コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成28年度第7回開催 スパーキングサマーカップ 他

8月の21日~24日の開催は、日~水曜日という変則4日間。メインは、最終日に行われたスパーキングサマーカップでした。勝ったのは大井の牝馬ブルーチッパーで、鞍上は船橋の森泰斗騎手でした。 23日に行われたB2・B3級による処暑特別は、プロファウンドに騎乗した町田直希騎手が絶妙なペース判断で逃げ切りました。24日の準メイン、川崎スプリントシリーズ・綺羅星特別は、伊藤裕人騎手のキョウエイアドニスが鮮やかに差し切りました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2016年8月24日(水)スパーキングサマーカップ

優勝馬 ブルーチッパー

斎藤
森泰斗騎手のブルーチッパーが、迷わずという感じで行きました。
竹見
ただブルーチッパーは、スタートダッシュはあまり良くないですね。好スタートは1番人気のレガルスイでしたが、森騎手は外枠からでも思い切ってハナを取りに行きました。すぐに縦長の展開になったので、前のペースは速かったようです。ただ2コーナーを回るあたりではペースを落として、息を入れるところはありました。
斎藤
4コーナー手前では、ブルーチッパーに、石崎駿騎手のレガルスイが並びかけて2頭の競り合いになりました。
竹見
あのあたりではレガルスイのほうが手ごたえがよかったので、勝つのかなと思って見ていましたが、ブルーチッパーは追い出されてからしぶとい競馬をします。一杯になっているように見えても、直線半ばからまた伸びました。ブルーチッパーは、内枠に入っていたら逆に勝てなかったかもしれません。外枠だと邪魔になる馬がいないので、スタートがいまひとつでも、思い切ってハナを取りに行けました。
斎藤
森騎手は3コーナー過ぎから追い通しで、大変ではないですか。
竹見
バテてしまう馬だと騎手は大変ですが、追ってから伸びる馬だと、そうでもありません。乗っていて安心感がありますから。

2016年8月23日(火)処暑特別

優勝馬 プロファウンド

斎藤
町田騎手のプロファウンドは、スタートから先頭に立っての逃げ切り勝ちでした。
竹見
1番枠で枠順がよかったですし、ダッシュも速かった。スタート直後に気合を入れただけで、いい具合に逃げられました。おそらく調教師から逃げろとは言われていたでしょう。すぐにハナを取り切ったので、1~2コーナーではペースを落としています。
斎藤
3コーナー手前で早くも後続との差を広げました。
竹見
特に仕掛けたというわけではないですが、あそこで行ったのが勝因のひとつです。直線を向いてから一気に追い出されると、人気のタマモベルモットにはじわじわと差を詰められますが、半馬身差で振り切ることができました。町田騎手は内枠から思い切って逃げたのが正解でした。この馬にはこういう乗り方が合っていると思います。

2016年8月24日(水)綺羅星特別

優勝馬 キョウエイアドニス

斎藤
増田騎手のリコーシルエットのスタートダッシュが抜群に速く、伊藤騎手のキョウエイアドニスも好スタートでしたが、控えて4番手からの追走でした。
竹見
前で競り合った3頭を行かせて、やや離れたところからの追走は、ちょうどいいペースだったと思います。900メートル戦とはいえ、前のペースは少し速すぎました。3~4コーナーでは前3頭がすでに追っていたのに対して、キョウエイアドニスは手ごたえに余裕を残したまま、前との差を詰めてきました。
斎藤
伊藤騎手は、4コーナーでは前3頭が雁行している外へ持ち出しました。
竹見
ここは大外へ出したのが正解です。内を狙って前が詰まる可能性を考えれば、安全な策をとったと思います。それにしても直線では並ぶ間もなくという感じで差し切って、強い競馬でした。