コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成30年度第10回開催 全日本2歳優駿 他

12月17~21日の開催メインは全日本2歳優駿。今年もJRA勢の層が厚く、勝ったのはノーヴァレンダ、鞍上は北村友一騎手でした。 18日に行われた2歳馬による南天特別は、トキノブルースが勝って北海道から移籍後2連勝。鞍上は町田直希騎手でした。 そして開催最終日には、恒例の2018冬・川崎ジョッキーズカップが行われました。直線、森下博騎手が抜け出し、地方競馬における最年長勝利記録更新かに思われましたが、これをゴール前で差し切ったのがデビュー2年目の櫻井光輔騎手でした。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2018年12月19日(水)全日本2歳優駿

優勝馬 ノーヴァレンダ

斎藤
逃げたのは北海道のイグナシオドーロで、ノーヴァレンダは2番手の外につけました。
竹見
勝ったノーヴァレンダと、1番人気のガルヴィハーラは、外目の枠に入って、すんなりと2番手、3番手につけることができました。対してデルマルーヴルは、馬群の内に入って、1コーナー手前のゴチャついたところで行き場をなくし、位置取りを悪くしてしまいました。この場面はどの馬が悪かったということはなく、外から押し込められるような感じでした。川崎コースは内にいると最後まで外に出られなくなるようなこともあるので、外目の枠が有利になることもあります。
斎藤
4コーナーあたり、地方馬では北海道のウィンターフェルが食い下がっていましたが、直線では中央4頭の争いになりました。
竹見
4コーナーを回ったあたりではデルマルーヴルが差し切るかと思いましたが、直線半ばでは内に刺さったりで、ゴール前は勢いがありましたが、差し切れませんでした。4コーナーで、デルマルーヴルの(ミルコ)デムーロ騎手は内を突く選択肢もありましたが、あの状態では外に行くしかありませんでした。結果的に、内を突いていれば、直線を向いたところでガルヴィハーラの外を抜けることができたと思いますが、4コーナー手前の時点では抜け出せるところがあるかどうかわかりません。安全策で外に出したのも仕方ありません。デルマルーヴルは1コーナーでゴチャついたところもありましたし、不運なことがいくつかあって残念でした。勝ったノーヴァレンダは、能力があるのはもちろんですが、スムーズにレースを運べたのが勝因でしょう。
斎藤
南関東で期待されたミューチャリーは見せ場なく6着でした。
竹見
ミューチャリーは向正面あたりから御神本騎手が追い通しでした。中央馬相手でも、もっとやれるかと思いましたが、残念でした。

2018年12月18日(火)南天特別

優勝馬 トキノブルース

斎藤
トキノブルースはスタートでダッシュがあまりつかず、1~2コーナーでは控えて4番手からの追走でした。
竹見
この馬はまだトモが緩いという話なので、テンにあまり仕掛けていかずに、3、4番手あたりのつけられるところにつけて、ゆっくり追走していって正解です。こういう大きい馬(馬体重521kg)は、できれば外に持ち出して追走したほうがいいです。内に入って抑えて行くと、いざ追い出しても、一瞬の脚が使えるわけではありません。じわじわ伸びて脚を使うタイプです。
斎藤
トキノブルースは前に3頭を見ての追走で、直線を向くところでうまく外に持ち出しました。
竹見
町田騎手は4コーナー手前から追い出しましたが、直線はじわじわとしか伸びていません。まだ気性的にも子供っぽいところがあって、直線ではフワフワしています。それで勝ち切るんですから、まだまだこれから強くなるでしょう。距離も延びたほうがいいと思います。

2018年12月21日(金)2018冬・川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 グランシェフ

斎藤
勝った櫻井光輔騎手は控えて中団からでした。
竹見
櫻井騎手は好スタートを切りましたが、前が競り合っていたので、1番枠からラチ沿いのまま、中団あたりまで下げて行きました。
斎藤
向正面の中間あたりでは、森下騎手が一気に位置取りを上げていきました。
竹見
森下騎手は無理に仕掛けて行ったわけではなく、流れが落ち着いたところで位置を取りに行ったので、これはよかったと思います。
斎藤
直線を向いて、森下騎手が先頭に立って、勝ったかと思いましたが、櫻井騎手が差し切りました。
竹見
櫻井騎手は内々でじっとがまんして、流れに乗っていました。3コーナー過ぎまでずっとラチ沿いが空いていたのも運がよかった。3コーナー過ぎからは、前で競り合っていた馬たちがだんだんバテてきていたので、4コーナーを回るところでうまく外に持ち出すことができました。正攻法で直線抜け出した森下騎手の勝ちパターンかとも思いましたが、櫻井騎手のほうはうまく行き過ぎた感じもありました。それでも馬は休み明けで、櫻井騎手はうまく乗ったと思います。残念だったのは森下騎手でしたが、これで負けたのでは仕方ありません。