コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成22年度第7回開催 鎌倉記念 他

9月27日~10月1日の開催のメインは、29日に行われた南関東で最初の2歳重賞、鎌倉記念。勝ったのは、キャリア6戦と経験豊富な浦和のキスミープリンスで、鞍上は大井の戸崎圭太騎手でした。 27日の稲村ヶ崎特別は、水の浮く不良馬場で最後方を追走したミヤビジンダイコが、ゴール前3頭横一戦の接戦を制しました。10月1日の保土ヶ谷宿特別は、3コーナーで先頭に立ったバルバンクールが、追ってきたビクトリースガを3/4馬身振り切って勝利。ともに鞍上は、山崎誠士騎手でした。 今回は、この3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2010年9月29日(水)鎌倉記念

優勝馬 キスミープリンス

斎藤
キスミープリンスの戸崎圭太騎手はスタート後、ラチ沿いの好位につけました。
竹見
スタート後は先頭から少し離れていましたが、ラチ沿いでじっと我慢して、2コーナーを回るあたりでは先行3頭の直後のいい位置につけました。3~4コーナーあたりでも手ごたえは楽で、あとは外に持ち出して抜け出すという理想的な競馬でした。
斎藤
1馬身半差で2着のシービスティーの左海誠二騎手は直線で内を突きました。
竹見
直線で挟まれたような感じになったのは残念でした。2着に負けはしましたが、この馬も力はあります。次は巻き返してくるのではないでしょうか。
斎藤
今野忠成騎手が騎乗して1番人気に推された北海道のサントメジャーは13着でした。
竹見
3~4コーナーで大きく外に膨れてしまいました。左回りは走ったことがないので、コーナーをうまく回れなかったのでしょう。ちょっと残念なレースでした。

2010年9月27日(月)稲村ヶ崎特別

優勝馬 ミヤビジンダイコ

斎藤
勝ったミヤビジンダイコの山崎誠士騎手は、スタート後は離れた最後方からでした。
竹見
ハナに行ったのは石崎(隆之)騎手でしたが、外から3頭が競りかけていったので、ペースが速くなりました。ミヤビジンダイコは最後方からでしたが、それでも3コーナーでは先頭を射程にとらえる位置につけました。
斎藤
山崎騎手は、4コーナーでは内を突きました。
竹見
前3頭が壁になっていたので、あそこを突くのはちょっと無理があったかもしれません。それでも直線では外に切り替えて抜け出すところがありました。前がもう少し早く開いていれば、楽に勝っていたでしょう。勝ったからよかったですが、川崎コースでは、4コーナーで無理に内を突くよりは外に出したほうがよかったかもしれません。
斎藤
ゴール前は接戦になりましたが、最後はラスカルキッドをハナ差で振り切りました。
竹見
ミヤビジンダイコは終いの脚がいいので、雨馬場でテンのペースが速くなったのも、この馬にはよかったのかもしれません。結果的に、うしろから行った2頭の決着になりました。頭数が少なかったのもこの馬に向きました。

2010年10月1日(金)保土ヶ谷宿特別

優勝馬 バルバンクール

斎藤
バルバンクールの山崎誠士騎手は、スタート後5番手に控えました。
竹見
前の4頭が競り合うように併走して、その後ろからですから、鎌倉記念での戸崎騎手と同じような展開になりました。
斎藤
3コーナー過ぎからは、うしろから追ってきたビクトリースガとの一騎打ちになりました。
竹見
山崎騎手はうしろから来るのを待っていたのかもしれませんね。それに合わせて仕掛け、ビクトリースガを前には行かせませんでした。
斎藤
ビクトリースガの町田直希騎手は、前走の戸塚記念と同じように後方から行って、3~4コーナーでは一気に先頭に立つ勢いでしたが、最後は勝ち馬と脚いろが一緒になってしまいまいた。
竹見
楽な手ごたえで一気に勝ち馬に並びかけましたね。終いのいい馬なので、そのまま差し切るかと思いましたが、案外伸びませんでした。まくっていくときは3コーナーくらいから行って、4コーナーあたりで一気に先頭に立つくらいの勢いで行ったほうがいいと思います。そうすれば勝てたかもしれません。先頭に並びかけたところで息を入れてしまうと、直線では案外伸びないということもよくあります。向正面から脚を使っていますから、もう少し仕掛けを遅くするとよかったかもしれません。