コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和元年度第3回開催 関東オークス 他

6月10~14日の開催でメインとして行われたのは3歳牝馬によるJpnIIの関東オークス。見事に逃げ切ったのは中央のラインカリーナ、鞍上はデビュー3年目の武藤雅騎手でした。 水の浮く不良馬場で行われた10日の露草特別は、2番手につけたサミットが直線で抜け出しました。鞍上は町田直希騎手でした。 13日に行われたサンライズ特別は、向正面で仕掛けたブラックスナイパーが、4コーナー先頭から直線で後続を突き放しました。鞍上は酒井忍騎手でした。なお2着には、今年4月に騎手として復帰した岡村裕基騎手が入りました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年6月12日(水)関東オークス

優勝馬 ラインカリーナ

斎藤
ハナをとったラインカリーナは、1周目の3、4コーナーで後続を離して単騎の逃げになりました。
竹見
武藤騎手はそこで抑えずにふわーっと馬を行かせたのがよかった。鞍上が追っているわけではなく、自然な状態で馬が行っているので無理はしていません。後続との差を広げて、直線を向いてペースを落としました。後続有力勢には、逃げ馬が単騎になると行き過ぎにも思えるので、ラインカリーナがペースを落としても、早めにつかまえに行く馬はいませんでした。ラインカリーナはそれで十分に息を入れることができました。
斎藤
後続勢は、勝負どころでもラインカリーナをなかなかとらえることができませんでした。ラインカリーナが追い出したのは4コーナーからでした。
竹見
3コーナー手前から後続の有力馬が追い出しているところ、ラインカリーナの手応えはまだまだ楽でした。直線では、1番人気のマドラスチェックがとらえるような勢いでしたが、ラインカリーナは相手が来るぶんだけ伸びて交わさせませんでした。
斎藤
2着とは2馬身差、3着のトーセンガーネットには大差がつきました。
竹見
人気のマドラスチェックのほうは3コーナーから追い通しでしたから、勝ち馬をとらえきれなかったのは、そもぶんも大きかったでしょう。ラインカリーナの勝因は、1周目の4コーナーで後続との差を広げたところがひとつ。マドラスチェックは4コーナーまでにラインカリーナに並びかけていれば逆転もあったかもしれませんでしたが、そうさせなかった武藤騎手の好騎乗もありました。道中は馬自身が息を抜いて、馬も利口なのかもしれません。

2019年6月10日(月)露草特別

優勝馬 サミット

斎藤
勝ったサミットの町田騎手は、大外枠でも2番手につけました。
竹見
水が浮くほどの馬場状態では、ある程度前に行かないと勝負にならないので、どうしても先行争いでテンが速くなります。町田騎手は内を見ながらじわじわと前を取りに行きました。川崎の1500や1600メートル戦は、外枠のほうが楽に競馬ができます。スタートしてから1コーナーまで距離利があるので、内の馬を見ながら位置を取りに行くことができます。
斎藤
馬群は縦長。ブレイブブロッサムが5番手あたりから伸びてきた以外は、前残りの決着でした。
竹見
川崎コースでは、3、4番手あたりの内が絶好位ですが、さすがにこれほど水が浮く馬場になると、前に馬を置かずに外目につけたほうがレースはしやすいです。3コーナー過ぎでは、前3頭と、そのうしろとが離れてしまいました。それでも4番手以下の集団にいたブレイブブロッサムがゴール前で伸びて2着に入りました。勝ったサミットは、直線半ばから余裕を持って突き放しました。こういう不良馬場が得意ということもあったかもしれません。

2019年6月13日(木)サンライズ特別

優勝馬 ブラックスナイパー

斎藤
C級で2000メートル戦というめずらしい設定のレースです。勝ったブラックスナイパーは中団うしろにつけました。
竹見
淡々とゆったりしたペースで流れました。ブラックスナイパーの酒井忍騎手は道中ではじっくり脚を溜めて、しまいの脚がいいということを考えて乗っています。これがたとえば1600メートル戦になると、前半からある程度前を追いかけていかないといけないので、後半に脚を残すことは難しい。そういう意味でもブラックスナイパーには、この距離の流れが合っていたのでしょう。
斎藤
ブラックスナイパーは直線で一気に突き抜けました。
竹見
残り800メートルあたりから位置取りを上げていって、4コーナーを回るところでは前の2頭をとらえ、直線で突き放しました。この距離で強いレースをしました。
斎藤
4月に復帰した岡村騎手のゲイルバローズが2着でした。
竹見
岡村騎手は好位3番手の内を追走して、直線抜け出すという正攻法の騎乗。7番人気で2着、好騎乗でした。