コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和元年度第9回開催 鎌倉記念 他

10月の川崎競馬は20~25日の6日間開催でした。メインとして行われたのは南関東2歳最初の重賞・鎌倉記念。断然人気に支持された高月賢一厩舎のインペリシャブルが逃げ切ってデビューから4連勝。鞍上は大井の矢野貴之騎手でした。 同日の準メイン、腰越特別では中団からまくっていった櫻井光輔騎手のヤマニンウリエルが直線で抜け出す強い勝ち方を見せました。 24日のメインレースとして行われた富士見オープンでは、昨年の東京ダービー馬ハセノパイロが復活の勝利。鞍上は今野忠成騎手でした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年10月22日(火)鎌倉記念

優勝馬 インペリシャブル

斎藤
勝ったインペリシャブルはスタートから一気に行きました。
竹見
スタートからハミをとって行きたがっているようでした。スピードはありますが、馬が真剣に走り過ぎている感じです。
斎藤
最後の直線まで並びかけてくる馬はいませんでした。
竹見
向正面に入ってからはなんとか折り合いがついた感じでしたが、3コーナーを回ってから後続を離しました。4コーナーあたりまで我慢させてもよかったかもしれません。
斎藤
最後は北海道のアベニンドリームに詰め寄られましたが、まずは完勝でした。
竹見
ハナに行っても遊んで行けるようになるか、もしくはハナに行かず好位で折り合いがつくようになれば、距離が伸びてもだいじょうぶでしょう。今回のように力んで行きたがっているようだと、たとえば大井の長い直線になると難しいかもしれません。終いの3ハロンが40秒6かかっていますから、最後はやや脚が上がった感じでした。ただゴール前でクビ差まで迫った北海道のアベニンドリームも強い競馬をしました。また、4着でしたが、北海道のイッキカセイはスタートで出遅れた上に挟まれて後方まで下がってしまい、それでも4着まできました。普通にスタートを出ていたら見せ場はあったかもしれません。

2019年10月22日(火)腰越特別

優勝馬 ヤマニンウリエル

斎藤
櫻井騎手のヤマニンウリエルは、いつもどおり中団よりうしろからでした。
竹見
繁田騎手(ナスノフラッシュ)が出ムチを入れて行く気を見せましたが、ハナをとったのはその内の矢野騎手(カワナ)で、前半はペースが少し速くなって、隊列も縦長になりました。櫻井騎手は、この馬には前走が初騎乗(3着)でしたが、落ち着いて乗っていました。
斎藤
向正面から仕掛けて行きました。
竹見
ペースが落ち着いた半マイル過ぎから行って、仕掛けるタイミングもよかった。3コーナーあたりから一気に前をとらえにかかる脚色が他馬とは違っていました。先頭に立っていた繁田騎手に並びかけたら、直線で突き放すのはあっという間でした。流れが速くなって、前半、脚を溜めていたのがよかったし、後半に脚を使うヤマニンウリエルには展開もうまくはまりました。

2019年10月24日(木)富士見オープン

優勝馬 ハセノパイロ

斎藤
勝った今野騎手のハセノパイロは、前半は中団からの追走でした。
竹見
ただゲートを出てから今野騎手はけっこう追って行っています。本当はもう少し前につけたかったのかもしれません。先行勢の多くの馬が行きたがっていたようで、前はややペースが速い感じだったので、ハセノパイロの中団の位置取りはよかったと思います。今野騎手は道中では手綱をふわふわさせて、馬も走りやすかったと思います。
斎藤
4コーナー5番手から見事に差し切りを決めました。
竹見
4コーナーではまだ前から差があり、あそこから届くような感じには見えませんでした。それでも直線半ばからが速かった。ただ、前に行っていた馬のほとんどが残り600メートルのあたりから一杯になってしまったので、結果的には中団よりうしろを追走していたハセノパイロにも、2着のカンムルにも展開が向きました。
斎藤
ハセノパイロの久々の勝因はどのあたりにあったでしょう。
竹見
前半ゆったり行かせることができたのと、向正面から位置取りを上げていくときに、内目のコースロスのないところを通ってきたことでしょうか。これは今野騎手の騎乗を褒めないと。伸ばした首をうまく使って走っていますが、こういう走りをする馬は、追ってからの伸びがいいです。東京ダービーを勝った馬なのに、なぜここのところ勝てなくなっていたのかが不思議なくらいです。