コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第11回開催 川崎マイラーズSIII 他

 正月開催のメインとして行われたのは、今回から実施時期が変更となった川崎マイラーズ。昨年5月に行われた川崎マイラーズで3着だった大井のデュードヴァンが、4コーナーでまだ前とは離れた中団から直線一気に差し切りました。1番人気のギャルダルが2着。2番人気に期待された川崎のフォーヴィスムは3着でした。
 2日のメインとして行われた栗毛・栃栗毛の選定馬による21stゴールデンホース賞は、野畑凌騎手のシャンパンファイトが好位から直線で抜け出し1番人気にこたえました。
 そして恒例の川崎ジョッキーズカップ第1戦を制したのは、ツワモノに騎乗した藤江渉騎手。3コーナーで早め先頭に立って後続を振り切りました。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2024年1月3日(水)川崎マイラーズ

優勝馬デュードヴァン


 アランバローズがかかり気味に逃げて、1~2コーナーを回るあたりで早くも縦長の展開になりました。勝ったデュードヴァンは、1番枠からのスタートで互角に出ましたが、位置取りを下げていきました。御神本騎手は、好位や中団の馬群で揉まれるより、下げて外に持ち出してと考えたのかもしれません。中団よりうしろ、10番手あたりからの追走でした。
 5番手を追走していたギャルダルが、直線半ばで一杯になったアランバローズをとらえて先頭に立って、この馬が完全に勝ったように思えましたが、直線一気に伸びたデュードヴァンが差し切ったのには驚きました。
 前が飛ばしてハイペースの展開になると、それを追いかけていく馬もいるので、終いに脚を使える馬が有利になります。それにしてもデュードヴァンは4コーナーでも先頭とは10馬身ほども離れた位置からよく差し切りました。勝因は、御神本騎手のペース判断でしょう。この馬には直線の長い大井ならもっといいかもしれません。

2024年1月2日(火)21stゴールデンホース賞

優勝馬シャンパンファイト

 野畑騎手は2年目の昨年、106勝を挙げる活躍でしたが、スタートから思い切ったレースをすることで勝ち星につながっていると思います。このレースのシャンパンファイトも3番枠から出ムチを入れて、外から行く馬を行かせて3番手内の絶好位につけました。1番人気に推されていたこともあり、馬も強かったですが、展開にも恵まれました。2番手の外にいた澤田騎手(ピンクプラム)が3コーナー過ぎで一杯になって下がってしまったので、逃げていた町田騎手(デアシュトゥルム)の外に持ち出してとらえるだけ。直線では町田騎手も食い下がっていましたが、ゴール前で振り切りました。落ち着いたペースになって7番人気の町田騎手が2着に残る展開でしたから、野畑騎手のシャンパンファイトは能力の違いを見せたという結果でした。
 野畑騎手は追ってからも姿勢があまり崩れないのもいいところです。あまり前に行かないような馬でも積極的に前に行くことで結果を残しています。

2024年1月3日(水)2024川崎ジョッキーズカップ第1戦

優勝馬ツワモノ

 4番枠からダッシュのよかった増田騎手(ミッシーコルザ)が先頭に立ち、スタートで仕掛けていった藤江騎手(ツワモノ)が2番手につけると、すぐに流れが落ち着いてかなりスローな流れになりました。逃げていた増田騎手が3コーナーで後退すると、藤江騎手が手応え十分のまま先頭に立っての完勝でした。
 5番手からスローペースを読んで向正面で早めに動いた岡村騎手(ベニノボルト)が追ってきましたが、差を詰めることはできませんでした(3馬身差2着)。
 中団から直線脚を使った田中涼騎手(ナムラキャッツ)が3着に入りましたが、4着にも4番手を追走していた1番人気の新原騎手(ブルコ)が入って、先行した人気馬の前残りというレースでした。
 勝ったツワモノは、藤江騎手がスタートから思い切って行って2番手につけられたことが勝因でしょう。