コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成22年度第1回開催 クラウンカップ 他

2009年度最後の開催となった3/29~3/31と、2010年度最初の開催となった4/1~2の連続5日間の開催から、今回は3レースを取り上げます。 この開催のメインともいえるクラウンカップは、ホッカイドウ競馬から川崎に移籍して初戦となったポシビリテが重賞初制覇。河津裕昭調教師にとっても、地元川崎ではこれがうれしい重賞初勝利となりました。鞍上はこれで4戦連続となるJRAの松岡正海騎手でした。 30日に行われた2010春川崎ジョッキーズカップは、山崎誠士騎手が、なんとこのシリーズ4連勝。また、4月2日の芦ノ湖特別(C1級一組)でミスガイアに騎乗し、後方追走から直線一気の見事な追い込みを決めたのも山崎誠士騎手でした。 今回は、この3レースについて佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2010年3月31日(水)クラウンカップ

優勝馬 ポシビリテ

斎藤
勝ったポシビリテは、スタート後は5番手でした。
竹見
ちょっと前が速かったような感じですから、いいところにつけたのではないでしょうか。それで、向正面でペースが緩んだときに位置取りを上げて行きました。
斎藤
4コーナーでは早めに先頭に立ちました。
竹見
松岡騎手は3コーナーから追ってきました。前に行った馬がバテたので、直線を向いて一気に抜け出しました。最後は戸崎騎手のテラザクラウドに迫られましたが、よく粘りました。前半のペースが速いのをよく読んでいたと思います。松岡騎手は中央の普段のレースを見ていても、やはりうまいですね。
斎藤
2番人気だったナンテカは、もう少し走るかと思ったのですが。
竹見
ちょっとイレ込んでいたこともありましたが、3番手のいい位置につけたわりには案外の結果でした。鎌倉記念や平和賞を勝ったころのレースぶりからすれば、実力はこの程度ではないと思うんですが。

2010年3月30日(火)2010春 川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 マイネルクライス

斎藤
春と秋、年2回行われている、この川崎ジョッキーズカップですが、山崎誠士騎手が4連勝です。
竹見
川崎では、今野騎手や佐藤博紀騎手らとともに、中心的な存在になってきました。
斎藤
山崎騎手のマイネルクライスは、大外枠でしたが、思い切って行きました。
竹見
馬の行きっぷりも、ほかの馬とは違っていましたね。
斎藤
スタート後の直線で、2番手に行ったファンタストウィンの森下騎手は、さかんに外を気にしていました。
竹見
山崎騎手のマイネルクライスに、前に行ってほしかったんじゃないでしょうか。前に行かせれば、自分は外に出られますから。
斎藤
向正面で佐藤博紀騎手が仕掛けて行きました。
竹見
ちょっと早かったような気はしますが、思い切って行ったのはよかったと思います。
斎藤
最後は山崎騎手と森下騎手の一騎打ちでした。
竹見
この2頭は強いかったですね。スタート後の直線で前に行ったところで、この2頭のレースになったような感じでした。

2010年4月2日(金)芦ノ湖特別

優勝馬 ミスガイア

斎藤
このレースも勝ったのは山崎誠士騎手で、後方から豪快に追い込みました。
竹見
最後方のあの位置から、よく差し切りましたね。
斎藤
前半、ペースが速かったようですが。
竹見
前に行った4頭が競り合って、向正面までペースが緩まず、先行した馬にとっては厳しい流れになりました。
斎藤
ロンギングブラストの真島騎手が向正面で一気に動いて行きました。
竹見
タイミング的には真島騎手が勝ってもおかしくない流れでしたが、結果的に仕掛けがちょっと早かったのかもしれません。ただ、それで先行した馬にとっては、さらに厳しい流れになりました。4コーナーでは、先行した馬と、後ろから行った馬が完全に入れ替わってしまいました。それにしても山崎騎手は追い出しをよく我慢していましたね。人気があまりなかったということもあったかもしれません。
斎藤
人気馬だったら、なかなかああいう乗り方はでませんよね。
竹見
そうですね。あそこまで我慢するのは、なかなか難しいかもしれません。このレースは、展開が完全に山崎騎手のミスガイアに向きました。