コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第3回開催 関東オークス 他

6月8~12日の開催でメインとして行われたJpnIIの関東オークスは、南関東牝馬三冠がかかった船橋のアクアリーブルは惜しくも2着。勝ったのはJRAのレーヌブランシュで、鞍上は今年JRAのオークスも制している松山弘平騎手でした。 初日のメインとして行われた青毛・青鹿毛・黒鹿毛限定のくろうま賞は、高知から転入初戦のコスモターンブルーが直線で力強く抜け出しました。鞍上は中越琉世騎手でした。 そして最終日の最終レースに行われた恒例の川崎ジョッキーズカップ第2戦を勝ったのは、この4月にデビューした古岡勇樹騎手。デビュー41戦目での初勝利でした。なお、佐賀で期間限定騎乗中の池谷匠翔騎手もその翌日、13日に初勝利を挙げています。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年6月10日(水)関東オークス

優勝馬 レーヌブランシュ

斎藤
三冠がかかるアクアリーブルは逃げ馬の直後、勝ったレーヌブランシュはラチ沿いの3番手からでした。
竹見
レーヌブランシュの松山騎手は、スタートして行く気を見せましたが、外のアールクインダムが引かないと見て控えました。結果的に、ラチ沿い3番手は一番いいところをキープしました。逃げるより、むしろこの位置のほうがよかったと思います。
斎藤
川崎2100mにしては、道中のペースがあまり落ちなかったようですが。
竹見
この距離では最初のスタンド前でペースが落ちることが多いですが、逃げたアールクインダムがいいペースをつくったので、掛かるような馬もいませんでした。控えたレーヌブランシュにとっても、あまりスローになるよりよかったと思います。
斎藤
直線を向いたところではアクアリーブルが先頭に立って見せ場がありました。
竹見
アクアリーブルの矢野騎手は2番手からこれ以上ないくらいうまく乗りました。これで負けたのでは仕方ありません。勝った馬が強かった。それにしてもレーヌブランシュは直線よく伸びました。直線を向くまで内で我慢させて、一気に弾けました。松山騎手は今年中央でもオークスを勝っていましたが、思い切ったレースぶりが目立ちます。

2020年6月8日(月)神楽酒造盃くろうま賞

優勝馬 コスモターンブルー

斎藤
勝った中越騎手のコスモターンブルーは、1番枠でも控えました。
竹見
スタートもよかったし、コスモターンブルーはダッシュ力もあります。外の行く馬を行かせて、最初から控えて行くつもりだったのでしょう。ラチ沿い好位のいい位置がとれました。
斎藤
中越騎手は3、4コーナーでも手応え十分でした。
竹見
先行勢や、3コーナー手前で外から仕掛けてきた馬たちが追い出しても、中越騎手はまだ抑えたまま、馬にも余力がありました。
斎藤
4コーナー手前では行き場をなくすような場面もありました。
竹見
4コーナーでは、内を確認したあと、前2頭の外に持ち出しました。さらに外にいた真島騎手(デランブル)に勢いがあれば、中越騎手は抜けるところがなかったかもしれませんが、すんなり抜けてくることができました。デビューしたころとは違って、最近では落ち着いて乗れるようになりました。4コーナーで抜けられたのも、まわりが見えているからでしょう。直線ではあっという間に他馬を突き放して、転入初戦ですが、馬も強かった。中越騎手はだいぶ姿勢もよくなりましたが、道中はもう少し背中を丸めて乗れるようになるといいと思います。

2020年6月12日(金)2020川崎ジョッキーズカップ第2戦

優勝馬 バロンキング

斎藤
新人の古岡勇樹騎手の初勝利です。
竹見
大外枠から田中涼騎手(ビーデル)が一気にハナをとってペースが速くなりました。古岡騎手(バロンキング)は4番枠からのスタートで、外から何頭か行ってくれて、さらに1番と2番の馬が下げてくれたことで、ラチ沿いの絶好位がとれました。
斎藤
4コーナーでは、前の3頭をどこで交わすかという展開でした。
竹見
古岡騎手は3コーナー過ぎでも手応え十分でした。4コーナーでは前3頭がカベになっていましたが、4コーナーを回って(内から2頭目の)櫻井騎手が少し外に膨れたところを突いてうまく抜け出しました。
斎藤
7番人気でしたが、2着に2馬身差の完勝でした。
竹見
追ってからも状態がぶれないし、直線でムチを持ち替えるところもスムーズで、うまく乗っていました。ただ、向正面では馬が少し行きたがる場面もあって、馬を抑えきれていないところもありました。まだ手綱が少し長いかもしれません。こぶしもうひとつぶんくらい短くして抑えられればいいのですが。あとはもう少し慣れてからですが、鐙を少し短くできるといいと思います。まだ直すところはありますが、これからもっとうまくなると思います。