コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成29年度第2回開催 川崎マイラーズ 他

5月15~19日の開催でメインとして行われたのは川崎マイラーズ。勝ったのは5番人気、リアライズリンクスに騎乗した的場文男騎手で、これがメモリアルの地方通算7000勝達成となりました。表彰式には佐々木竹見さんも登場して祝福しました。 またこの開催ではヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドも行われ、見事に地元川崎の中越琉世騎手が勝利! 昨年10月から高知競馬で期間限定騎乗していますが、これが南関東での初勝利となりました。 そしてもう1レースは、現在川崎に所属して期間限定騎乗している藤井勘一郎騎手が勝利した、18日の夏柳特別を取り上げます。(聞き手・構成/斎藤修)

2017年5月17日(水)川崎マイラーズ

優勝馬 リアライズリンクス

斎藤
リアライズリンクスの的場騎手は控えて5番手からの追走でした。
竹見
スタート後の直線では4頭ほどが競り合う形になって、そこから抜け出して逃げる形になった石崎駿騎手(タマモホルン)、吉原騎手(トロヴァオ)は、ちょっと飛ばしすぎたかという気がします。リアライズリンクスは逃げることもある馬ですが、スタートでタイミングが合わなかったのか、半馬身ほど出遅れて、前が競り合っていましたから、そのまま控えたのはいい判断でした。結果的に、それが絶好の位置になりました。
斎藤
3コーナーでは吉原騎手のトロヴァオが先頭に立って、的場騎手は馬群に囲まれる形になりました。
竹見
ただそれで4コーナーまで脚を溜めて、直線を向くところではうまく内が開きました。川崎コースの乗り方としては最高の騎乗だったと思います。たまたまスタートで出負けしたところ、前が競り合ってくれたので、展開が向きました。うまくいくときというのはそういうものです。ただ焦ったらダメです。出遅れても焦らず落ち着いた判断が、そうした運にもつながったと思います。
斎藤
8番人気、吉原騎手のトロヴァオが2着でした。
竹見
道中は2番手でも、タマモホルンを追うのではなく、もう少し溜めて行ってもよかったと思います。それで追い出しをもう少し我慢すれば勝っていたかもしれません。

2017年5月16日(火)ヤングジョッキーズ・トライアルラウンド川崎・第2戦

優勝馬 サンドルトン

斎藤
中越騎手が逃げました。
竹見
1番枠に入ったのがよかったです。騎乗したサンドルトンは、3走前には逃げて勝っているので、逃げることも考えていたでしょう。競りかけてくる馬もいなかったので、すんなりとハナに立ちました。
斎藤
単騎の逃げになって、最後の直線でも後続を寄せ付けませんでした。
竹見
中越騎手は高知競馬でたくさん乗って、デビューした頃よりかなり上手くなりました。ただ道中の姿勢はいいと思いますが、直線でステッキを使うときに、後ろを見ているのかどうか、頭が右に下がるところが気になります。そこは直したほうがいいと思います。いずれ川崎に戻ってくると思いますが、今度は勝てるようになっているでしょう。
斎藤
他に気になる騎手はいましたか。
竹見
2着に追い込んだ船橋の臼井健太郎騎手はうまく乗っていました。まず向正面で、ペースが落ち着いているところで位置取りを上げていったのがよかったと思います。4コーナー手前で思い切って外に出したのもいい判断でした。直線追ってくるときに姿勢が崩れません。それから中央の騎手はみなさん姿勢がいいです。特に3着に入った野中悠太郎騎手などは、追うときも状態がぶれずに、ステッキの使い方も上手です。

2017年5月18日(木)夏柳特別

優勝馬 ベイビータピット

斎藤
藤井騎手のベイビータピットは、7枠9番からのスタートでしたが、すぐに内に入れました。
竹見
好スタートからすぐに抑えて内の3番手、絶好の位置を取りました。藤井騎手は自信を持っていたのでしょう。3番手でじっとして、抑えたままでした。
斎藤
4コーナーあたりでは、前をとらえるだけという競馬でした。
竹見
じっくり待って追い出しました。レースの流れにもよりますが、川崎コースで仕掛けるのは、4コーナーあたりからでいいんです。
斎藤
直線では突き離して、先行していた1頭、増田騎手のコスモパープルに6馬身差をつけました。
竹見
このメンバーでは馬の力が一枚違っていました。おそらくひとつ上のクラスに入っても勝てるでしょう。