コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成30年度第1回開催 クラウンカップ 他

4月2~6日の開催でメインとして行われたのは、3歳馬によるクラウンカップ。マイペースに持ち込んだ浦和のスプリングマンが逃げ切りました。鞍上は船橋の左海誠二騎手でした。 恒例の2018春・川崎ジョッキーズカップは、1番人気に支持された田中涼騎手のマイネルサフィルスが快勝。5日の最終レースに行われたソメイヨシノ特別(C2一)は、瀧川寿希也騎手のシュプリームゾーンが前走浦和戦から連勝となりました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2018年4月4日(水)クラウンカップ

優勝馬 スプリングマン

斎藤
逃げるかと思われたサザンヴィグラスが行けず、先頭に立ったのはスプリングマンでした。
竹見
スプリングマンの左海騎手はスタートして出ムチを入れて行っています。おそらくハナに行くと決めていたのでしょう。そして最初のゴール板あたりでは隊列が決まって流れが落ち着いて、ペースはそれほど速くなりませんでした。
斎藤
3番手のラチ沿いを追走していた石崎駿騎手のミスターバッハが直線で並びかけて、2頭の追い比べになりました。
竹見
並んだときにはミスターバッハのほうが勢いがありましたから、そのまま交わすかと思って見ていましたが、スプリングマンがもうひと伸びしました。スプリングマンは前半からペースを落として楽に逃げたぶん、最後にもう一度伸びました。スタート後、スプリングマンに競りかけていく馬がいれば、もう少しペースが速くなって、ミスターバッハが差し切っていたかもしれません。逃げてうまくペースを落とした左海騎手の作戦が成功しました。

2018年4月3日(火)2018春・川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 マイネルサフィルス

斎藤
外枠から酒井忍騎手(アローズ)がハナに立ち、田中涼騎手(マイネルサフィルス)は2番手の外目につけました。
竹見
アローズを先に行かせて、田中騎手はうまく外に出しました。ピタリと2番手で、向正面では先頭に立たないように我慢しています。先頭に立とうと思えばいつでも立てたと思いますが、我慢させたのがよかったです。3コーナー過ぎで先頭に立っても、まだまだ手ごたえは楽でしたから、そのぶん、直線で伸びました。
斎藤
2着に入った櫻井光輔騎手(ヒロソーラー)は4コーナー手前でまわりを囲まれる場面がありました。
竹見
櫻井騎手は、スタート後、内目の3番手につけて、うまく乗っていました。直線を向いたところで前が空いたので、そこから抜けることができました。このレースをして負けたのでは仕方ありません。勝った馬が強かった。デビュー当時ほどではないですが、ステッキを使って追うときに頭を振るような仕草をします。これは直したほうがいいと思います。

2018年4月5日(木)ソメイヨシノ特別

優勝馬 シュプリームゾーン

斎藤
勝った瀧川騎手のシュプリームゾーンは、縦長の展開の4番手からでした。
竹見
ハナに立ったのは本田正重騎手(カリビアンスタッド)で、並びかけていった見越騎手のケイティーゴールドはずっと掛かっていました。そのうしろ、矢野騎手のロードグレイスもスタート後の直線では行きたがっていました。それで前はペースが速くなりました。10番枠からのスタートだった瀧川騎手は、じわじわと内に入れていって、その3頭から少し離れて4番手、いい位置につけて、この馬自身はいいペースでの追走になりました。
斎藤
ラチ沿いを走ってきた瀧川騎手のシュプリームゾーンは、4コーナーでは前と外を囲まれて行き場をなくしそうな場面がありました。
竹見
瀧川騎手はどこから抜け出そうかという状態で、直線を向いたところで矢野騎手の手ごたえがなくなって外に行ったことで、前が空きました。一杯になった矢野騎手は避けてくれたのかもしれません。それであっという間に抜け出しましたから、そもそもシュプリームゾーンは力が違いました。
斎藤
逃げた本田騎手のカリビアンスタッドが2着でした。
竹見
直線半ばまで先頭でしたが2着。前半、2頭に競りかけられたぶん、最後は苦しくなりました。それでもよく粘ったと思います。