コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成30年度第13回開催 エンプレス杯 他

2月25日~3月1日の開催メインとして行われたエンプレス杯では、プリンシアコメータが格の違いを見せつけるダートグレード3勝目を挙げました。2着に健闘した大井のブランシェクールはこれが引退レース。鞍上は、川崎で期間限定騎乗中の吉原寛人騎手でした。 開催初日のマーケットスクエア川崎イースト記念を勝ったブースターは、川崎転入後、これで6連勝。名古屋からの連勝を8に伸ばしました。鞍上は山林堂信彦騎手でした。 26日に行われたJRAとの条件交流、フェブラリースター賞は、JRA所属のカカアコに騎乗した瀧川寿希也騎手が、最後方から一気のマクリで勝利に導きました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年2月27日(水)エンプレス杯

優勝馬 プリンシアコメータ

斎藤
ハナを奪ったのはクレイジーアクセルでしたが、内のプリンシアコメータも行く気を見せました。
竹見
スタート後は2頭が競り合ってペースが速くなりました。さらにサルサディオーネも外の3番手にぴたりとつけて、スタンド前では3頭が譲らずという形になって、道中もペースが緩みませんでした。サルサディオーネは一旦控えて内に入れて、2頭を前に見る形でレースを進めれば、もっといいレースができたかもしれません。ただある程度前に行く気でしたから、勢いがついたところから一旦下げてというのも難しかったのでしょう。結果的にずっと外々を回らされた距離損もあって7着に沈んでしまいました。
斎藤
結果、3コーナーで早め先頭に立ったプリンシアコメータが押し切りました。
竹見
逃げたクレイジーアクセルと、直後のサルサディオーネが3コーナーで後退すると、今度はビスカリアとミッシングリンクが来て、プリンシアコメータは次から次へとプレッシャーをかけられる厳しい展開でした。それでも直線振り切りましたから、今回は強いレースをしました。
斎藤
中団から直線伸びた吉原騎手のブランシェクールが2着に入りました。
竹見
道中のペースが速かったぶん、中団にいた吉原騎手が最後に伸びてきました。勝ったプリンシアコメータとは差がありましたが、仕掛けるタイミングとしてはブランシェクールが一番いいレースをしました。勝てはしませんでしたが、吉原騎手の好騎乗でした。

2019年2月25日(月)マーケットスクエア川崎イースト記念

優勝馬 ブースター

斎藤
連勝中のブースターは、伸び上がるような感じのスタートで、今回は逃げられませんでした。
竹見
それでも前3頭が競り合って行ったあと、内目の絶好位につけることができました。無理してまで逃げるつもりもなかったと思います。連勝してきているので、山林堂騎手も自信があったのでしょう、落ち着いて乗っていました。
斎藤
ブースターは3、4コーナー中間で2番手に上がって、直線では、逃げていたサバンナロードをとらえるだけという競馬でした。
竹見
そのあたりでも山林堂騎手はまったく余裕の手応えでした。今回は控える競馬でいい勝ち方をしたので、まだまだ上のクラスでもやれるでしょう。ただ気性があまりよくないらしいので、そのあたりは課題になりそうです。そういう気性的な問題だったのか、ロードカナロア産駒にもかかわらず、中央では仕上げきれずに地方に来たのかもしれません。

2019年2月26日(火)フェブラリースター賞

優勝馬 カカアコ

斎藤
瀧川騎手のカカアコは、スタートがあまりよくありませんでした。
竹見
スタートがよくなかった時点で、控える競馬に徹したと思います。内枠だったこともあって無理せず最後方から。どこかで外に持ち出してということだったのでしょう。
斎藤
瀧川騎手は向正面から一気に仕掛けていきました。
竹見
2コーナーを回ったあたりから徐々に行きだしています。早めに行った判断はよかったと思います。瀧川騎手が仕掛けて行ったことで、向正面の半ばからは前のペースも一気に速くなりました。
斎藤
4コーナー手前で先頭を射程圏に入れました。
竹見
逃げていたブレークオンスルーの的場騎手は4コーナー手前でも手応え十分でした。ただスタート後に少し無理して行ったぶん、道中の手応えは楽でも最後は苦しくなったのかもしれません。瀧川騎手があのタイミングで仕掛けていなければ、逃げていた的場騎手はもっと楽だったはずで、もしかしたら逃げ切っていたかもしれません。それにしても瀧川騎手は、向正面から追って追って追い通しで、ゴール前でよく交わしました。よほど力のある馬でない限り、最後方から行って勝つということは難しいです。それにしても瀧川騎手の好判断でした。