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第64回エンプレス杯(JpnⅡ)(キヨフジ記念)の見どころ

昨年のエンプレス杯

サラブレッド系4歳以上牝馬
距離2,100m
負担重量
4歳54kg、5歳以上55kg
2018年2月24日までGⅠ・JpnⅠ競走1着馬2kg増、GⅡ・JpnⅡ競走1着馬1kg増 (ただし、2歳時の成績を除く

レース概要

女帝を意味する「エンプレス杯」は今年で64回とされるが、その37回まではサブタイトルにもなっているキヨフジ記念として実施された歴史を持つ。
キヨフジとは昭和20年代に川崎の八木正雄厩舎に所属して大活躍し、中央競馬に移籍したのち第12回オークス(優駿牝馬)を制覇。地方競馬出身馬として初めてクラシック競走を勝った名牝だ。
第1回は1800mで始まったが、距離や施行時期の以降などを繰り返し、現在のような2100mの初春の牝馬ダートグレードになったのは第45回からである。
距離2100mではレースの駆け引きだけでなく、スタミナも要求されるが、案外スローペースになりやすいことから先行馬が有利という傾向がある。この5年はいずれも先行馬が優勝。6年前のミラクルレジェンドも向正面では3番手まで進出しており②着には逃げたエミーズパラダイスが粘っている。
過去10年(第58回は雪のため開催中止)を見ると優勝馬はすべてJRA馬。地方勢は②着3回にとどまっている。一番人気馬は5勝。第54回のラピッドオレンジ(5着)、第55回のヤマトマリオン(3着)以外はすべて連対している信頼度の高さ。JBCレディスクラシックからクイーン賞、TCK女王盃と続いてきた一連の牝馬ダートグレートのなかで、TCK女王盃からの連覇した馬は過去20年遡ってもレマーズガールとラヴェリータ、そして昨年のワンミリオンスの3頭のみ。2100mへと距離延長したスタミナ勝負での連戦では思いのほか苦戦を強いられている。
近年の勝ち馬を見ただけでも、ラヴェリータ、ミラクルレジェンド、ワイルドフラッパー、アムールブリエ等それぞれ牝馬ダートグレードを席巻してきた女傑たちの名前が並ぶが、この春からはホワイトフーガやララベルをはじめ、昨年出走メンバーの②着リンダリンダ、③着ヴィータアレグリア、④着ポッドガゼール、⑤着タイニーダンサー等が揃って繁殖入りして牝馬ダートグレード界は世代交代の真っ最中。次代を担う新女帝の座をどの馬が手にするのか楽しみでならない。

エンプレス杯への優先出走権(地方所属馬)

・第63回クイーン賞1着馬
・第21回TCK女王盃2着以内
・第11回東京シンデレラマイル1着馬

第64回 エンプレス杯 主な出走予定馬紹介

●アンジュデジール(牝4歳 JRA・昆貢厩舎)
アンジュデジール
川崎コースではスパーキングレディーカップでダートグレード勝ちがあり、2100mの関東オークスでは②着の実績からも適性十分。JBCレディスクラシックではスタートで躓いて中団後ろからのレース運びとなり⑤着、クイーン賞では逃げる勝ち馬との差を縮めきれず②着も、得意のコースで巻き返しを図る。

●サルサディオーネ (牝4歳 JRA・羽月友彦厩舎)
サルサディオーネ
レパードステークスでは逃げて粘り②着。ペテルギウスステークス、東海ステークスと自分の競馬ができずに大敗しているが、2度目の地方参戦で牝馬同士となればスピード全開。母サルサクイーンは川崎・内田勝義厩舎に所属して東京プリンセス賞を優勝しエンプレス杯にも出走して⑧着だったが、母の育った地で長丁場の適性を生かしてほしい。

●ステップオブダンス (牝4歳 大井・藤田輝信厩舎)
ステップオブダンス
NARグランプリでは3歳最優秀牝馬に輝き、ララベルから地方競馬の牝馬女王を引き継ぐ最有力候補。川崎2100mは関東オークス③着、ロジータ記念では完勝している実績ある舞台。前走の東京シンデレラマイルは初の古馬戦で伸びを欠き、2走ボケとしか思えないレースぶりだったが、今回から本格的な牝馬ダートグレード参戦開始となれば真価が問われる一戦。

●プリンシアコメータ(牝5歳 JRA・矢野英一厩舎)
プリンシアコメータ
JBCレディスクラシックではララベルとの一騎打ちで接触するほどの激しい攻防になり不利を被ったが、長い審議の末②着。TCK女王盃では一番人気に推されながら伸びきれず⑥着も、本来右回りより左回りが得意なタイプで東京コースの距離2100mでも好走実績。岩田騎手とのコンビで2戦2勝と相性も良く、クイーン賞の再現なるか。

●ミッシングリンク (牝4歳 JRA・齋藤誠厩舎)
ミッシングリンク
雪の影響で最悪の馬場コンディションのなか見事TCK女王盃を優勝。スピードを持ち味にしてきたが、前走では逃げにこだわらず前を見ながらの作戦が功を奏したかたち。ダート転向3戦目での戴冠で一躍スターダムにのしあがった。牝馬ダートグレード連勝を狙うが初めての川崎コースで経験のない距離2100mのクリアできるか。

●ラインハート(牝7歳 大井・月岡健二厩舎)
ラインハート
6歳秋に中央から転入し緒戦のJBCレディスクラシックでは8番人気ながら直線外から末脚炸裂し③着に迫った。クイーン賞、TCK女王盃でも待機策から弾け、切れ脚を武器に牝馬ダートグレードで善戦を重ねる。待望の初重賞もそう遠くなさそうだ。

●ワンミリオンス (牝5歳 JRA・小崎憲厩舎)
ワンミリオンス
1000万下、準オープンとを連勝して地力をつけ、昨年は初めて重賞挑戦したTCK女王盃からエンプレス杯と連覇。短距離を使ってきた距離への懸念も払拭して幅広い対応力を見せた。その後は捻挫等のアクシデントもありマリーンC(⑥着)、JBCレディスクラシック(④着)と2戦したのみ。世代交代の波が押し寄せるなか新女王の座を確固たるものにしたい。

文/中川明美 
写真/佐々木光・川崎競馬倶楽部