コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成29年度第1回開催 クラウンカップ 他

年度が変わって4月最初の開催のメインは、3歳馬によるクラウンカップ。1頭だけ他馬より2キロ重い57キロを背負ったローズジュレップが2着に7馬身差をつける逃げ切り圧勝。鞍上は吉原寛人騎手でした。 そしてこの開催でデビューを迎えた櫻井光輔騎手が、4月4日第4レースで初勝利。翌5日の第3レースで2勝目もマークしました。 開催最終日に行われた恒例の川崎ジョッキーズカップは、地方競馬現役最年長、5月で62歳を迎える森下博騎手が、好位から抜け出して勝利を飾りました。 今回も佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2017年4月5日(水)クラウンカップ

優勝馬 ローズジュレップ

斎藤
ローズジュレップは、京浜盃では川原正一騎手が乗って2番手からでしたが、今回、吉原騎手に替わって逃げました。
竹見
おそらく最初から逃げるつもりでいたと思います。この馬は引っ張って抑えて行くより、跳びが大きいので、行かせてしまったほうがいいと思います。
斎藤
4コーナーでは早くも後続との差を広げて、7馬身差の圧勝でした。
竹見
勝利は確信していたと思いますが、吉原騎手は直線でもびっしり追ってきました。おそらく次の羽田盃のことを考えてのことでしょう。羽田盃でもおそらく逃げるか2番手あたりだと思います。それでどこまで粘れるかでしょう。今回は相手にも恵まれた感じでした。

2017年4月4日(火)C3 六七八

優勝馬 トキノシシリー

斎藤
櫻井騎手は内を見ながら押して行って先頭に立ちました。
竹見
おそらく逃げろという指示だったと思いますが、そのとおり逃げられたのはよかったです。3キロ減がありますから、積極的に行ったほうがいいです。減量があるうちは、前に行っていれば、勝てずともある程度粘りがききます。
斎藤
向正面では繁田騎手のマサノメモリアルに並びかけられる場面がありました。
竹見
スローペースになって、櫻井騎手は向正面ではかなり手綱を引っ張っていましたが、もう少し流していったほうがよかったと思います。繁田騎手には並びかけられたまでで、もう一度ハナを取ったのでよかったですが、マクリきられていたらダメだったかもしれません。
斎藤
直線では後続を突き離して9馬身差をつけました。
竹見
直線ではかなり叩いていましたが、後続は離れていましたから、それほど叩かなくても、という感じはしました。2、3回叩いたら、あとは手綱で追うだけでよかったと思います。ただこれが初勝利なので、うまく乗ったと思います。
斎藤
騎乗しているときの姿勢はいかがですか。
竹見
背中が少し反ってしまっているので、逆に背中を少し丸めぎみに乗ったほうがいい、ということは本人に話しました。
斎藤
翌日(4月5日第3レース)の2勝目はいかがでしたか?
竹見
砂を被るとダメな馬だったらしいので、うまく外に持ち出して中団を追走。3コーナー手前から仕掛けて、4コーナーでは先頭に3頭並んだ外でしたが、外に膨れずにうまく回ってきました。あとは直線で追うときに、ステッキを左に持ち替えたりなどがスムーズにできるようになればいいと思います。

2017年4月7日(金)2017春 川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 ハイランドクーラー

斎藤
森下騎手のハイランドクーラーは5番人気。3番手の内目につけて行きました。
竹見
森下騎手は、スタートしてスッと内に入れて、すぐに3番手のいい位置をとることができました。そして向正面では2番手の山林堂騎手(クラデジャブー)の外に持ち出しました。おそらく馬群がばらけていたので、外に出したほうがレースがしやすいと思ったのでしょう。
斎藤
3コーナーからは、逃げ馬をとらえて抜け出すだけというレースでした。
竹見
3コーナー過ぎでは、他のほとんどの馬が一杯に追っているところ、森下騎手の手応えはまだまだ楽でした。逃げた増田騎手(ミツカネプリンセス)も直線を向いてよく食い下がっていましたが、森下騎手は余裕をもってとらえての完勝でした。馬の調子もよかったと思いますが、3番手から抜け出すという理想的なレース運びでした。森下騎手は今でも朝早くから調教に出てきて、60歳を過ぎてもまだまだ元気です。