コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第13回開催 ネクストスター東日本SIII 他

 3月11~15日の開催でメインに組まれたのは、今年から始まった3歳スプリントシリーズのネクストスター東日本。大井を除く南関東3場の持ち回りで開催されるこのレース、第1回は川崎1400mが舞台となりました。2番手から直線抜け出したのは船橋のギガースで、鞍上は森泰斗騎手でした。

 同じく3歳馬によるクラウンカップ・トライアルとして行われた椿賞は、道中追い通しでの追走となったクニノトキメキがゴール前で差し切りました。鞍上は今野忠成騎手でした。

 恒例の川崎ジョッキーズカップ第2戦は、後方を追走していた古岡勇樹騎手のノーブルキャニオンが豪快に差し切りました。古岡騎手はこのシリーズ通算7勝目となりました。

 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2024年3月13日(水)椿賞

優勝馬クニノトキメキ

 スタートでは野畑騎手のツキシロがやや強引な感じでハナをとりました。ひとつ内枠だったバハマフレイバーは前をカットされるような形になり、森泰斗騎手は一旦下げてツキシロの外に持ち出して2番手からになりました。

 勝ったクニノトキメキの今野騎手は、スタートこそ互角に出ましたが、そのあとダッシュがつかずムチを入れていっても前には行けず中団よりうしろからの追走で、向正面でもほとんど追い通しでした。直線を向いてもそれほど伸びている感じはかなかったのですが、ゴール前で一瞬の脚を使って差し切りました。先行した馬たちの脚が上がったこともありますが、道中の手応えを見ているとよく勝ったと思います。今野騎手の意地で勝ったようなレースでした。

 逃げた野畑騎手のツキシロはなんとか2着に粘りましたが、1番人気のバハマフレイバーを含め先行勢はほとんど一杯になってしまったので、前のペースは少し速かったのかもしれません。最後の2ハロンも14秒4、14秒7と、かかっています。そのぶん、後方から直線で脚を残していたウインアザレアが3着、クリコマが4着に追い込みました。勝ったクニノトキメキにはそういう流れも向いたと思います。

2024年3月14日(木)ネクストスター東日本

優勝馬ギガース


 内枠からライゾマティクスが主張してハナに立って、ぴたりと2番手をキープしたギガースは最初、行きたがるような素振りを見せていました。

 ギガースは3コーナーで手応え十分にライゾマティクスをとらえると、4コーナー手前では早くも先頭に立たちました。直線で抜け出すと馬が遊んでいましたから、森騎手はあまり早く先頭には立ちたくなかったと思います。ライゾマティクスが直線半ばあたりまでがんばってくれればギガースも遊ぶようなことはなかったでしょうが、力が違いました。こういう馬は直線追い比べになれば抜かせませんが、離れたところから一瞬の脚で追い込んでくるような馬がいると差されてしまうかもしれません。2着に入ったクルマトラサンは直線で脚色が同じようになっていましたが、4コーナーでもまだ中団だったアジアミッションが直線外から一気に伸びて3着に入りました。ギガースが負けるとすれば、こういう馬に一気に来られたときでしょう。

 ギガースの佐藤裕太調教師は、川島正行調教師(故人)のところでたくさん重賞馬の調教をつけていましたから、馬をつくるのが上手いです。

2024年3月14日(木)2024川崎ジョッキーズカップ第2戦

優勝馬ノーブルキャニオン

 勝ったノーブルキャニオンの古岡騎手は、前半ほとんど最後方という位置からの追走でした。3コーナーあたりでもまだ中団うしろの内でじっとしていて、直線を向くと徐々に外に持ち出していって差し切りました。まわりを見ながら落ち着いて乗っていたこともありますが、勝つときはすべてがうまくいくものです。これは古岡騎手の騎乗を褒めるべきでしょう。古岡騎手はこういう直線一気でいいレースをすることがあります。

 惜しかったのは3着、ムーンダイアローグの神尾騎手です。前半、5番手内の絶好位につけました。ラチ沿いのまま3コーナーでは3番手に位置取りを上げ、直線を向いて抜け出すという、完全に勝ったようなレースでした。ただ前がやや速めのペースで流れていましたから、直線一気に伸びてきたノーブルキャニオン、さらに山林堂騎手のアドヴェントイヴにも交わされて、惜しくも3着でした。