コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第5回開催 立秋特別 他

8月前半の川崎競馬は、7、10、11日の3日間開催でした。 初日のメイン、B1・B2級による立秋特別は、ゼットパッションが昨年1月の大井・桃花賞以来久々の勝利となりました。鞍上は山崎誠士騎手でした。 2日目、2歳馬によるJRA認定のシャイニングヒーロー特別は、櫻井光輔騎手のヴァヴィロフが2着に5馬身差をつける圧勝。デビューからの成績を3戦2勝、2着1回としました。 3日目の3歳馬による仏法僧特別は、中央未勝利からの転入初戦を制していたジェイケイエピファが向正面で先頭に立って力の違いを見せました。こちらも鞍上は山崎誠士騎手で、この3日間開催では6勝を挙げ開催リーディングとなる活躍でした。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年8月7日(金)立秋特別

優勝馬 ゼットパッション

斎藤
ゼットパッションの山崎騎手は1番枠で互角のスタートを切りましたが、すぐに控えました。
竹見
逃げ馬をぴたりと追走した伊藤騎手のアイオロスが同じ佐々木仁厩舎だったので、ゼットパッションのほうは最初から控えてという厩舎の作戦はあったかもしれません。2番手のアイオロス、さらに3番手につけた1番人気のシカゴジャズをすぐ前に見ながらレースを進めました。9頭立てと頭数が少なかったので、下げて内に入れてということでは、レースがやりやすかったと思います。
斎藤
ペースアップした3コーナーあたりで、ゼットパッションは前の馬たちからやや置かれる形になりました。
竹見
3コーナー過ぎでアイオロスが手応え十分のまま先頭に立って、シカゴジャズは追い通しでの追走。ゼットパッションは仕掛けを遅らせました。4コーナーまでは内を回って、直線を向いて外に持ち出しました。それにしてもゴール前の伸びが際立っていました。その最後に使える脚を生かすために、仕掛けを遅らせたのではないでしょうか。先頭に立っていたアイオロスも止まっていたわけではありません。1番人気のシカゴジャズを振り切ったアイオロスの勝ちパターンのレースでした。それを並ぶまもなく差し切ったゼットパッションは、ここまでしばらく勝てなかったのが不思議なほどの強いレースぶりでした。

2020年8月10日(月)シャイニングヒーロー賞

優勝馬 ヴァヴィロフ

斎藤
勝ったヴァヴィロフは2番手からでした。
竹見
スタートはよかったですが、ひとつ内のモンゲーハガネが譲らない構えでしたから、最初のコーナーでは枠順の関係で控えざるをえませんでした。
斎藤
ヴァヴィロフは4コーナー手前で先頭に立つと、直線はあっという間に突き放しました。
竹見
櫻井騎手は直線を向いてムチを左手に持ち替えました。そのまま肩ムチを入れる程度で追ってくればよかったと思いますが、直線半ばではもう一度右手に持ち替えて、ムチを入れたら馬が内に刺さっていました。ラチのギリギリのところまで行って、危ない場面もありました。前走では、内に刺さるのを修正しようとするうちにゴールとなって、ハナ差で2着に負けていました。前走でも騎乗していた櫻井騎手は、そういう癖はわかっているはずなので、ムチを右に持ち替えることもなかったと思うのですが。能力があることは間違いないので、そのあたりはこれからの課題になるかもしれません。

2020年8月11日(火)仏法僧特別

優勝馬 ジェイケイエピファ

斎藤
勝ったジェイケイエピファは中団よりうしろからの追走でした。
竹見
前走勝ったレースぶりから、山崎騎手はよほど自信があったのでしょう。向正面でまだペースが上がらないうちに仕掛けていって、3コーナー手前で一気に先頭に立ってしまいました。
斎藤
直線では後続を寄せ付けませんでした。
竹見
直線でも余裕がありました。4コーナーで最内を突いて伸びてきた町田騎手のエイコーレイワが2着で3馬身差、3着にはさらに5馬身差がついていますから、このあたりではクラスが違いました。スタートダッシュはあまり速くありませんが、それだけに距離が長くなればさらにいいかもしれません。秋からの3歳重賞、戸塚記念やロジータ記念でも、もし出られればいい勝負をするかもしれません。