コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和7年度第1回開催 川崎記念JpnI 他

 4月7~11日の開催では重賞3レースが行われました。
 8日の3歳馬によるクラウンカップは、8頭立て7番人気という評価ながら、地元川崎のミーヴァトンが後方追走からゴール前で差し切りました。鞍上は町田直希騎手でした。
 9日は、昨年から1着賞金1億円に増額された川崎記念。3コーナーで一気に先頭に立ったJRAメイショウハリオがそのまま押し切り、一昨年の帝王賞以来1年9カ月ぶりの勝利で復活をアピール。JpnI・4勝目としました。鞍上は濱中俊騎手でした。連覇が期待された地元川崎のライトウォーリアはスタートで出遅れたこともあって8着でした。
 10日に行われたのはネクストスター東日本。3月19日に浦和競馬場で予定されていた同レースが走路状況悪化により取止め、川崎での代替開催となりました。勝ったのは船橋のガバナビリティー。2番手から3コーナーで逃げ馬をとらえると、直線突き放しての圧勝でした。鞍上は大井の矢野貴之騎手でした。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2025年4月8日(火)クラウンカップ

優勝馬ミーヴァトン


 スタート後はすぐに隊列が決まって落ち着いたペースになりましたが、後方にいた西啓太騎手のプローラーティオーが向正面から動いていくと、ほかの何頭かも追いかけてペースが一気に上りました。
 勝ったミーヴァトンは後方からの追走でしたが、ペースアップしたところでも動かず3コーナーあたりでは最後方で、町田騎手はそこから内ぴったりを回ってきました。直線を向くと馬群の真ん中に進路ができて、そこをうまく抜けてきました。それにしてもゴール寸前でよく差し切ったと思います。人気薄で気楽に乗れたこともあったでしょうが、末脚を生かす町田騎手らしい勝ち方でした。
 向正面でペースが上がらなければ、2番手につけていた1番人気のヤギリケハヤに展開が向いて勝っていたと思いますが、そのあたりが競馬の難しいところです。

2025年4月9日(水)川崎記念JpnI

優勝馬メイショウハリオ


 連覇のかかったライトウォーリアは、1番枠で出遅れては厳しいです。昨年2着のグランブリッジもスタートでは頭が地面につきそうなほどバランスを崩してしまいました。
 外枠からメイショウフンジンが気合をつけてハナをとりに行くと、好ダッシュのダイシンピスケスが2番手に控えたことで、すぐに隊列が決まって最初の3~4コーナーでペースが落ち着きました。スタンド前でもペースは上がらず、うしろからキリンジが動いていきましたが前までは行ききらなかったのでスローペースのままでした。このペースならキリンジは一気に先頭まで行ってしまってもよかったと思います。
 2コーナーを回ったところで、中団まで位置を上げてきていたディクテオンが一気に動いていきました。これを追いかけたのがメイショウハリオで、一気にペースが上りました。
 メイショウハリオの濱中騎手は、3コーナーでディクテオンをとらえてそのままハナまで行き切ったのもよかったし、そこで息を入れずに、追って追って4コーナーではディクテオンを振り切ってしまったのがよかった。最後はディクテオンが盛り返して、ゴールでは3/4馬身まで迫りました。メイショウハリオが勝ったのは4コーナーから直線を向いたところで差をつけたぶんでしょう。
 ディクテオンは中央から大井の荒山厩舎に移籍して、初戦のダイオライト記念は差のある4着でしたが、この2戦目でだいぶよくなっていました。矢野騎手の仕掛けるタイミングが早すぎたと言う人もいますが、たしかに普通ならあそこで動くのは早いと思いますが、今回はずっとスローで流れていたので、結果的に2着に負けてしまいましたが、これで正解だったと思います。それ以上に、ディクテオンが動いたときにすぐに追っていった濱中騎手の判断がよかったと思います。
 人気のサンライズジパングもメイショウハリオのあとを追っていきましたが、3コーナーあたりの勢いではついていけませんでした。

2025年4月10日(木)ネクストスター東日本

優勝馬ガバナビリティー


 勝ったガバナビリティーは好ダッシュからほとんど仕掛けることもなく前につけました。内のプリムスパールスを行かせて、2番手を楽に追走。3コーナーでは手応え十分のまま先頭に立って、直線では後続を寄せ付けず強い勝ち方でした。道中行きたがる場面もありましたが、矢野騎手はうまく抑えて行きました。直線で抜け出してからは遊んでいるようなところもありましたから、1馬身半という着以上に強かったと思います。距離はもっと伸びてもいいと思います。今回は逃げた馬が早めに後退して先頭に立ってしまいましたが、4コーナーあたりまで我慢させるような競馬ができれば、さらによくなるでしょう。
 吉原騎手のフィエレッツァは中団からの追走で、4コーナー手前から追い通しでしたが最後よく伸びてきました。終いの脚を生かす競馬をしたのがよかったと思います。
 今野騎手のピーエムナナは、4コーナーではまだ前と差のある中団。大外から2着馬以上の脚で伸びてきました。距離が伸びればさらによくなると思います。