コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成29年度第10回開催 全日本2歳優駿 他

12月11~15日の開催で、メインとして行われたJpnI、全日本2歳優駿は、断然人気に支持されたルヴァンスレーヴが直線力強く抜け出しての完勝。鞍上はミルコ・デムーロ騎手でした。 そのひとつ前に行われたジョイホース横浜賞では、今野忠成騎手のヤマイチレジェンドが前開催の特別戦から連勝となりました。 そして年末開催の最終日恒例、2017冬川崎ジョッキーズカップは、1番人気ヒロソーラーに騎乗した瀧川寿希也騎手が好位から抜け出しての快勝となりました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2017年12月13日(水)全日本2歳優駿

優勝馬 ルヴァンスレーヴ

斎藤
ルヴァンスレーヴは今回も後方から。逃げたのは北海道のサザンヴィグラスでした。
竹見
サザンヴィグラスは、吉原騎手が気合を入れたら行き過ぎてしまいました。道中も行きたがっていて、これでは最後までもちません。ルヴァンスレーヴは出遅れ気味でした。それでも3コーナーから一気に位置取りを上げていったときの脚色が他馬とは違っていました。
斎藤
ルヴァンスレーヴは、直線では並ぶ間もなく抜け出しました。
竹見
直線に入って、内に切れ込んだときは危ない場面がありました。うしろに馬がいれば進路妨害になっていたかもしれません。フラフラするところがあって、まだ遊んで走っているようです。最後は余裕があって、デムーロ騎手は手綱を抑えてのゴールでした。勝ちタイムの1分41秒6も優秀です。普通にスタートを切っていれば、3馬身か4馬身ちぎっての圧勝だったかもしれません。3歳になって身が入ってくればもっと強くなると思います。
斎藤
武豊騎手のドンフォルティスがゴール前差を詰めて2着でした。
竹見
武騎手も落ち着いて中団からうまく乗っていました。3コーナーで進路が狭くなって立ち上がる場面がありましたが、直線よく伸びて来ました。
斎藤
本田正重騎手のハセノパイロが3着に入りました。
竹見
前を見ながら5番手は、いい位置を追走していました。直線でも内で我慢して、最後は接戦を制して3着。これが5戦目で、まだあまり使われていませんから、これからまだまだ強くなるでしょう。

2017年12月13日(水)ジョイホース横浜賞

優勝馬 ヤマイチレジェンド

斎藤
今野騎手のヤマイチレジェンドは、無理せず縦長の中団よりうしろからの追走でした。
竹見
エールドランジュの瀧川騎手が気合をつけてやや強引にハナをとりにいったので、1コーナーの入りまでペースが速くなったことで、縦長の展開になりました。今野騎手はうしろから余裕を持って乗っていました。
斎藤
今野騎手はペースが上った3コーナー手前から、じわじと位置取りを上げて行きました。
竹見
直線を向いて馬群がバラけたので、今野騎手は内を突くこともできたと思いますが、大事に大外に持ち出して差し切りました。さすがに自信を持って落ち着いた騎乗でした。
斎藤
2番手を追走していた7番人気のウッドランズがゴール前まで粘りました。
竹見
テンのペースが速くなって、後方からレースを進めた馬たちの決着になり、先行勢ではウッドランズだけが粘りました。瀧川騎手にハナをとられましたが、内枠だったこの馬がすんなりハナに行けていれば逃げ切っていたかもしれません。西啓太騎手はステッキの使い方とかがうまいです。よく2着に残しました。

2017年12月15日(金)2017冬川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 ヒロソーラー

斎藤
1番人気の瀧川騎手(ヒロソーラー)が出ムチを入れて行きました。
竹見
先行争いにはなりましたが、すぐに位置取りが決まったので、流れは落ち着きました。瀧川騎手は積極的に位置をとりに行くのはいいと思いますが、無理に主張しすぎることもあります。向正面では内の3、4番手。川崎コースでは絶好の位置取りです。3コーナー過ぎで2番手に上って、直線では、逃げた拜原騎手のグローリアスロウラをとらえるだけという完勝でした。瀧川騎手は、今年勝ち星を一気に増やして活躍が目立っていました。
斎藤
中団からレースを進めた今野騎手のデルマタッシャデナが2着でした。
竹見
直線半ば、拜原騎手と瀧川騎手の間が狭くなって、今野騎手は一瞬、手綱を引く場面があったのが残念でした。追ってきているときに控えると、そのあと勢いが落ちてしまいます。4コーナーを回るときの勢いで外に持ち出していれば、勝つまではどうかわかりませんが、もう少しきわどいレースになったかもしれません。
斎藤
向正面で後方2番手だった中越騎手のキョウエイボサツが4着に入りました。
竹見
控えてレースを進め、入着を狙った競馬だったと思います。3~4コーナーで馬群の内から位置取りを上げて、うまい騎乗でした。ただ中越騎手は、5着だった櫻井騎手もそうですが、直線で追うときに頭を振るような感じになっているので、そのクセは直したほうがいいでしょう。