コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成31年度第1回開催 クラウンカップ 他

新年度となった4月1~5日の開催でメインとして行われたクラウンカップは、浦和のホールドユアハンドが逃げ切り勝ち。鞍上は、当日乗り替わった戸崎圭太騎手でした。 初日のメインに行われた青龍特別は、1番人気に支持された山崎誠士騎手のカジノシップが直線で力強く抜け出しました。 恒例の2019春・川崎ジョッキーズカップは、中団を追走した山林堂信彦騎手のヤマニンゼーレが直線先頭に立って押し切りました。なお3着には、騎手免許を再取得し、この開催で13年ぶりに復帰した岡村裕基騎手が入りました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年4月3日(水)クラウンカップ

優勝馬 ホールドユアハンド

斎藤
ホールドユアハンドは、騎乗予定だった左海誠二騎手が当日の怪我で戸崎圭太騎手に乗り替わりでした。
竹見
ハナを取ろうと思えば1コーナーまで追っていくのが普通ですが、戸崎騎手はハナに立ったところですぐに抑えています。ほかに行く馬いれば2、3番手に控えてもいいという考えでしょう。それで無理せずに自然な形で先頭に立つことができました。馬にあまり負担をかけない、このあたりが戸崎騎手のうまいところです。
斎藤
4番手を追走していた石崎駿騎手のサクセッサーが4コーナー手前で並びかけると、直線は一騎打ちになりました。
竹見
ホールドユアハンドは並ばれてからが強かった。直線を向いたところではサクセッサーのほうが勢いがありましたが、最後は差し返して抜かせませんでした。戸崎騎手には着差以上に余裕があったようです。
斎藤
サクセッサーはクビ差でした。
竹見
石崎駿騎手も勝負どころで前を一気にとらえてうまく乗りました。ただホールドユアハンドのように、並ばれてから強い馬もいます。その場合、追いかけるほうの馬は馬体を併せに行たのでは粘られますから、離れたところから一気に差し切ったほうがいいでしょう。

2019年4月1日(月)青龍特別

優勝馬 カジノシップ

斎藤
1番人気、山崎誠士騎手のカジノシップは、外枠から5番手の好位につけました。
竹見
山崎騎手は余裕をもって乗っています。4コーナー手前では張田昂騎手(フラワーオアシス)を先に行かせて、まだ追い出しを我慢していました。普通なら張田騎手と一緒に上がっていくところです。
斎藤
それで直線では前が壁になる場面がありました。
竹見
直線では一度外に行こうとして行き場がなく、内に切り替える場面がありました。それでもよく内が空いたと思います。
斎藤
2着馬を2馬身半、突き放しました。
竹見
カジノシップは、強いから勝った。山崎騎手もそれだけ自信があって乗っていたと思います。直線で、どこかが空けば抜け出せると思っていたのでしょう。見ている方はヒヤッとしましたが、力がなければこういうレースはできません。このメンバーでは馬が強かった。

2019年4月2日(火)2019春・川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 ヤマニンゼーレ

斎藤
スタートしての直線は、先行争いが激しくなりました。
竹見
騎手がメインのレースはどうしても先行争いが激しくなってテンのペースが速くなります。それで結果的に、中団からうしろに控えた馬たちの争いになりました。
斎藤
勝った山林堂騎手のヤマニンゼーレは、縦長の中団よりうしろから。3コーナーあたりから動いていきました。
竹見
先行した馬たちもまだ余裕がある感じでしたが、ヤマニンゼーレは3、4コーナー中間あたりから、手応え、脚色が違っていました。それにしてもあの位置からよく勝ったと思います。
斎藤
直線を向いて外から一気に抜け出しました。
竹見
馬も強かったですが、終いの脚を生かす競馬をした山林堂騎手を褒めるべきでしょう。前をとらえにかかると、先頭に立つのは一瞬でした。
斎藤
酒井忍騎手のグローリアスマリンがゴール前で一気に迫って2着でした。
竹見
酒井騎手は4コーナーでもまだ中団よりうしろでしたが、あそこからよく来ました。最後はぐんぐん伸びてきました。この馬には、前半ハイペースの流れが向きました。対して先行した馬たちは直線でほとんどが後退して、前と後ろがガラリと入れ替わりました。1番人気の山崎誠士騎手(コスモロザラム)は、外枠から仕掛けていって、前半に脚を使ったぶん、最後は一杯になってしまいました(5着)。