スタンド前では前2頭の直後の外で折り合いをつけました。そのうしろのブライトリビング、ディーズプラネットが完全にかかっています。
斎藤
去年はスタンド前でスローになったところでホワイトフーガが一気に行きましたが、今年はさらにスローでも行く馬はいませんでした。
竹見
折り合いを欠いていたディーズプラネット、ブライトリビングあたりは外に切り替えて行ってもよかったと思います。
斎藤
タイニーダンサーは、3コーナー過ぎで前をとらえて直線突き放す強い勝ち方でした。
竹見
タイニーダンサーは、今回外枠もあっていい位置を追走できました。中央入りしての2戦は案外の結果でしたが、今回は力を発揮できる状態にもあったのでしょう。戸崎騎手はうまく馬の力を引き出しました。2着に入った森泰斗騎手のミスミランダーも、好位を追走していいレースをしました。ただ勝ちタイムはそれほど速くありません。タイニーダンサー以外の中央馬は、去年あたりと較べるとそれほどのレベルではないのかもしれません。逃げたアルセナーレもゴール前まで粘っていましたが、3着はスタート後に競り合ったぶんでしょう。直線一瞬伸びを見せたディーズプラネットが最後に甘くなったのは、道中でかかっていたぶんでしょう。

2016年6月13日(月)3歳2組

優勝馬 ドリームスピード

斎藤
山崎騎手のドリームスピードは、中団からの追走でした。
竹見
ドリームスピードはスタートでダッシュがつきませんでした。それで無理には行きませんでした。それでも道悪だからか、内には入れずに中団の外目、いつでも前をとらえにかかれる位置を追走しました。
斎藤
前半は縦長の展開でしたが、向正面の中間から徐々に位置取りを上げて行きました。
竹見
これでまだ4戦目ですが、あそこから動いているのは、すでにレースを知っている感じですね。
斎藤
直線を向いて3番手、ゴール前で前の2頭をあっという間に交わしました。
竹見
追い出してからの反応もいいし、時計はそれほど速くないですが、勝ち方がいいです。これは鞍上というより、馬が強かったですね。不良馬場は今回が初めてで、こうした控えて直線差し切るというレースをしていれば、まだまだ強くなりそうです。

2016年6月15日(水)入梅特別

優勝馬 モフモフ

斎藤
中野省吾騎手のエールドランジュ、左海誠二騎手のレアヴェントゥーレが競り合っての先行で、3番手以下を大きく離しました。
竹見
スタートして内枠の中野騎手がすんなり先頭に立っていたので、外の左海騎手は譲るべきでした。1コーナーを回っても引きませんでしたから、それで2頭とも勢いがついてしまい、明らかにオーバーペースでした。
斎藤
離れた3番手が、和田譲治騎手のファイトユアソング、人気になっていた今野騎手のモフモフでした。
竹見
前が飛ばしすぎたので、3コーナーで一気に差が詰まりました。そのあたりでも今野騎手はまだ余裕がありました。今野騎手にしてみれば、同じような位置にいたファイトユアソング、本田騎手のナガラキコウシあたりが迫って来れば、そのぶん追い出して行けばいいだけですから、もう勝てると思ったでしょう。モフモフはさらに上のクラスにいっても勝負になりそうです。